シロギス

特徴

(写真:2020年6月中旬、日の出の海岸で採集。全長約17.5cm。メスのシロギス。投げ釣りで採集した。産卵を控えていたのか、腹にはたっぷりと卵を蓄えていた。スケールは30cm定規)

レア度:★★★★☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 キス科 学名:Sillago japonica 英名:Japanese sillago よく見られる季節:6~9月

全長30cmほどまで大きくなり、37.2cmという日本記録がある。天ぷらの「キス」とはこのシロギスのこと。釣り人の間では魚体の美しさと釣趣の良さから「サーフの女王」と呼ばれることもある。

浦安では毎年初夏~秋口にかけて、日の出や高洲の海岸から投げ釣りをするとポツポツと釣れるが、年によっては全然釣れないということもザラ(2015~2023年の感想)。また2019年には晩秋から初冬にかけて10cmぐらいの小さなシロギス(ピンギス)が釣れることもあった。生まれが遅い個体群なのだろうか?。

ブルルッという小気味良いアタリと食味の良さからシロギス釣りは非常に人気があり、日本各地でシロギス釣り大会が開かれているほか、東京湾でもシロギス狙いの釣り船がたくさんある。

シロギスは20cmを超えると良型、30cmクラスは「肘たたき」(大きなシロギスを手に持つと尾びれが肘を叩くことから)と呼ばれ、「肘たたき」を釣ることは釣り人最高の名誉の1つだ。

水深の浅い砂地や、砂浜、河口などに生息しており、基本的には海底に潜む小動物を食べる。小さなうちはカイアシ類などの微小な甲殻類や小さなゴカイ類、大人になるとそれらに加えて小魚やエビなどの甲殻類、二枚貝の水管などを捕食する。

2019年6月中旬に浦安で釣った15cmのシロギスの胃の中には、二枚貝の水管や1cmほどのエビのような甲殻類と「カイヤドリウミグモ」と思われるウミグモ類が入っていた(下の写真参照)。

産卵期は6~9月頃で、この期間中に1匹のシロギスが何度も卵を産む。

 

以下に、『日本大百科全書』の『シロギス』の解説を引用させていただく。

『硬骨魚綱 スズキ目 キス科に属する海水魚。単にキスともよばれる。北海道以南の日本各地、西太平洋からインド洋にかけて広く分布し、内湾や沿岸の砂泥底に生息する。

体は延長し、前方で丸みを帯びる。吻(ふん)は長く、口は小さい。体色は背側は淡黄褐色で、腹側は銀白色を帯びる。背びれは12棘(きょく)、20~23軟条、側線鱗(そくせんりん)数は70個、脊椎(せきつい)骨数は35個。

産卵期は6~9月で、分離浮性卵を産む。受精卵の直径は0.6~0.7ミリメートルで、約20時間で孵化(ふか)する。抱卵数は2年魚で2万~3万粒、3年魚で3万~5万粒。

 食性は肉食性で、未成魚は端脚類(ヨコエビ)や多毛類(ゴカイ)を、成魚はエビ類や多毛類などを捕食する。遊泳層は、普通、海底から15センチメートル前後の範囲内で、潮の流れに逆らって泳ぐ習性が強い。

成長は遅く、1年で全長約10センチメートル、2年で約18センチメートル、3年で約21センチメートルとなり、極限全長は28センチメートルくらい。底流し網、ごち網、巻刺網、釣りなどで漁獲される。とくに釣りの対象魚として人気がある。[谷口順彦]』

(2020年1月)

(2024年3月)

上の写真の個体の頭部周辺を拡大。吻は長く、また口は小さく尖っている。この口で海底にいるゴカイ類や小動物をついばむように(すするように)食べる
『体色は背側は淡黄褐色で、腹側は銀白色を帯びる。背びれは12棘(きょく)、20~23軟条、側線鱗(そくせんりん)数は70個、脊椎(せきつい)骨数は35個』とのこと
体の後半部を拡大。シロギスは魚体のボリュームの割に泳ぐ力が強い。瞬発力のあるアスリートといった感じ
こちらは2016年9月中旬に日の出の海岸で釣った個体。全長約9cm。このような小型のものは「ピンギス」などと呼ばれる
2019年6月中旬に採集したメスのシロギス(全長約17.5cm)の胃の中から出てきた二枚貝の水管と思われる物体。目盛は0.5mm。
そしてこちらは同じ胃の中から出てきた「カイヤドリウミグモ」と思われるウミグモ類。目盛は0.5mm

採集する

(写真:2014年6月中旬に日の出の海岸で釣ったシロギスたち。大きなもので全長16cmほど。振り返ればこの日が浦安でのシロギスの過去最高釣果だったかも…。天ぷらして食べた)

タモ網で捕えたことは今のところない。三番瀬で地引き網なんかをするとたくさん捕れそうだが…。

個人が採集するなら釣りが第一候補だろう。釣り方は投げ釣りで、オモリと針が複数ついた仕掛けを遠くまで投げて、海底を”人が歩くようなスピード”でゆっくり引いてくる。場所によっては波打ち際でも釣れる魚だが、浦安で釣るなら50mは投げたいところ。

エサはゴカイ類のジャリメがよく使われるが、アオイソメの細いものでも可。アタリは明確で、シロギスがエサつつくとブルルッという感覚が手元まで伝わる。1匹が針に掛かったら、仕掛けをその場で止めておくと、2匹、3匹と連続で掛かることも。シロギスは小規模な群れで行動するとが多いように思う。

鮮度落ちが速い魚なので、食べる場合は釣り上げたらすぐに締めて、クーラーボックスに入れてしっかり冷やした方が良い(バケツに入れて放置すると身がグズグズに柔らかくなって不味くなる)。

余談だが、シロギス釣りのエキスパートたちは100g以上あるオモリと、針が10個も付いたような長い仕掛けを使って、それらを150m以上投げる。最早これはスポーツの領域である。

 

ちなみに私が浦安でシロギスを狙う際の道具を紹介すると

竿:長さ9ftで硬さがMLのシーバスロッド、リール:スピニングリール3000番、ライン:PE1号(距離で色分けされてるやつが使いやすい)、リーダー:フロロ3号を1m(適当)、オモリ:5~8号(最近はハヤブサの「立つ天秤スマッシュ」がお気に入り)、仕掛け:2~3本針のショートタイプのシロギス仕掛け(針は6号で「ギマ」なども掛かる可能性があるのでハリスは0.8号以上欲しい)、エサ:アオイソメの塩漬け

浦安は岸壁際にテトラポッドや敷石が入っており根掛かりしやすいので、浮き上がりの速いジェット天秤を使うのも手(ジェット天秤は遊動式なのでアタリがダイレクトに伝わるメリットもある)。

アタリが無ければ投げる場所をドンドン変えて広い範囲を探った方が良い。投げる際は他の釣り人や周囲に危険がないよう十分注意しよう(フルスイングした​6号オモリが頭に直撃したら最悪死ぬかもしれませんので)。

食べる

(写真:2020年6月中旬に釣れたシロギスを皮を炙った刺身(焼霜造り)にしてみた。想像以上に美味。しかも簡単に作れる)

クセがなく上品な甘味のする美味い魚。私はやっぱり天ぷらが一番美味しいと思う。天ぷらの他には、刺身や湯引きにして食べても良い。

 

(追記:2020年6月22日)2020年6月中旬に釣った15~18cmのシロギスを、皮を炙った刺身(焼霜造り)にして食べてみた。これが大正解で非常に美味かった。

作り方だが、まず釣ったシロギスを鮮度が落ないよう、しっかりと冷やしながら持ち帰る。持って帰ったシロギスはウロコと頭、内蔵を取り除き、水道水でよく洗う(魚体に付いた細菌類をしっかりと洗い流す。ただし洗いすぎると身が水っぽくなるので注意)。

そして水をよく拭き取ったら、三枚におろして(大名おろしが楽で簡単)、皮目を上にして適当な皿や網の上に並べ、ガスバーナーで焦げ目が付くかつかない程度炙る。そうしたらすぐに炙った身を冷凍庫に数十秒~数分入れて熱を取る(すぐに凍ってしまうので注意)。あとは適当に切って盛り付ければ完成。

以上の作業をする際は、魚やおろした身を保冷剤の上にその都度置きながら作業すると、身の鮮度を保つことができる(シロギスは鮮度が落ちるとすぐ身が白くグズグズになるので)。あと釣ってすぐ捌いたものと半日寝かしたものを食べ比べてみたのだが、半日寝かしたものの方が旨みが増していて美味しかった。