ホンビノスガイ

特徴

(写真:2022年5月下旬、三番瀬で採集。貝殻の幅約4cm。生きた状態で撮影。貝殻表面には同心円状の隆起した筋が多数見られ、触るとザラザラガリガリとした感触。また殻頂がくびれるように少し曲がる)

レア度:★★★☆☆ 軟体動物門 二枚貝綱 マルスダレガイ目 マルスダレガイ科 学名:Mercenaria mercenaria 英名:Hard-shell clam よく見られる季節:?

最大で貝殻の幅が10cmほどになる。北米原産の外来種であり1990年代に日本での存在が確認されてから、近年東京湾を中心にその数を増やしている。

貧酸素や低塩分などの環境の変化に強く、「赤潮」、「青潮」などの発生により他の貝類が死んでしまうような状況にもかなりの耐性があるようだ。ただ数は増えているものの、他の生物への影響は少ないと考えられている。

貝はふっくらと厚みのある形状をしており、貝殻は厚く、持つとズッシリと重たい。貝殻の色は生息環境や個体によって変化するようで、白っぽいもの、灰色っぽいもの、黒ずんだものなども見かける(泥っぽい場所のものは黒ずんだものが多い気がする)。

貝殻表面には同心円状の隆起した筋が多数見られ、触るとザラザラガリガリとした手触り。また殻頂がくびれるように少し曲がる。

上記のような特徴からホンビノスガイはよく「カガミガイ」と混同されるが、両者を比較すると、①ホンビノスガイに比べ「カガミガイ」は貝の膨らみがなく、貝殻表面の筋の並びもホンビノスガイの方が粗い、②殻頂の横に見られる窪んだ部分(月面という)にあるでっぱりが、貝殻を真上から見るとホンビノスガイでは目立つが、「カガミガイ」ではほとんど目立たない、③「カガミガイ」の貝殻の合わせ面は平らだが、ホンビノスガイでは合わせ面に細かなギザギザ並ぶといった違いがある。

食性は他の二枚貝と同様に、水中のプランクトンやデトリタスを水ごと吸い込んで、体内で濾し取って食べる。東京湾では春と秋の2回産卵を行うようだ。

関東に住んでいる人なら一度はホンビノスガイという名前を聞いたことがあるかもしれない。近年では「アサリ」と並ぶ東京湾潮干狩りの主役であり、こちらをメインに狙う人も多い。

少々身が硬いが、味は良いため、アサリなどの漁獲量減少の救世主として、市川市や船橋市では盛んに漁獲されており、スーパーの鮮魚コーナーで見かけることも多い。また2017年には千葉県が三番瀬で採れる本種を「三番瀬ホンビノスガイ」としてブランド認定している。

(追記:2021年6月14日)このページを作った際にホンビノスガイを「アサリなどの漁獲量減少の救世主」と書いたが、2021年現在ホンビノスガイを取り巻く状況もかなり悪化しているようだ。

船橋漁協の貝類の漁獲量を見てみると(浦安には漁協がないので)、平成30年度までは1500t前後(平成30年度1328t)獲れていたが、令和1年度には772tに急減少(ただこの年度から底曳網漁業でのホンビノスガイの漁獲量が公表されており、それは332t。2つの合計は1104t)。さらに令和2年度は438tにまで減少(この年の底曳網による漁獲量は379tで、合計817t)。

またスーパーに並ぶホンビノスガイの大きさも最近は小さくなっているという噂も聞いたことがある。東京湾奥の底生動物の専門家の知人と話したのだが、ホンビノスガイは成長の遅い貝で、繁殖できるようになるまで約5年かかるらしい。

漁獲量のデータから推察するに、現状、既に繁殖できるサイズのホンビノスガイはほとんど獲り尽くされ、現在は繁殖サイズに満たないホンビノスガイが漁獲されているのではないかと…。当たり前だが、親がいなければ数が増えることはない。

専門家の知人は、もしこの推測が正しいなら漁業資源としては「終わりコース」と言っていた。

(2023年8月)

反対側(右側)の貝殻を撮影。貝殻の色は生息環境や個体によって変化するようで、白っぽいもの、灰色っぽいもの、黒ずんだものなども見かける。目盛りは1cm
横(前方)から撮影。貝は厚みがあり丸っこい印象を受ける。目盛りは5mm
横(後方)から撮影。目盛りは5mm
正面から撮影。目盛りは5mm
背面から撮影。殻頂の左(後方)に褐色の靱帯と右(前方)に月面という窪みが見られる。目盛りは1cm
貝を開いて中身を見てみる。反対側の貝殻に結構身が持っていかれてしまったので、これは完全な状態ではない。目盛りは1cm
表側(左側)の貝殻の内側を見てみる。目盛りは1cm
貝殻の合わせ面には細かなギザギザが並ぶ。目盛りは1cm
足(斧足)を伸ばすホンビノスガイ
砂に潜ろうとするホンビノスガイ。他の多くの二枚貝類と同様、体を縦にして潜っていくようだ。伸ばした水管の先端には小さな黒点が集まって黒っぽく見える

採集する

(写真:2017年4月、三番瀬採集。貝殻の幅約6cm。生きた状態で撮影。この頃は大きいのも結構いたなぁ~と記憶している)

あまりたくさん採ったことがないので、詳しいコツなどは分からない。

「アサリ」と同じように砂を掘り返していると、ポツポツ見つかるという感じか。

(追記:2023年8月22日)ここ2~3年、三番瀬浦安側で見かけるホンビノスガイは小さいものばかりになったなぁ~という印象を受ける。真剣にホンビノス狩りをしているわけではないので、現状全てを把握しているわけではないのだが。よく見かけるのは貝殻の幅が3~4cmぐらいかな。これだと身はかなり小さいよね。