ユビナガスジエビ

特徴

(写真:2024年5月上旬に河口付近で採集。体長約4cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。写真のように浦安で見つかるユビナガスジエビは白色半透明のような体色をしているものが多い。目盛りは5mm)

レア度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 テナガエビ科 学名:Palaemon macrodactylus 英名:? よく見られる季節:初夏~初秋

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最大で体長が4~5cmほどになる。浦安沿岸で最もよく見られるエビの1つで(2024年現在)、特に三番瀬の岸近くや河口付近の、転石などの障害物が多い場所でよく目にする。特に初夏から初秋にかけては小~中型個体が多数出現し、海底に沈んでいる障害物や海藻をタモ網ですくえば、その中に隠れていた本種を簡単に捕まえることができる。

また浦安では春~初夏にかけては体長が4cmほどの抱卵した大型個体がよく見つかり、そして真夏になる頃には世代交代によるものか、体長1~2cmほどの小型個体をたくさん見かけるようになる。またユビナガスジエビは汽水域や河口、干潟など様々な環境でも見られる。

「ユビナガ」の名前の通りハサミ脚の指節が他のスジエビ類に比べるとやや長いが、これは他種と並べて比較しないと分からないレベルだと思う。

浦安で見かけるユビナガスジエビの基本的な体色は白色半透明で、背面や腹部が少し褐色に色づくものが多い。ただ中には全身が褐色っぽいものや灰色っぽいもの、さらには真っ黒の個体もいるた(下の写真参照)。このような体色は大型個体で見られることが多い。

また体表を拡大して見ると黒色~暗褐色の小さな点が一面にある。額角はほぼ水平で(私にはほんの少~しだけ山なりになっているように見える)先端部で上方に少し反る。そして額角の上縁には10~13歯、下縁には2~4歯、額角先端には1小歯があるとのこと。

 

「スジエビモドキ」によく似るが、①「スジエビモドキ」の腹部の背面に明瞭な縦スジ模様が入ること(下の写真参照)、②ユビナガスジエビに比べて「スジエビモドキ」の体表の小黒点の数はかなり少ないこと、③スジエビモドキの額角はユビナガスジエビのものと比べるとより直線的またはほんの少し上反り傾向、ユビナガスジエビの腹部背面の中心には薄い黄色い~土色の線が1本走るといった特徴から見分ける(これは小型個体だと少々分かりにくい)。なおこの分類方法は色々な情報をもとにした自己流であるので、100%正しいとは言えないので注意。

 

ユビナガスジエビは雑食性で、生物の死がい、微小な魚類、貝類、小型甲殻類、ゴカイ類、海藻(アオサ類を食べるのを見たことがある)など様々なものを食べる。また岩やカキ殻についた泥状のデトリタス?を非常に好んで食べていた。性格もこのあたりで見られるエビ類の中では獰猛で、弱った小魚を泳いで捕らえて食べることもある。

またユビナガスジエビは採集が容易なため、「クロダイ」「スズキ」釣りのエサに使われたり、他のスジエビ類と一緒に佃煮やかき揚げにして食べられることもあるそうな。

(2020年4月)

(2024年5月)

上の写真の個体の頭部周辺を拡大。目盛りは5mm
同個体の体の中間部を拡大。目盛りは5mm
同個体の体の後端部を拡大。目盛りは5mm
同個体の一番長いハサミ脚(第2胸脚)にピントを合わせてみる
同個体を真上から撮影。バルタン星人みたいだな。目盛りは5mm
こちらは抱卵した別個体を腹側から撮影してみた。体長約3.5cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)
こちらは観察のためエタノールで固定したユビナガスジエビ。体長約4cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。生きている時は白色半透明をしていたのだが、エタノールで固定した途端、写真のような褐色になってしまった。目盛りは1cm
ユビナガスジエビのハサミ脚(第2胸脚)を拡大。このハサミ脚の指節(ハサミの上側の刃の部分)が他のスジエビ類に比べるとやや長いが、これは他種と並べて比較しないと分からないレベルだと思う。自分もパッと見では分からない
ユビナガスジエビの頭部(頭胸甲)を拡大
ユビナガスジエビの腹部を拡大。腹部全体に小さな暗褐色の斑点が密に散らばっているのが分かる。また腹部には「スジエビモドキ」に見られるような明瞭な縦スジ模様は見られない
ユビナガスジエビの尾部。こちらにも暗褐色の小斑点が密に見られる
額角はほぼ水平で(私にはほんの少~しだけ山なりになっているように見える)先端部で上方に少し反る。そして額角の上縁には10~13歯、下縁には2~4歯、額角先端には1小歯があるとのこと

ユビナガスジエビの体色について(体験談)

(写真:2022年4月中旬、三番瀬で採集したねずみ色の体色をしたユビナガスジエビ。体長約4cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。おおこれはレアだ!!と思ったが…)

先に書いた通り、主に大型個体において、ユビナガスジエビの体色にはバリエーションが見られるようだ。過去確認したものだと、まず普通の白色半透明のもの、褐色っぽいもの、体全体が濃い褐色のもの、全身が真っ黒のもの、ねずみ色っぽいものなどなど。

そのような個体を見つける度に、「お!ラッキー」と捕獲し展示を行っていた。

 

2023年の夏だっただろうか…。三番瀬で体長3~4cmほどの大型個体で白色半透明、褐色の強い個体、黒色の個体を同時に採集する機会があった。それらを自宅に持ち帰り、別の場所に持っていくまでクーラーボックスに入れて保管。

そして翌日、クーラーボックスの蓋を開けると…何ということでしょう!! 全ての個体が白色半透明もしくはそれに近い体色に変化していたのだ。いや、正確に言うと、もともと白色半透明のものはもちろんそのまま。褐色の強い個体はほぼ白色半透明に。そして黒色の個体もかなり色が抜けて、薄い褐色になっていたのだ。ちなみにクーラーボックスの色は白色である。

これだけで断定することはできないのだが、この出来事から、今まで見てきた体色バリエーションは、殻に色素が沈着していたのではなく、ユビナガスジエビ自身が体色を変化させていた?ものだったようだ。

 

うーんなんというか、残念な気持ちである…(このニュアンス伝わるだろうか?)。​

それはそうと、ユビナガスジエビたちは何故こんなにもバリエーション豊かに体色を変化させているのだろう? ほとんど同じ場所(水深、底質も同じ)に暮らしているのにも関わらずだ。これについて誰か論文とか書いてないだろうか?

2020年6月下旬に河口付近で採集した個体。体長約4cm(角(額角)から尾の先端までの長さ)。体色が真っ黒で、所有欲をそそる個体だ。背中の中心に1本走る土色のラインがよく目立つ。このような体色は大型個体で見られることが多い
こちらは2022年3月下旬に三番瀬で採集した個体。体長約4cm(角(額角)から尾の先端までの長さ)。こちらは体全体が褐色っぽい。目盛りは5mm
こちらは2024年3月上旬に河口付近で採集した個体。体長約3cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。ダークブラウンに関節部の黄色と、まばらに見られる黒いスジ模様がオシャレな感じだ

採集する

(写真:こちらは2024年3月上旬に河口付近で採集したユビナガスジエビたち。体長約3~3.5cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。全て水中に沈んでいた漁網の中に隠れていた。この時期に採れるのは大型個体が多い)

浦安では早春~晩秋まで姿を見ることができ、特に初夏~初秋(5~9月ぐらいまで)に多い。真冬には人が歩いては入れるような浅場ではほとんど見なくなる。春~初夏には繁殖を控えた大型個体が多く、夏になるとその年生まれの小さな個体がメインとなるという感じだ。

色々な採集方法があると思うが、私が行うのはタモ網を使った方法。方法というほど大したものではないが、タモ網で垂直護岸やテトラポッド、砂上の岩の側面などを擦りあげると、おそらく高確率で採れるはずだ。

あと基本的には障害物に付いている生物なので、海底に沈んだ漁網や海藻、桟橋などを発見したらそれごと掬いあげるぐらいの気持ちでタモ網をふるうと良い。ちなみにタモ網は頑丈で先端が直線状(丸いやつじゃなくて)のものが使いやすい(これは他の生物を採集するときにも言える)。

あとは大きな岩がゴロゴロ沈んでいるような場所なら、タモ網を岩にくっつけて逃げ場を塞ぐようにしてから、足で岩の間に隠れたエビをタモ網の中に掻き込むようにするとよく採れる。

飼育する

(写真:2022年4月下旬に三番瀬で採集。体長約3.5cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。腹部に暗緑色の卵を抱えている)

見た目や動きの面白さから三番瀬水槽でも人気が高い。水の汚れや環境の変化に非常に強く、特別な世話をしなくてもエサの食べ残しや石に生えた藻類など、何でも食べて勝手に成長してくれるので、飼育は容易。とにかくありとあらゆるものを大量に食べてくれるので、水槽の掃除屋にも最適。

ただエビ類は魚類にとってはご馳走なので、エビ類を捕食できるようなサイズの魚が水槽内にいると、あっという間に食べられてしまう消えてしまう。なので一緒に飼う場合はエビを隔離ケースに入れたり、魚が侵入できない隠れ家を用意してやる必要がある。

ちなみに同居する生物によってスジエビたちの行動は大きく変化する。自分より強い捕食者のような生物が水槽にいる場合は物陰に隠れてあまり動かないが、そのような生物がいない場合は伸び伸びと水槽中を泳ぎ回る。そのギャップがちょっと笑える(彼らは必死なのだが)。

またスジエビ類は貪欲かつ獰猛なので、狭い空間にスジエビ類を入れ過ぎると、共食いなのか弱って死んだ個体が処理されたのかは定かではないが、数がどんどん減っていってしまう。長期飼育にはそれなりに広い空間と十分なエサが必要か。

そして時には弱った小魚やヨコエビなどの小型動物を泳いで捕まえて捕食したり、気の弱い魚(自分より大きな)のヒレをかじったりすることもあるので注意が必要。

弱ったヨコエビ類を捕食するユビナガスジエビ
2020年4月中旬撮影。飼育していたユビナガスジエビが、腹に抱えていた卵から生まれたばかりの「ユビナガスジエビのゾエア幼生」。体長約3mm。目盛りは0.5mm