ナミマガシワ
特徴
(写真:2022年6月中旬、浦安市内河川河口で採集。貝殻の幅約5cm。一枚貝のように見えるが、2枚の貝殻が合わさった二枚貝。波打ち際に漂着した貝殻や岸壁に付着したナミマガシワ?らしき貝はしばしば見るが、このように綺麗な状態のナミマガシワは浦安では稀だと思う。目盛りは1cm)
レア度:★★★★★? 軟体動物門 二枚貝綱 Pectinoida ナミマガシワ科 学名:Anomia chinensis 英名:? よく見られる季節:?
最大で貝殻の幅が5cmほどになる二枚貝。2022年6月中旬に浦安市内河川河口で、波打ち際に沈んでいたコンクリート製の平らな板(40cm四方ぐらい)をひっくり返したところ、その裏側にくっついていた。
死んで漂着した貝殻は三番瀬などでよく発見していたが、生きたものを見たのはこれが初めて。個人的にはかなりレア種である。しかし何故あんな場所に張り付いていたのだろうか?
貝殻の幅は5cm近くあるが、厚さは最も厚い部分で1cmもない。まるで煎餅のような平べったい形状だ。今回発見した個体は黒ずんだパールピンクカラーだったが、表側の貝殻(左殻)は白、黄、赤、褐色など色々とバリエーションがあるそうだ。また弱い真珠光沢も見られる。
表側の貝殻(左殻)の表面はでこぼこざらざらとしており、細かなシワや成長肋、放射肋のようなものも見られる。表側の貝殻(左殻)の内側は一面、まばゆいばかりの美しい真珠層が広がっている(下の写真参照)。これは漂着した貝殻では見ることのできない美しさだろう。
裏側の貝殻(右殻)は白色半透明で、非常に薄く扁平。殻頂より少し下に円形の穴が開いており、そこから足糸(そくし)を出して岩や護岸に付着する。裏側の貝殻(右殻)の本当にびっくりするぐらい薄くて脆い。「これ貝殻です」と言っても信じてもらえなさそうである。
さて、そろそろ自分の文章力で説明するのが厳しくなってきたので、下の写真と、以下の『日本大百科全書』より引用させていただいた『ナミマガシワ』の解説を読んで欲しい。
『軟体動物門 二枚貝綱 ナミマガシワガイ科の二枚貝。北海道以南、東南アジアまで広く分布し、潮間帯から水深5メートルぐらいの岩礁や他の貝の殻表に固着する。
殻形は付着する基質の型に左右されるため一定しないが、多くは丸みがあり、殻高30ミリ、殻長35ミリ、殻幅4ミリぐらいになり、大形のものは殻長50ミリに達する。
左殻が薄くてやや膨らみ、白、黄、赤、褐色などさまざまで、弱い真珠光沢があり、微細なしわもある。殻表にはしばしば付着している他種の形を写した肋(ろく)などができる。右殻は扁平(へんぺい)で甚だ薄く、石灰質の栓のような足糸の出る穴がある。
死殻が海浜に打ち上げられたようすをカシワの葉に見立てたのが和名の由来である。[奥谷喬司]』
(2022年9月)
採集する
(写真:平らなコンクリートの板(40cm四方ぐらい)をひっくり返してみたら、その裏側に美しいナミマガシワが付着していた。こんな場所で見つかるとは思わなかった)
貝殻は三番瀬などの波打ち際でよく見つかるが、生きているものは1度しか見つけたことがない(見落としているだけかもしれないが)。下の写真のように、それらしき貝はポツポツ見かけるような気がする。貝殻はは白、黄、赤、褐色とバリエーションに富んでいるらしいので、先入観を捨てて探してみる必要がありそうだ。
ナミマガシワは、岩や護岸に非常に強固に付着している+貝殻が薄く割れやすい(特に右殻は非常に薄い)ので、生きたまま採集するのがとても難しい。私もスクレーパーで慎重に剥がしてみたが、引き剥がす際に、右殻に開いた足糸(そくし)を出す丸い穴から、内臓の一部も引き抜いてしまい、そのまま絶命してしまった。
カッターの刃のような薄さかつ、曲がっても折れない柔軟性のある道具があるといいのかなぁ。
余談だが、生きたナミマガシワの貝殻(左殻)の裏面の光沢と美しさは、拾って採集できる貝殻のソレとは比較にならない素晴らしさ。