イシガレイ

特徴

(写真:2019年11月上旬、三番瀬南東で釣りで採集。全長約45cm。まさかのルアーで釣れた。昔はよく釣れたそうだが、現在(2024年)ではこのような大型のイシガレイが岸から釣れることは非常に稀だと思う。スケールは30cm定規)

レア度:★★★★★ 脊索動物門 条鰭綱 カレイ目 カレイ科 学名:Kareius bicoloratus 英名:Stone flounder よく見られる季節:3~5月(幼魚)、10月~早春?(釣り)

最大で全長60cmほどになる。全長10cmぐらいになると体の背面の上側に石のようなコブができてくることから「石ガレイ」の名が付いた(個体によっては顔や体の他の場所にもコブができることもある)。

イシガレイ成魚は、一般にカレイとして売られている「マガレイ」や「マコガレイ」の成魚と比べると体高やや低くスマートな印象があり、また顔つきもイカついように思う。イシガレイの体表にはウロコがないのも大きな特徴。

食性は動物食性で二枚貝の水管やゴカイ類、小型の甲殻類や小型のイカなどを食べる。大型になると小魚を捕食したり、「アサリ」などの二枚貝を殻ごとバリバリ食べることもある。写真のイシガレイは2019年11月上旬にルアーで釣ったものだが、胃の中にはバラバラに砕かれた「アサリ」「マテガイ」の貝殻がパンパンに詰まっていた。

またイシガレイは淡水にもある程度耐性があるらしく、たしかに浦安の河川の河口や中流域でも目にしたことがある。産卵期は秋~翌年の春頃までと長い。

毎年3月頃になると、三番瀬の浅瀬や河口に全長2cmほどの「イシガレイの稚魚・幼魚」がたくさんやってくる。網で海底をひと掻きすれば、必ず1匹は捕れる時もあるほどだ。東京湾奥のイシガレイたちは、三番瀬のような浅瀬でプランクトンや小型の動物などを食べて全長8cmぐらいまで成長すると、沖合の深場へ移動して行く(真夏を迎える頃には浅場から姿を消す)。

毎年思うのだが、あんなにたくさんのイシガレイの子供がいるのに大きなイシガレイは滅多に釣れない。みんなどこへ行ってしまうのだろうか?(沖の深場では釣れるのだろうか?)

(2020年5月)

(2024年1月)

上の写真と同じ個体の体の背面をよく見てみる。背面の上側(胸びれの直上あたりに)、大きな横長の石のようなコブが見られる。一般的に「イシガレイの石」というと、この場所にできたものを指すことが多い。この個体さらに側線に沿った部分と、背面の下側にも小さなコブが見られる
同個体。またこの個体は頭部の大部分が、薄いウロコのような石に覆われていた。鎧のようだ
同個体をひっくり返してみる。イシガレイの腹面。腹面は一面真っ白で、所々に小さな褐色斑がわずかに見られた。スケールは30cm定規
こちらは2019年10月下旬に河口付近で採集したイシガレイ。この個体も頭部周辺にコブがある

採集する

(写真:2019年4月中旬に三番瀬で採集。全長約5cm。イシガレイの幼魚)

大きな成魚の採集はなかなか難易度が高いと思う。個人でやるなら釣りか、青潮時などに弱って浅瀬に浮いてきた個体を網で掬うの2つだろうか。

私も2018年ぐらいまでは晩秋~3月ぐらいまで投げ釣りでカレイ類を狙っていた。が、ハッキリ言ってかなり釣れない。釣果も6年間で6匹だけ。しかも釣れたのは全て「マコガレイ」でイシガレイは皆無であった(まぁ「マコガレイ」の方が美味しくて嬉しいんだけど)。

エサやポイントの選定、投げる距離を伸ばすなど改良していけばもっと釣果を伸ばせるのかもしれないが、どうもそれに見合った釣果が得られる気がせず、今はカレイ釣りは辞めてしまった。

 

3~5月頃に見られる全長5cmぐらいまでイシガレイの幼魚なら採集はそんなに難しくない。「イシガレイの幼魚」は人が近づくと、ぴゅーっと砂煙を上げながら数m移動し、また砂に隠れる。その砂煙を目印に、「この辺に隠れてそうだな」と思った場所を一気に砂ごと網ですくうと捕れる。

潮が引いて水深が10~20cmぐらいになった場所で、偏向サングラスをかけて水中を探すと、カレイを発見しやすい。タモ網はフレームが丈夫でしならず、網枠の先がまっすぐになっているものを使うといい。

また底引き漁業の要領で、海底をタモ網で引きずりながら歩いていると、いつの間にか網に入っていることもある。岩や海藻、海底くぼみなど変化がある場所を狙うのもポイントだ。

また6月以降は「シロギス」釣りの外道として、小型のカレイ類が釣れることもある。口が小さいので小さな針にイソメ類を短く付けると良いと思う。

こちらは2022年3月下旬に三番瀬で採集したイシガレイの稚魚。全長約2cm。このくらいのサイズだと体は半透明のような感じだ。目盛りは0.5mm
こちらは2022年4月下旬に三番瀬で採集した個体。全長約5cm。同じ場所で採れる「マコガレイの幼魚」と比べると体高が高く、背びれ・尻びれも高さがあるように思う

飼育する

(写真:マーレ水槽にて。2匹並んだイシガレイ。カレイ類だけあって擬態能力はかなり高く、海底の色彩と自分の体色をそっくりに変化させる)

大きな成魚の飼育経験はない。全長3~13cmほどまでの幼魚、若魚なら三番瀬水槽、自宅水槽で何度も飼育を行ってきた。

水温22℃固定で通年飼育可能。また水温15~26℃の範囲での飼育可能も確認。水の汚れにも結構強く、硝酸塩の蓄積も特に気になったことはない。比重は1.023で固定。

タフで飼い易い魚だと思うが、急激な水温の変化や塩分の変化にはやや弱いので、水槽へ入れる際や水換えには注意したい。また水槽には細かな砂を敷いてやった方がストレスが少ないように思う(砂のない水槽で飼ったことがないが)。粒径が1~2mmほどのサンゴ砂でも代用可。

餌付きは良いが、水槽に入れたばかりだと冷凍ブラインシュリンプや釜揚げ桜えびなどの生っぽいものしか食べてくれない。慣れてくれば粒タイプの配合飼料(おとひめ)もガツガツ食べるようになる。

餌付きが悪い場合は生きたゴカイ類をミンチにして与えるとよく食べる。それに徐々に配合飼料を砕いたものを混ぜて与えれば、いずれ配合飼料も食べるようになるだろう。

 

幼魚サイズでの比較だが、「マコガレイの幼魚」と比べて活発で人慣れもし易い(というかめっちゃ人慣れする)。他魚と混泳させても、自分の存在をアピールしてくれるので、展示用に飼うなら私はイシガレイを選ぶかな。どういう理由かは分からないが、体が大きくなると、体を縦にしてヒラヒラと立泳ぎをしながら、水面から口を出してエサをねだるような行動を取る。

ただ混泳には若干注意が必要で、ひれをかじるような魚がいると、ひれがボロボロにされてしまうことがある。私の経験では「イソギンポ」との相性が最悪で、「イソギンポ」がいる水槽のイシガレイはもれなくヒレがボロボロになってしまった。そのため現在では「イソギンポ」との混泳は行っていない。

また今まで色々な生物の混泳を行ってきたが、カレイ類や「マゴチ」など海底の砂地に隠れるような魚類は、いじめ…というか気の強い魚の攻撃対象になり易い。そのような攻撃的な魚が既にパワーバランスを維持している水槽に、後からカレイ類を入れると、すぐに攻撃されまくり最悪命を落としてしまう。

 

また逆にイシガレイもある程度大きくなると(全長6cm~ぐらい?)、小型のエビ類やヤドカリ類などの底生動物を捕食してしまうので注意が必要。中々の素早さで、貝殻の奥に隠れられるより先に「ユビナガホンヤドカリ」の体に食らいつくシーンを見た時には驚いた。

2021年1月上旬、市役所水槽で撮影。イシガレイの若魚。全長約10cm。かなり前に採集したイシガレイの幼魚を育てたもの。写真のように細かく砕いた貝殻を用いた底砂でも上手に隠れる

食べる

(写真:浦安で釣ったイシガレイと「マコガレイ」の煮付け。ウロコがなく、皮が黒っぽいのがイシガレイの切り身だ)

浦安で釣ったもの(45cmクラス)しか食べたことないが、普通に美味しい魚である(もちろん活け締め、血抜きはした)。スーパーに並ぶこともある魚ではないだろうか。

定番の煮付けは、身に弾力があり、クセのない味わい。煮汁を濃いめにしショウガなどの薬味を聞かせたい

刺身は少し水っぽさがあるが十分美味い…があまり特徴のない味か(一応1日寝かせた)。なのでサクにして1日寝かせたものを、さらに昆布締めにして1日置いてみたところ、これは非常に美味かった。適度に水分が抜け、コリコリした食感と寝かせたことによる旨みの増幅で箸が止まらなかった。

ヌメリが強い魚なので、捌くときはまず塩とタワシでヌメリを落とすと良い。あとイシガレイの特徴である石状のコブだが、これも放置すると臭みが出るそうなので、ヌメリを取った後に切り取っておくのが良いだろう。