マコガレイ

特徴

(写真:2019年11月中旬採集。全長約35cm。青潮の影響により浅瀬でぐったりしていた個体をタモ網で捕獲した)

レア度:★★★★☆ 脊索動物門 条鰭綱 カレイ目 カレイ科 マガレイ属 学名:Pleuronectes yokohamae 英名:Marbled sole よく見られる季節:3~4月(幼魚)、11~4月(釣り)

50cmほどまで大きくなる。「カレイと言えばマコガレイ!」というほど代表的なカレイ。子持ちガレイの煮付けなどが代表的な料理で、食べたことのある人も多いと思う。網で大量に漁獲された野締め(のじめ。自然に死んだもの)のマコガレイは安価だが、活け締めされたものや生きたマコガレイは高級品だ。

釣りのターゲットとしても非常に人気で、年末~年明けの極寒期に竿を何本も並べてじっとしている釣り人を見かけたら、この魚を狙っていると思っていい。また東京湾奥ではマコガレイを専門で狙う釣り船も多数ある。ただ年配の釣り人と話すとみな口を揃えて「昔はたくさんカレイが釣れたのに、今は滅多に釣れなくなった」と言う。昔は釣りに来れば高い確立でマコガレイや「イシガレイ」が2~3匹は釣れたそうだ。どのくらい昔かはわからないが少なくとも、アクアラインが出来るよりもっと前らしい。ちなみに私も6年間で6匹釣っただけ。

マコガレイは浦安でよく見かける「イシガレイ」に比べ、全体的に丸みを帯びた形をしており、口も小さめで優しい目をしている。近縁種の「マガレイ」と非常によく似るが、マコガレイは眼と眼の間にウロコがあるのに対し、「マガレイ」は眼と眼の間にウロコがないことや、「マガレイ」は体の裏側の縁辺部が黄色くなることから見分けられるらしい(私は「マガレイ」を見たことないのではっきりとしたことは言えないのだが…)。

マコガレイは内湾に生息し、完全に砂地のような場所よりか少し泥っぽく、障害物が点在するような場所を好むそうだ。食性は肉食性で、ゴカイ類や小さな魚、二枚貝の水管、クモヒトデ類、小型の甲殻類など様々なものを食べるらしい。産卵期は晩秋~春で、北に行くほど遅くなる。

(2020年5月)

マコガレイの顔。眼と眼の間にウロコがある。優しい顔をしていると個人的には思う
マコガレイの顔(側面から)
2017年2月上旬採集。全長約35cm。記念すべき浦安で釣った初のマコガレイ。側線が丁度胸びれの上あたりで山なりに大きくカーブしているのもマコガレイの特徴

採集する

(写真:2019年3月下旬撮影。全長約5cm。腹がはち切れんばかりにエサを食べている)

浦安では2~4月頃に、「イシガレイの幼魚」に混じって「マコガレイの幼魚」も採集することができる(年によって「イシガレイ」の方が多く採れたり、逆にマコガレイの方が多く採れる年もある)。「イシガレイの幼魚」との見分けは側線(そくせん。体の真ん中に1本走る細い線)の形状を見るとわかりやすい。「イシガレイ」の側線は尾びれから頭にかけてゆるやかな右上がりになっているが、マコガレイの側線は胸びれの上あたりで大きく山なりにカーブする。

採集方法にだが、カレイ類の幼魚は人が近づくと、ぴゅーっと砂煙を上げながら数m移動しまた砂に隠れる。その砂煙を目印に、「この辺に隠れてそうだな」と狙いを定め、一気に砂ごとタモ網ですくうと捕れる。また底引き網漁の要領で、海底をタモ網で引きずりながら歩いていると、いつの間にか網に入っていることもある。岩や海藻、砂のくぼみなど地形に変化がある場所を狙うのもポイントだ。

大きなマコガレイを狙うにはやはり釣りだろう。針が2~3個ついた仕掛けとオモリを遠投して、カレイが食いつくのをじっと待つ「投げ釣り」で狙うのが主流。エサはアオイソメなどのゴカイ類を使うのが一般的。カレイ釣りも奥が深く、カレイ釣りが好きな人は針に様々な装飾をつけて目立たせたり、エサに魚粉や味の素で匂いを付けたりと色々な工夫をする。さらにその工夫が地域や場所によって異なり、未だに「これがカレイ釣りの正解!!」というものが無い。しかも、そこまでやってもボウズ(1匹も釣れないこと)で終わることも多々ある。「カレイはエサが目の前にあっても、タイミングが来ないと食わない」と言われており、仕掛けを投げたら数時間、下手したら早朝から日が暮れるまで待つこともある。しかも冬に。そこまでしても釣りたいのがマコガレイなのである。

飼育する

(写真:2020年4月中旬撮影。全長約4cm。2020年2月下旬に採集した「マコガレイの幼魚」を飼育した)

2020年2月下旬に採集した2.5cmほどの「マコガレイの幼魚」を現在自宅水槽で飼育している(2020年5月現在)。カレイ類は他に「イシガレイ」しか飼育したことないので、あまり比較はできないのだが、「イシガレイ」と比べると性格はやや大人しく慎重な気がする。また「マコガレイの幼魚」は他の生物を攻撃したりすることはほとんどない(大きくなるとわからないが)。

水の汚れにも中々強く、飼い易い魚だと思うが、水温の急激な変化と高水温に注意が必要(論文によればマコガレイ成魚は水温26℃あたりを超えると活動量が下がり始め、30℃を越すとほとんどが死亡するようだ)。また水槽にはカレイ類が隠れられるような細かい砂を、水槽の一部分だけにでも敷いてやった方がいい(水槽に入れたばかりの時は特に砂が必要だと思う)。

エサは何でも一応食べるが、個体によって食べる量も違えば、エサの好みも若干違う気がする。私が飼っている「マコガレイの幼魚」は配合飼料(おとひめ、メガバイトレッド、ネオプロスなど)はあまり気に入らないようで、数粒食べるだけで終了してしまう。健康に大きく育てたいなら、生エサも与えた方が良いと思う。生エサは冷凍ブラインシュリンプや生きたゴカイ類、ワレカラ類、ヨコエビ類、エビのゾエア幼生、イサザアミ類などを与えたが、ゴカイ類が嗜好性も食べる量もダントツだった。

カレイ類の幼魚は口が小さく、エサを飲み込むのも遅いので、エサは0.5~1mmぐらいの大きさに細かくしてやるといい(私はゴカイ類をカッターの刃で切ってミンチにして与えていた)。また捕食が下手な魚なので、カレイがエサをしっかりと認識できるようにピンセットなどを使って、カレイの斜め上前方にゆっくりとエサを落としてやると、カレイもエサを食べやすいようだ。

今まで飼育したマコガレイ、「イシガレイ」は、本来底の方にいる魚なのに、水槽の中を上下に泳ぐ行動をよくした。初めは「ストレスや個体差か?」と思ったが、その後しばらく飼育してみて、この行動のほとんど原因は空腹であることがわかった。なので、腹が膨れるまでしっかりエサを食わせてやると底の方へ行ってあまり動かなくなる。

(追記:2020年6月19日)夏に向かい気温・水温がするにつれ、自宅水槽(クーラーなし)で飼育している「マコガレイの幼魚」(全長約6cm)の行動も変化してきた。水温22℃までは活発にエサを追い、腹がパンパンになるまで食べるが、23℃になると餌への食いつきは良いものの、食べる量が22℃のときと比べて少なくなる。そして水温24℃以上が続くようになると、餌への食いつきがやや悪くなり、食べる量もかなり少なくなる(長さ3mmほどのゴカイの切れ端を2~3つで、エサへの興味を失う)。さらに25℃以上が続くようになると、ゴカイの切れ端を一口食べるのみで、時々息苦しそうな仕草をみせる。個体による差もあるかもしれないが、「マコガレイの幼魚」を健康的に飼うなら、水温は23℃以下を維持した方が良いかもしれない。なのでクーラーのない自宅水槽では、水槽のフタをメッシュにして、水槽の側面に保冷剤をあてて水温を下げることで対応している。

(追記:2020年6月24日)どうやら水温の上昇にも少し慣れてきたようで、25℃前後でもエサを活発に食べるようになってきた。ここ数週間、生エサ(ゴカイ)から配合飼料への餌付け作戦を行っていたのだが、なんと急に粒タイプの配合飼料を積極的に食べるようになった(今までは口に入れても吐き出していた)。粒タイプのエサへ移行する前段階として、フリーズドライのイソメ(ボンドベイト)を細かく切り刻み、それに粒タイプのエサの匂いをつけて与えていたのだが、それが良かったのかもしれない。これで三番瀬水槽へ引越しする準備は整った。生エサの準備も大変だし、水も汚れるしで、早いとこ引越しさせたかったのだが、いざ居なくなると思うと寂しいものである。

飼育する②

(写真:2021年3月下旬採集。全長約3㎝。「マコガレイの幼魚」たち)

2021年3月下旬に行われた「浦安市三番瀬環境観察館」の三番瀬生物調査にて、全長2~3㎝の「マコガレイの幼魚」を6匹ほど採集できたので、そのうち4匹を再び飼育してみることにした。

上に書いた通り、マコガレイは大人しく餌付きにくいというイメージがあったため、若干乗り気ではなかったが、「三番瀬水槽にまたカレイを入れてほしい」という声が多かったのでチャレンジすることに。本当は餌付きも良く人慣れしやすい「イシガレイ」にしたかったのだが、この年は何故か「マコガレイの幼魚」しか採れなかった。

「はぁ、また生きゴカイのミンチ作りか~」と思いつつも、とりあえず手始めに冷凍のブラインシュリンプを与えてみると、なんと採集した翌日に食べてくれた!! 動きも活発で、その様子から「もしかしてマコじゃなくて「イシガレイの幼魚」か?」と思ったが、側線の形状などを観察してみてもやっぱりマコガレイで間違いない。推測だが、複数匹での飼育、水槽の環境が昨年より向上していること(2年目なので)、それと個体差?などが重なって、良い結果を生み出したのかもしれない。ちなみにこの時の水温は約20℃、比重1.023、硝酸塩かなり高めのいつもの環境である。

さらに飼育を開始して1~2週間後には粒タイプの配合飼料(おとひめ)にも餌付き、「これはイケる!!水温が上がり過ぎる夏までに大きくして、三番瀬水槽へデビューできるかも」と期待は膨らんだ…あの事件が起きるまでは…。

2021年4月上旬に再び環境観察館の生物調査に同行させてもらい、その際全長10㎝ほどの「メイタガレイ」を採集することができた。この辺りで採れるのはとても珍しいので、「自宅で餌付けしてから三番瀬水槽へ持っていこう。サイズ差はあるけどおとなしそうな魚だし、(マコガレイと)一緒にしても大丈夫だろう」と自宅水槽で飼うことにした。しかしこれが失敗だった。

「メイタガレイ」を水槽へ入れた翌朝、水槽の様子がどうもおかしい。細かな砂が巻き上げられた跡がある。おそらく「メイタガレイ」が少し暴れたのだろう。マコガレイの様子が心配になり、水槽を探してみるが2匹しか見当たらない…。やってしまった…!!と思いつつ水槽の周りをよく探すと、水槽台の下に死んで干からびた2匹のマコガレイが…。しかもその2匹はエサも良く食べ、サイズも大きかった2匹だ。「メイタガレイ」に驚いて水槽から飛び出したのだろう。フタはきちんとしていたがわずかな隙間から飛び出したのか。無念…そして申し訳なさがあふれる。その2匹の亡骸はベランダの植木鉢の土に埋めることにした。

生き残った2匹のため、翌日には「メイタガレイ」市役所水槽へ持っていき、自宅水槽は平穏を取り戻した。そして今では、その2匹は私の姿が見えると水槽の壁に向かって勢いよく泳ぎ、エサをねだるようにまでなった。これから暑さの厳しい季節を迎えるが、上手く成長させて今年中には三番瀬水槽へデビューさせたい。

(追記:2021年5月28日)5月中旬、水温が23℃に到達するようになると、飼育していた2匹が爆食モードに突入した!! 今までも食欲は旺盛だったが、水温23℃付近での食いっぷりがすごいことに。ほぼ一日中、あげればあげるだけエサを食う感じだ。「だいぶ腹部も膨らんでるからもういいだろう」と思っても、しばらくすると再びエサをねだるように水中を泳ぎ出す。

「これはチャンス…」と、その間通常なら2日1回のところを、1日2回エサやりを行うことにした(早く大きくしたいので)。ウチの水槽は小さいので水の汚れに気を付けながらも、それを1~2週間ほど続けた結果、2匹の全長は1.5~2倍に。恐るべき成長力である。

今後夏になり、水温が上がり過ぎると活動が鈍くなるので、今のうちに大きくしておこうと思っていたのだが、水温が常に24℃以上になると、この爆食モードは治まってしまった。また行動にも変化があり、人影に敏感に反応してすぐ砂に隠れるように。水温が原因なのか、成長して知恵がついたのか(デリケートになったのか)…。

またこの時、諸事情により自宅水槽の生物を全て外に出さなくてはいけなくなったので、ちょっと心配が残るが、この2匹も三番瀬水槽へデビューさせることとなった。

2021年5月下旬撮影。全長約5㎝に成長したマコガレイの幼魚
マコガレイの幼魚(全長約5㎝)の裏側。まだ裏面は成魚のように白くなっておらず、スケスケだ

食べる

(写真:「イシガレイ」とマコガレイの煮付け。皮の色が薄く、ウロコの跡があるのがマコガレイの切り身だ)

煮付けで食べたこともある人も多いと思う。煮付けの他に唐揚げ、ムニエルなどもオススメ。

ただ生きたマコガレイが手に入ったらぜひ刺身で食べてもらいたい。鮮度の良いマコガレイはヒラメに勝るとも劣らぬ美味さだ。美味いマコガレイの刺身を味わうためには、まず活け締めと血抜きを行い、しっかりと保冷する。

そして持ち帰ったカレイはウロコをとって(とらなくてもいい)、頭と内蔵と取り除き、魚体全体と血合いをよく洗い流したら、水気をしっかりと拭き取る。そして魚まるまるの形のまま腹にペーパーを詰め、魚全体をペーパーで包んでからラップでピチッと巻いて冷蔵庫へ。

釣ってすぐは旨みが少なく、身もゴリゴリしておりあまり美味しくないので、ラップで包んだら半日~1日寝かせるといいと思う。ただ寝かしすぎると身が白濁し歯ごたえもなくなって不味くなるので加減が難しいところ。