コロモガイは何を食うのか?(その生態と飼育についても) 2025.06

注1)これから書くことは「自宅水槽5号」という特殊環境で、たった1匹だけのコロモガイを飼育観察した結果に過ぎず、これがコロモガイの本来の生態を反映している保証は全くないことを先にお伝えしておく

注2)後の飼育観察でコロモガイは捕食した生物を殺さない(体液だけ?いただく)採餌方法を持っていることが分かったので、このページの採餌実験はあまり意味がなかったかもしれない。お暇があれば読んでください

 

(追記:2025年6月上旬)このページを書き終わってホッとしたのも束の間、コロモガイ「ウミニナ」を襲うシーンをバッチリ目撃(笑) このページでは長ったらしく色々な実験や推察を書いたが、「そんなのめんどくせぇ!!」って方はこのページを見てください→「コロモガイ、ウミニナを食う」

 

(追記:2025年7月17日)さらに飼育中のコロモガイ「イシガレイ」(全長約7cm)に口吻を刺そうとしている(刺したかも)シーンも目撃。その間「イシガレイ」は逃げようともしなかったが…。つまりコロモガイは砂泥底に生息する動きが遅い & 静止している動物をターゲットにしているということか?

コロモガイの飼育について

【「コロモガイ」の詳細ついてはこちらのページから】

(写真:飼育中のコロモガイ。部屋が明るい時間は砂に潜って動かないことがほとんどであった。砂が少ないためか、貝殻が半分以上露出するぐらい浅く潜ることが多かった)

飼育環境

コロモガイは何を食べるのか?」ということ解き明かす目的で、2025年3月下旬に自宅での飼育を開始した。

まず飼育環境だが、横幅30cmの虫かごにサンゴ砂(細目)を3cmほど敷き、ろ過は投げ込みフィルター2つだけという「自宅水槽5号」。水温は20℃~25℃、比重1.023、換水は1~2週間に1回全水量の半分。照明は7:00~19:00の間点灯し、20:00~23:00までは部屋の間接照明による薄明り、そして23:00以降は完全消灯。

混泳生物は「アラムシロ」「ウミニナ」、小型の「イッカククモガニ」、小型の「ユビナガホンヤドカリ」、そして砂中にはミズヒキゴカイ類にヒモムシ類と、特にコロモガイに危害を加える生物はいない(ように見えた)。

 

コロモガイの飼育環境への耐性

一言で言えば、水の汚れや環境の変化に強くタフだなぁという印象。自宅水槽5号を見てもらえば分かると思うが、お世辞にもコロモガイにとって良い環境ではないだろう(まず砂が粗すぎ & 少なすぎ)。しかしながら飼育を開始した2025年3月下旬からこのページを書いている現在(5月下旬)まで生存中。

 

一度換水の間隔を2週間まで延ばし、水面に泡が残らなくなるような状態まで水質が悪化したが、それも乗り越えた。水温も20℃~25℃まで上昇したが、大きな問題は無さそうに見える(採集時の海水温は15℃ほど)。

ただ潮下帯種であるにも関わらず、水槽の壁をよじ登り完全に水の外に出て蓋の裏側に張り付くという行動をしばしば見せたのは、もしかすると悪い水環境からの逃避だったのかもしれない(全くの想像です)。

 

個人的にコロモガイは飢餓耐性が高く、エネルギー消費も少ない体システムを有しているのでは想像している。後述するが私が観察した限りでは、2ヵ月間ほとんどまともにエサを食ってないと思われる(私が見ていないとき食っている可能性もあるが…砂中で食ってるなら尚更見えん)。

今回コロモガイを飼育した自宅水槽5号。見ての通りお粗末な設備だが、意外と色々な生物を飼育できる。何より設置とメンテが楽でコストも低い
水から完全に出て、水槽の蓋の裏側に張り付くコロモガイ。2日に1回ぐらいはこのような行動をする。張り付いたまま軟体部がびろーんと下に伸びていく。長時間こうしているが、そのうち力尽きたようにポロっと水の中へ落ちる(落ちずに戻っていくこともあるが)

コロモガイの行動

先にも書いたが、部屋が明るい時は砂に潜って動かないことがほとんど。今回の水槽では砂が少ないためか、貝殻が半分以上露出するぐらい浅く潜っているいることが多い。ときどき砂から出て少し移動して再び別の場所に戻ったり、砂上や壁面を移動することもある。

移動スピードはやや速く秒速7mmといったところか。他にはたまに砂に潜りながら触角(水管??)を砂の上まで伸ばして、何かの臭いを感じている?ようなことを行う。

混泳生物に対しても完全に無視…というか認識できているのか?と思うほど気に留めていないようだ。巻貝なのでしょうがないが、その動きや表情から、感情や体の調子を読み取ることは私にはできなかった。

 

しかし、部屋が暗くなると急に活動的?になる。そのタイミングは部屋の照明を落とし小さな間接照明のみが灯る20:00。何かスイッチが入ったかのように、砂からムクムクと現れ、体(軟外部)をグワーっと上に伸ばし貝殻を高く持ち上げ、2本の触角も鬼のツノのようにピンと上方向に伸ばす(写真)。そしてそのまま砂上をズンズン移動する。

しかしかといって、積極的にエサを食ったり他生物を攻撃したりするわけでなく、その行動目的は私にはよく分からなかった(20:00以降は私もマッタリモードなのでガッツリ観察を行っていないというのもあるが)。

 

とにかく「コロモガイは夜もしくは光量が著しく低いときが本気」なのだと思う。

 

(追記:2025年7月18日)6月に入り猛暑とともに水温も25℃を超えるようになってから、コロモガイの行動が変化してきた。明らかに活動量が増えた。特に目立つのが「水槽の蓋に張り付き軟体部をダラーンと伸ばすという行動」。

飼育開始当時(3月下旬)からこのような行動をしていたが、同年6月に入った頃から頻度が増え、6月下旬では毎日している気がする。1~3時間ぐらいぶら下がったままじゃないだろうか。暑いから軟体部を空気に当てて冷却しているのだろうか?

また採餌行動も1日1回は目撃するような…。ちなみに水温は現在27℃まで上昇しているが、平気そうである 。

こちらは21:30(2025年4月下旬)に撮影したもの。部屋が暗くなると突然こんな「うぉおおおおお!!!!」みたいな感じになる
こちらは22:00前の姿。エサとして入れた生きた「ヒメシラトリ」の稚貝を踏みつぶしているが、食べる気配は全くなかった(翌日も稚貝は元気一杯でした)

コロモガイの感覚

私は貝類の専門家でも研究者でもないので間違ったことを言っている可能性も大いにあるが、同じ部屋で約2ヵ月コロモガイと生活して感じた、コロモガイの感覚について書いてみる。

 

・視覚:人間の視覚能力を基準にすると、コロモガイの視覚能力はかなり低く、おそらく明暗を判断する程度の能力しかないのではと思っている。目の前に別生物がいても気にも留めないし、コロモガイが砂からでている状態で私が水槽に顔を近づけても、特に反応はなかった。ただ、部屋を暗くすると数分のうちには「夜の元気モード」に移行するので、明暗には敏感なのかもしれない。触角の根元によく目立つ眼があるんだけどなぁ。

 

・聴覚:これは水槽内に常に投げ込みフィルターが発生する音が響いているので判断が難しいが、やや敏感~普通のように思う。砂に潜ってじっとしているときは水槽の至近距離で作業していたり、水槽をコンコンと叩いたり、掃除機をかけたりしても(ごめんね)特に反応する様子はない。だが、軟体部を殻の外に出して移動している時や触角を伸ばしているときは、水槽をコンッっと指で1回叩くだけで、ビクッと身体を縮める。

 

・嗅覚:これがコロモガイが頼っている感覚のメインではないかと推測している。上に書いたよう、視覚、聴覚がそんな感じなのでエサの索敵には嗅覚に頼らざるを得ないように思う。ただそれがどの程度優れているのかは不明。何故なら「エサに明確に反応し近づいて行くという」行動を未だに確認できていないからだ。ただある程度決まったエサしか食べないようなので、エサ生物を少し離れた位置から識別できるぐらいは発達しているのかもしれない。

 

・味覚:これは全くの不明。好みの味とかもわからん。

 

・触覚:これは当然ある。ただ外部からの刺激に対しては私が今まで見た他の巻貝類と比べて鈍いような…。貝殻をピンセットでつついたり、指でつまんで持ち上げたり、水からだして軟体部を指で触っても、割とそのまま(触角は縮める)。大抵の巻貝ならすぐさま貝殻の中に逃げ込んで蓋を閉じるところなのだが。

ただ触角を伸ばして何かを感じ取ろうとしているのはしばしば目にした。砂に潜った状態で砂上に触角を伸ばすことも。しかしその触角を他生物やエサに接触させるシーンは見ていないので、”触角と触覚”との関係性はよくわからない。

 

・平衡覚:これは普通の巻貝並みにはあるのだろうか。「水から完全に出て水槽の蓋の裏に体を逆さにしてくっつく」という行動を長時間行うので、なんだか平衡感覚が優れているような気がするが、これは単に足の吸着力と持久力が優れているだけか?

 

こうやってまとめてみると、思ったより特筆する点がない。いやいや偏食家でありながらも現在まで生き残ってきたコロモガイなのだから、私が知らないだけで何か優れた感覚や体内器官を備えている可能性はある。インターネットレベルだとコロモガイの情報がほとんどないので、難しいなぁ。もっとしっかりした実験を行うべきだろうが、そこまでの熱意はない…。

コロモガイの粘液

飼育して分かったのだが、コロモガイは体表?から多量の粘液を出す(「ツメタガイ」ほど大量じゃないが)。しかもその粘液は強靭で残留性がかなり高い。粘液はコロモガイから出た時は透明?のようだが、時間が経つと濁ったような半透明になり、さらに時間が経つと水槽内のゴミが混じったのか、灰黒色(ホコリのような色)になる。

 

写真を見てもらうのが手っ取り早いが、その粘液は一度何かに付着すると取るのは非常に難しく、特に小動物に付着した場合、自力で除去するのはかなり難しいのでないだろうか。実際に粘液が頭部に付着してしまった「イシガレイの幼魚」(全長3cm)はその翌日に斃死し、殻幅5mmの小さな「イッカククモガニ」は粘液が体に絡みついて身動きが取れなくなってしまった(その後時間をかけて自力で脱出したが)。

 

またこの粘液は残留性が非常に高い。ある時、水槽の壁に貼り付けてある水温計の脇をコロモガイが通った際に、水温計に糸状になった粘液がくっついたのだが、それが何と1週間以上ほぼそのままで残っていた(汚れたホコリの塊のような見た目)。

さらにコロモガイを飼育しだしてしばらく経ったとき、底砂の中の生物をピンセットで取り出す作業をしていたら、コロモガイが出したと思われる粘液の塊が出るわ出るわ…。

 

ここで私は1つの仮説を立ててみた(適当な仮説なので信じないように)。

コロモガイは移動中、砂上もしくは砂中に粘液をトラップのように敷設して、それに引っ掛かり動きが鈍くなった生物を捕食するという戦略をもっているのではないか? ということだ…まぁ実際それを見たわけでないのだが。

しかし確かにこの粘液は他生物にとって、良くないものであると私は思う(混泳生物も粘液を食ったりしてるのは見てないし)。

水槽の壁に貼り付けてある水温計の脇をコロモガイが通った際に、水温計に糸状になった粘液がくっついた。何とこれが1週間以上ほぼそのままで残っていたのだ(色は汚れたホコリのような色になっていたが)

砂中に埋まっていたコロモガイが出したと思われる粘液の塊を引き上げてみる。かなりのボリュームで粘着力は高い。時間が経った粘液には自重で伸びてちぎれるような滑らかさはない

粘液の糸を拡大
こちらは粘液に引っ掛かって宙づりのようになり身動きがとれなくなった「イッカククモガニ」(甲幅約5mm)。この後、かなりの時間をかけてなんとか脱出できたが、カニやヤドカリのような自在に動くハサミを持った生物でないと、この粘液を取り除くのは難しいのではないだろうか

コロモガイは何を食うのか(エサについて)

(写真:今回のコロモガイのエサ実験に使用したプラケース)

コロモガイは自然下で何をどう食べるのかがほとんど(全く?)分かっていないそうだ。

ちなみにWikipediaの『コロモガイ科』のページの『形態』の項には『歯舌はブラシ状の中歯のみで側歯を持たず、吻で獲物の体液を吻から吸入していると考えられている。食道はとても長く、折りたたまれている』との記述がある。

またHP『七重浜生き物図鑑』さんの『コロモガイ』の解説ページには『また本種は食性も一切明らかになっていないが、ナガコロモガイ C. cooperi は底生のゴマフシビレエイ (Torpedo californica) に取り付いて体液を吸うというユニークな摂餌戦略をもつことが知られている (O'sullivan et al. 1987)。』との記述があった(引用させていただきました。ご迷惑だったら仰ってください)。

 

なるほど…「長い吻で体液ちゅーちゅー系」の可能性が高いのか…。

というわけで、私の水槽設備のできる範囲で実験を行ってみることにした。

 

実験方法

実験方法は10×9×9cmの透明のプラケースに砂を2cmほど敷き、その中にコロモガイとエサとなる生物を夕方~翌日朝まで閉じこめて、エサ生物がどうなっているかを確認するというもの。もちろん私が観察している間に何か変化が起こればそれも記録する。

またエサ生物について詳しい人に相談したところ、コロモガイと同じような水深帯の砂泥底に生息する、小型の軟体動物(キセワタ類やウミウシ類、貝類)が狙い目ではないか? とのことだった

ちなみにプラケースとはダイソーで売ってる「砂糖ケース」の壁面に直径1.5mmほどの穴を多数開けて通水を確保したもの。安価でとても使い勝手が良い。

では早速、結果を発表していこう!!

実験① 人工エサと冷凍生エサ

まず手始めに手元にある人工エサ(配合飼料)と冷凍生エサを試してみた。結果は以下の通り。

 

・直径3mmほどの粒エサ(日清配合飼料「おとひめ」) → 興味、反応なし。おそらく食べていない。

・冷凍ブラインシュリンプ → 興味、反応なし。おそらく食べていない。

・冷凍してあった浦安産「ナミマガシワ」(二枚貝)の身と内臓 →興味、反応なし。おそらく食べていない。

 

…想定の範囲内である。「”おそらく”食べていない」としているのは、上に書いたようなエサは時間が経つと形が崩れてしまうのと、後述する”コロモガイのエサの食い方”だと、ほんのちょびっと味見したり口を付けた可能性が全くないことが証明できないからだ(それと深夜は観察できないしね)。

そもそもこういうものをガツガツ食うなら、コロモガイの食性はもっと解明されているだろうし、飼育記録なども世に出ていると思う。

実験② 謎の卵塊 from 三番瀬

(写真:青い矢印が謎の卵塊である。直径1.5cmほど)

生きたエサ第一弾は、4月中旬に三番瀬で採集した謎の卵塊。見た目は「タマシキゴカイ」の卵塊を小さくしたような感じ。砂泥底に生息するウミウシの仲間はこんな感じの卵塊を産むことものもいるが…正体は不明。

 

 

結果は、興味・反応なし、24時間以上ケース内に入れておいたが食われたような跡はなし。

実験③ キセワタガイの一種 from 三番瀬

(写真:青矢印がキセワタガイの一種。小さい)

実験2発目にして大本命の登場。体長10mmほどのキセワタガイの一種だ(おそらく「ヤミヨキセワタ」か「タソガレキセワタ」ではないか?とのこと)。

何故大本命かというと、①コロモガイの仲間には歯舌を持たず他生物の体液を吸うものがいる、②このコロモガイと同場所、同水深帯に生息している可能性が高い、③このような生物は移動スピードが遅い、④詳細は忘れたが似たような組み合わせの採餌情報を聞いたことがある、という理由からだ。

コロモガイもかなり腹が減っているだろう…。ドキドキワクワクの実験スタートだ。実験ケースに投入してから私が寝るまでの間は目立った変化はなかった。よく朝どうなっているかだ…

 

 

(翌朝)

 

 

キッキセワタくんがっ………ボロボロになって、死んでる!!!!!

下の写真を見てもらうと分かるが、体の背面後部が大きく破れている。噛みつかれて表面だけ引き剥がされたされたような感じ。昨晩まで元気一杯だったので実験ケースに侵入してきた別の小さな生物による攻撃とは考えにくい。

これを見て「よっしゃあ!!やっぱ軟体系(生物がエサ)か!!」とガッツポーズをして詳しい人に写真を送ると返信が来た。

 

「おお!食われてる!! ………でも何だかちょっとかじって味見したって感じにも見えますねぇ」

 

…そう言われればそうかもしれない。コロモガイの体サイズから考えるともっとガッツリ食べたり、体液を吸いつくされてシワシワになってもいい気がする。やはり食っているシーンを確認できていないのが問題だ。

今回の結果をまとめると「エサ生物にはなり得るが、好んだり常食しているエサかは分からない」ということになった。

(まだまだつづく)

翌朝実験ケースで見つかった、キセワタガイの一種の死がい。写真右手が前方となる。背面の後ろ側が大きく食い破られている
背面をこちらに向けて撮影。写真左上が前方となる。表面だけかじりとられたような感じだ(体内の貝殻も残っている)。内臓にも手を付けられていない?

実験④ アサリの稚貝(殻長10mm)

(写真:青矢印が「アサリ」の稚貝)

干潟には「アサリ」などの二枚貝とその稚貝を食べる生物はたくさんいて、その食べ方も生物によって様々。非常にメジャーなエサ生物だ。そしてご存じの通り「アサリ」は味が良いので嗜好性もかなり高い。これも期待大のエサだ。

しかしコロモガイ「アサリ」の貝殻を開いたり、穴を開けたり能力があるのか…?

 

 

残念ながら結果は、興味・反応なし、24時間以上ケース内に入れておいたが、その後も「アサリ」は元気一杯生存。うーむ…

実験⑤ ヒメシラトリ & ホンビノスガイの稚貝

(写真:右手が「ヒメシラトリ」(殻長約13mm)、左が「ホンビノスガイ」の稚貝(殻長約10mm))

先の「アサリ」の結果があるので期待は少ないが、「ヒメシラトリ」コロモガイと同じく干潟などに生息する潮下帯種! 殻も薄いしもしかしたら…!? と実験をすることに。今回は「ヒメシラトリ」「ホンビノスガイ」の稚貝の2種を同時にケースに入れた。

 

 

結果は、どちらも食われたり襲われた様子はなく、翌日以降も元気一杯。

ただ部屋を暗くした際、コロモガイ「ヒメシラトリ」の方へズンズン進んで行き、しばらくの間「ヒメシラトリ」に覆いかぶさっていた。これはもしや!! と思ったが特に何かしたわけではなく、再び移動していった。二枚貝はダメか…?

実験⑥ イッカククモガニ(甲幅5mm)

(写真:青矢印が「イッカククモガニ」

軟体動物以外も試してみよう。動きが速くなく攻撃性の低いものなら…ということで小型の「イッカククモガニ」で実験してみた。一応コロモガイが採集された場所にも生息しているカニだ。

 

 

結果は、興味・反応なし、翌日以降も元気に生存。ただコロモガイの出した粘液に引っ掛かって身動きが取れなくなっているというシーンが見られたので、それは収穫であった。

実験⑦ クモヒトデの一種(盤の直径約3mm)

(写真:青矢印がクモヒトデの一種)

一般にはあまり知られていないが、クモヒトデ類は大小様々な海洋生物の重要なエサとなっている。今回実験使用したクモヒトデの一種はコロモガイと同じく三番瀬で採集されたもの。

今回はエサ生物が小さいので、実験ケースを穴の開いていないものに変え、さらに砂を抜いた状態で行った(クモヒトデは2匹入れた)。

 

 

結果は、興味・反応なし、2匹のクモヒトデの一種は翌日以降も元気に生存。少し期待していたのだけどなぁ。

実験⑧ ヒモムシの一種(自宅水槽5号の底砂内にいたもの)

(写真:青矢印がヒモムシの一種たち。気が付いたらこの水槽の底砂内に結構な数が住み着いていた)

今までの実験結果より「体表の硬い生物はコロモガイのエサとしては向いていないのかもしれない」という考えが頭を支配する。やっぱ軟体系か。このコロモガイ、もう3週間近くエサを食っていない(ように見える。そもそもどのように食うのかすら分かっていないので、確かめられない)。

もしかしたら水槽の底砂の中にいる何かを食っているのか? 底砂内にいる軟体系の生物で数が多いのはアイツだ。正体不明のヒモムシ軍団である。このヒモムシたち細長くて非常によく伸びまたヌルヌルしていて、蕎麦のようにずるるっといけそうだが、何となく他の生物たちから忌避されている印象がある…。

 

取りあえず実験だ。10匹ほど採集して、実験ケースにイン。今回は休日の朝から実験を行ったので様子は確認し易い。今回も砂があると何をしているか分からなくなるのと脱走防止のため、穴無しケース+砂なしの条件とした。

 

 

結果は、興味・反応なし…。またそれに加えてケースと蓋のすき間からヒモムシ類が1匹、また1匹と逃げて行ってしまった…。今回は実験環境が不十分だったので微妙な判断ではあるが、私が見た限りではコロモガイはヒモムシたちを食いたそうにはしていなかった。

実験⑨ メジナの稚魚(全長約15mm)

(写真:2025年4月下旬に河口付近で採集した「メジナの稚魚」

初心?に戻って、新鮮な魚肉では」どうだろうか? これは同時期に河口付近で採集したもので、飼育中に死んでしまったもの。不謹慎だが鮮度は抜群である。

再び穴の開いたケースに砂を敷いて、元の状態に戻し実験開始。

 

 

ダメだ!! 結果は、興味・反応なし・食べた形跡なし!!

漂う諦めモード…。本当はもっと試したい生物がいるのだが、採集に行くことができないし採れる保証もない。コロモガイも疲れているかな、と思ったので本実験を一区切りとし、コロモガイを実験ケースから解放した(すまんかったな…)。

その時は突然訪れた…!!!

ついにコロモガイがエサを食う瞬間を目撃!!

(写真:ん?…「ウミニナ」の体から変なものが出てるぞ…??)

2025年4月下旬のある夜。夕食を終えてPC画面をボーっと眺めつつ、コロモガイの入った自宅水槽5号に目をやる。デスクに座った状態から左に振り返ると、すぐにこの水槽が確認できるようになっているのだ。コロモガイを飼育しだしてからはこの振り返る動作がクセになっていた。

 

「ん?ウミニナの体に何か変なもんがくっついてるぞ………いや、これはもしや!!!!!」

 

椅子から滑り降りてデジカメを手に取り、刺激を与えないように静かに顔面を水槽に近づける。

よく見るとこれは、砂中から伸びた触手状の何かが「ウミニナ」の体に刺さっている(写真)。水槽内にいる生物から考えて、この太さと長さのものはおそらくコロモガイの口吻だろう。

胸の鼓動と興奮を抑えつつ、さらによく観察してみる。口吻の太さは2.5~3mmほどで、色は白色の強い薄い肌色で、その表面に小さな褐色の点が帯状に密在している(下の写真)。

口吻の内部には白色~薄い桃色の太い管が透けて見え、それが何かを吸い出そうとしているかのようにドクンッドクンッと脈打っていた。またその太い管に沿って濃い青色~黒色?の細い管があるのも見えた。

 

コロモガイがいつ頃からこうしていたのかは不明だが、私が観察していた間「ウミニナ」の方は微動だにしない。何か毒的なもので麻痺させられているのだろうか。ただ一度だけ「ウミニナ」が自身の蓋をギュッと閉めてコロモガイの口吻を蓋で挟んだが、挟まれても口吻は何の問題なさげに体液の吸引を続ける。蓋もすぐに元の位置までだらんと開いた。

 

こういうことだったのか…。自分は砂中に潜んだまま、長い口吻を伸ばして砂上 & 砂中の生物を攻撃する。たしかにこれだと採餌シーンを観察するのはかなり難しい。しかしまさか部屋が明るいときにこのような行動をするとは…。

 

一通り撮影を終えた後、この口吻が本当にコロモガイのものなのか一応確かめることに。

まず「ウミニナ」をピンセット挟んで引き剥がす。異常を察知したのか口吻は「ウミニナ」からすぐに離れ、素早く縮んでいく。逃がすかっ! とすぐさま口吻が縮んでいった先の砂中にピンセットを突き刺し、砂の中に大きな塊を確認。そのままピンセットで挟んで一気に持ち上げる。…うん、コロモガイだ(下の写真)

 

※ページの下の方にコロモガイが口吻を伸ばしているシーンをバッチリ撮影できたの写真をUPしているので、そちらもどうぞ~

「ウミニナ」の体に刺さっているコロモガイの口吻だろう。刺さっているというか吸着しているかな。口吻の太さは2.5~3mmほどで、色は白色の強い薄い肌色で、その表面に小さな褐色の点が帯状に密在している

口吻の内部には白色~薄い桃色の太い管が透けて見え、それが何かを吸い出そうとしているかのようにドクンッドクンッと脈打っていた。またその太い管に沿って濃い青色~黒色?の細い管があるのも見えた。動画でお見せしたいところ

一応口吻が本当にコロモガイのものなのか一応確かめることに。まず「ウミニナ」をピンセット挟んで引き剥がす。異常を察知したのか口吻は「ウミニナ」からすぐに離れ、素早く縮んでいく。ガッツリ噛みついていたとかそういう感じではない

すぐさま口吻が縮んでいった先の砂中にピンセットを突き刺す
砂の中に大きな塊を確認。そのままピンセットで挟んで一気に持ち上げる。…うん、コロモガイ
コロモガイに攻撃を受けた直後の「ウミニナ」。蓋が半開きになってぐったりしている死んではいない。コロモガイの口吻が接していた場所には粘液が付着したようで、その粘液に底砂がくっついている。この出来事から後、水槽内で体の側面に砂粒がくっついて、蓋を閉めづらそうにしているウミニナ類をポツポツ見るようになった気がするが、まさか…。ちなみにこの「ウミニナ」はこの後回復し、この出来事の約1ヶ月後の今も元気に生存している。

採餌シーンをイチからちゃんと観察したい!!(実験⑩ ウミニナ)

(写真:「ウミニナ」に向かって?砂中から触角を伸ばすコロモガイ

取りあえず「ウミニナ」がエサ生物になり得ることは分かった。出来ることならコロモガイ「ウミニナ」の体液を吸うまでの一部始終を見てみたい。ということで、先に行ったプラケースでの実験を「ウミニナ」で行ってみることにした。

今回は時間帯に関係なくコロモガイ「ウミニナ」をケース内に同居させ、私が可能限りの時間をフルに使って観察してみることに。ちなみに「ウミニナ」は上の項で体液を吸われていたのと同じ個体を使用する(そのあと普通に元気になりました)。

 

 

結果は………結局「ウミニナ」を襲うシーンは観察できず(無念)

丸三日以上実験を続け、夜もかなり粘ってみたが、終にその瞬間を見ることは叶わなかった。

 

 

(追記)後日バッチリ撮影出来ました!!(笑) その様子はこちらから

 

 

東京湾奥のコロモガイにとってウミニナとは…??

そもそも三番瀬浦安側ではコロモガイを発見することは非常に稀で(深い場所では違うのかもしれないが)、さらに「ウミニナ」も最近徐々に見るようになってきている気がするが、数は著しく少ないというのが現状である(2025年6月)。

そもそも「ウミニナ」コロモガイが常食している生物なのだろうか? それとも今回たまたま水槽内に食えそうなのが「ウミニナ」しかいなかったので手を出したのか。

先にも書いたがこのコロモガイ、飼育を開始して1ヵ月以上エサを食っているシーンを目撃できていなかった。だが実は前々から砂中でひっそりと「ウミニナ」の体液を吸って生きながらえていたのかもしれない。しかも吸われた方の「ウミニナ」も死ぬわけではないので尚更気が付かなかった…?

何でも試してみるものだ(コロモガイ、他の生物も食う)

キセワタガイを手に入れる

(写真:これが「キセワタガイ」だ!!)

2025年4月末、ひょんなことから「キセワタガイ」2個体を手に入れる。三番瀬で採れたものだそうだ。大きさは3cmほど。

「生息場所が被っている + 軟体動物 + 動きが遅い」ということでコロモガイのエサになりそうだけど、ちょっとサイズがデカいか? でも「キセワタガイ」の飼育ってちゃんとしたことないし、良い機会だから取りあえず水槽に入れてみよう。

実験⑩ キセワタガイ

(写真:青矢印が「キセワタガイ」

取りあえず…「キセワタガイ」が元気なうちに実験を行うことにした。今回は両者とも砂によく潜る系なので、居場所や行動が分かりやすいよう砂を少な目にした。見るからに体液が吸い易そうな体をしている「キセワタガイ」。期待大である。

 

 

実験を開始した日の深夜、トイレに起きた私はついでにコロモガイの様子を見に行く。真っ暗な中、水槽に刺激を与えないそーっと近づき、顔面を水槽に近づけ目を凝らす。

 

 

「キセワタに口吻が刺さっとるやんけ!!!!!」

 

まさかの事態に慌ててカメラを構えるが、部屋が暗すぎてまともな画が撮れない!! ライトで照らすか? リスクがあるが…

ライトで一瞬照らした瞬間に撮影を試みることに。コイツにも今まで相当世話になったな(ダイソーの100円ライト)。

 

勝負は一瞬!! ライトON!!

 

 

光が当たった瞬間、コロモガイはすぐさま口吻を縮めてしまった。………おれのバカぁぁああああ

この時ほど暗視撮影モードの付いたカメラが欲しいと思ったことはない。仕方がないので、口吻を引っ込めたあとのコロモガイとの写真を撮って終了することに。

しかし今回も口吻が体にくっついているのに、コロモガイは逃げたり嫌がっている素振りがなくじっとしていたままだった。やはり何か毒的なもので麻痺させているのかな? 

 

 

実験⑪ コロモガイ(再試)

やっぱり採餌シーンをちゃんと撮影したいので、再び同様の実験を行うことに。

 

 

…しかし結局「キセワタガイ」に口吻を刺しているシーンは拝めず。やはり24時間カメラ監視ぐらいしないと厳しいのかもしれないですね。

コロモガイ「キセワタガイ」に口吻を刺していた時の様子。残念ながら写真は口吻を既に引っ込めてしまった後(ライトの光を当ててしまった…)。「キセワタガイ」の体の後半部に口吻が刺さっていた(写真だと「キセワタガイ」は頭を奥に向け、体の後端部をこちらに向けている)。「ウミニナ」の時と同様、今回も口吻が体にくっついているのに、コロモガイは逃げたり嫌がったりせず、じっとしていた
こちらは5月上旬に再実験を行ったときの様子。夜間「キセワタガイ」に突進していくシーン(写真)もあったが、ただ踏みつぶしただけ?だった(青矢印が「キセワタガイ」
後日、コロモガイが口吻を伸ばしているシーンを撮影できた!! やったー!! ゾウの鼻みたいだが、MAXまで伸ばすとこれの3倍以上の長さになる(あと細くなる)
何だか触角で挨拶してるみたいですね(触角もよく伸び縮みし、太さも変わる)

まとめ(コロモガイは何を食うのか)

実験結果まとめ

今まで行った実験結果を時系列順に一覧にしてみた。

は「食べているシーンを目撃した、食べた形跡があったもの」、×は「目視による観察中に興味・反応が見られず、また食べた形跡も確認できなかったもの」を表す。

 

①A 粒タイプの配合飼料(おとひめ) → ×

①B 冷凍ブラインシュリンプ  → ×

①C 冷凍二枚貝(ナミマガシワ) → ×

② 謎の卵塊(三番瀬で採集) → ×

③    キセワタガイの一種(三番瀬で採集) → 

④ アサリの稚貝(殻長10mm) → ×

⑤A ヒメシラトリ(殻長15mm) → ×

⑤B ホンビノスガイの稚貝(殻長10mm) → ×

⑥ イッカククモガニ(殻幅5mm) → ×

⑦ クモヒトデの一種(盤の直径3mm) → ×

⑧ ヒモムシの一種 → ×

⑨ メジナの稚魚の死がい(全長15mm) → ×

⑩ ウミニナ → 

⑪ キセワタガイ(大きさ3cm) → 

 

考察

まず初めに言っておかねばならないのは「今回私が行った実験および観察は、めちゃくちゃいい加減なものなので100%信用してはならない」ということだ。

ちゃんとやるなら、底砂や水温はコロモガイが活発になるような状態で一定にする必要があるし、混泳生物も全て排除すべきだろう。また人間活動(私)の影響(光、音、衝撃など)も極力無くす。そして何より、いつ採餌が行われるか分からないので24時間監視できるシステムを導入して、「本当にそのエサを食わなかった、手を付けなかった」ということを明らかにする必要がある。

だがそんなことは私には無理だ。逆に言えば軽い気持ちで始めたからここまで続いたとも言える。

 

しかし今回の実験・観察によりコロモガイの行動と食性の実態がちょびっと掴めたように思う。それらを以下に並べると

 

・コロモガイは光量が少ないときに(暗くなってすぐが特に)行動が活発になる

・採餌方法は「口吻を伸ばしてその先端を軟体生物の体表に密着させ体液を吸う」が想定される

・エサ生物は砂泥底に生息するキセワタガイ類、巻貝類が候補に入る

 

他にも気づいたことは色々あるが、この3つが信頼度が高いと思う。

またコロモガイの食性がほとんど分かっていない理由として個人的に思ったのは

 

1.暗い時間に活発になるので観察しづらい

2.体液をエサとすると、体内(消化管)にエサ生物の残骸が残りにくい

3.エサ生物が近くにいても、すぐ反応するわけではなくいつ採餌するのか分からないので観察しづらい

4.一連の採餌行動をコロモガイが砂に完全に潜った状態で行っている場合、それを観察することは困難(エサ生物も砂中いる場合尚更分からない)

5.コロモガイは結構外敵(人間など)に敏感?なので、ありのままの姿を観察しずらい

6.そもそもコロモガイが研究対象として興味を持たれていない

 

の6つだ。私も一応学生時代には魚類の生態を研究していたが、改めて水中生物の研究できちんとした答えを出すというのはとても大変なことだなと思う。というかある生物に対して「100%これが当てはまります!!」というのはかなり困難だよね…。まぁそもそも100%の答えを出すことにあまり意味はないのかもしれない。

 

今回実験対象となったコロモガイ君はこの項を書いている2025年6月上旬も元気に?自宅水槽5号で暮らしております。残酷な話だが、正直ここまで生存してくれるとは思っていなかった。何か美味いエサを採集しに行かねば!!

 

ここまで読んでくれた方ありがとうございます。もしこのページを全部読んだアナタはおそらく「変わり者」でしょう。それではまた~