マゴチ

特徴

(写真:2019年7月下旬採集。全長約15cm。「シロギス」狙いの投げ釣りで偶然釣れた)

レア度:★★★★☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 コチ科 コチ属 学名:Platycephalus sp.2​ 英名:Bartail flathead よく見られる季節:初夏~初秋?

最大で80cmほどまで成長するが、それほど大きなものは非常に稀。60cmで十分大物だ。私は浦安では20cmぐらいまでの小型のものしか見たことがない。

上から押しつぶされたような平たい体型が特徴的で、頭と口は大きいが眼は小さい。よく見ると上アゴより下アゴの方が前に突き出ていて、頭上の獲物を捕らえやすい形態している。

体は黄褐色で、小さな白い点が体中に見られる。また胴~尾部には黒いシマ模様も見られるが、これらの模様は周りの環境に合わせて変化させることが可能。背びれと胸びれ、腹びれは薄い褐色の半透明で、それらには褐色の点が連なったスジのような模様が見られる。尾びれはウチワのような丸い形で黒い大きな斑点模様がある。

普段は砂に浅く潜っており、砂のような体色と平たい体型のため非常に見つけづらい。外敵が近づくとビュッと砂から飛び出し、数メートル移動して再び砂に潜る。その潜るスピードが凄まじく速い。砂浜の忍者といったところか。

ちなみに性転換する魚で、全長35cmぐらいまではオスで40cmを越えるとメスになるらしい。産卵期は4~7月頃だそうだ。

食性は肉食性で、砂に隠れながら近くを通った魚や甲殻類、イカなどを襲う。そのような習性と食味の良さから、「ヒラメ」と並んでサーフのルアーフィッシングの対象魚として人気が高い。

(2020年1月)

2019年9月下旬撮影。砂に隠れるマゴチ(画面中央)。どこに隠れているかわかるだろうか?
外敵が近づくと物凄い素早さで逃げ、そしてまた物凄い早さで砂に隠れる

採集する

(写真:2019年9月下旬撮影。全長約10cm。護岸すぐ下の石の上にいた)

砂に潜ったマゴチを見つけるのは非常に難しい。また警戒心も高く人間をなかなか近寄らせてくれない。そのためタモ網で狙って採集するのは難しいと思う。過去の捕獲実績は「シロギス」釣りの外道として釣れたのが2回(エサはアオイソメ)、適当に海底をタモ網で引きずったら捕れたのが1回だ。

狙って釣る場合は、ルアー釣りや生きた魚(「シロギス」「マハゼ」、アジ類、イワシ類など)をエサにした泳がせ釣りで狙うことが多い。またザリガニでよく釣れるという情報もある。

飼育する

(写真:2020年7月下旬撮影。自宅水槽1号にて。1か所に固まる3匹の「マゴチの幼魚」

以前、全長10cmほどの「マゴチ」の若魚を飼育したことがあり、この時はエサをほとんど食べずに衰弱死してしまった。そのため「マゴチは繊細な魚なんだ」というイメージがあったが、今回飼育した幼魚は全くの逆だった。

初めこそエサを食べなかったが、自宅水槽1号へ入れて5日後、冷凍のブラインシュリンプとフリーズドライのゴカイ類(ボンドベイト)を食べたのを皮切りに、その翌日には粒タイプの配合飼料(おとひめ)をバクバク食べるようになった。複数匹で飼育したのと、底砂を「田砂」にしたのが「マゴチの幼魚」に良い影響を与えたのかもしれない(他の種類の魚でも複数匹で飼育すると餌付き易いことがよくある)。

それからは毎日腹がパンパンに膨れあがるまで粒エサ食べるように。エサの食べ方も中々巧みで、水面からエサを落とすとエサが底に落ちる前にサッと泳いでエサを強奪していく。釣り人の間では「マゴチは捕食が下手」という通説があり、「ヒラメ40コチ20」(ヒラメやマゴチは捕食が下手でエサを飲み込むまでに時間がかかるから、エサに食いついてからヒラメは40秒、マゴチは20秒待てという意味)という言葉もあるほどだが、この幼魚の捕食を見てそのイメージが変わった。

視力が良いのかは分からないが、動いている獲物を補足する能力は相当高いのではないだろうか。ただ自分の目線より下にあるものは認識しづらいようで、水槽の底に落ちてしまったエサはほとんど食べてくれなかった。

また水質の悪化にもかなり強いようだ。粒エサにも十分餌付いたので、現在はマーレ水槽で飼育を行っている(2020年8月上旬)。

(追記:2022年2月16日)上に書いたマーレ水槽で飼育しているマゴチだが、現在も元気にやっている。飼育開始から約1年半が経った。90cm水槽という決して大きくない空間に、多種多様な生物が暮らしているマーレ水槽はまさに弱肉強食。そんな環境で1年以上も生存していることに、「よく頑張っているなぁ」というのが正直な感想だ。尾びれの上部を他魚(おそらく「カゴカキダイ」「カワハギ」)にかじられているが、弱った様子もなく、エサも積極的追う。

ただ他魚にエサを奪われ、エサを十分に食えていないせいか、痩せ気味で、マーレ水槽に来た頃からほとんど大きくなっていない(うむむ…申し訳ない)。あと「マゴチは寿命が3年ほど」という話もあり(本当かは知りません)、その点も心配である。

砂に隠れるのが非常に上手く、水槽を見に来た人の中でもその存在に気付けるのはごく一部。「ほらほら、ここに隠れてるんですよ」とマゴチを紹介するのが私の隠れた楽しみとなっている。

捕食行動

(写真:「マゴチの幼魚」(全長約10cm)の捕食行動を図にまとめてみた(雑))

まず環境は30cmキューブ水槽、水温26℃前後、比重1.023、水槽の底には褐色の田砂(粒径約1mm)を敷いてある。エサは直径約1.5mmの粒タイプで色は褐色の配合飼料(おとひめ EP2)。

「マゴチの幼魚」は眼の前方から後方60°(合計150°)ぐらいの範囲のものが見えているようだ。特に前斜め上方から落下してくるエサにはよく反応し、空腹時には水槽の半分ぐらいの高さまで泳いでエサに食らいつき、その後すぐに反転して元の場所に戻る。このように落ちてくるエサには食い損じがほとんどない。

エサが底に落ちて動きが止まると、エサを発見できないのか、それを拾って食うということはほとんどししない。そこで底に落ちたエサをスポイトの水流でほんの少し浮かしてやるとエサに気づき食べる。また自分の体のすぐ側(鼻先など)に落ちたエサは見えていないようだ。そのようなエサでもスポイトで目線より高く浮かしてやると食べる。

活性が低いもしくは空腹でないときは、じっとしてエサを追うことはほぼせず、スポイトでマゴチの鼻先にピンポイントで落としてやったエサだけその場で動かずに食べる。

食べる

(写真:過去に生きた「マアジ」をエサにして釣ったマゴチ。全長約60cm。マゴチは60cm以上で大物と呼べるようだ。ちなみにこれは他県で釣ったもの)

夏に旬を迎える白身の高級魚。夏に釣れるマゴチを「照りゴチ」と呼ぶこともある。私も数えるほどしか食べたことがないが、刺身、煮付け、天ぷらと何でも美味しかった。

個人的には鮮度の良いマゴチを薄く刺身にして食べるのがお気に入り。ほどよい歯ごたえと、旨みが口の中に広がる。ただマゴチは身に骨が複雑に食い込んでおり、慣れていないと捌くのが大変。