スズキ
特徴
(写真:2022年10月上旬、日の出の海岸で採集。全長約60cm。オスのスズキ。釣りで採集。「ザ・魚」という姿をしていると思う。釣り人の間では全長60cmを超えないと「スズキ」と呼ばせてもらえない。スケールは巻き尺)
レア度:★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 スズキ科 学名:Lateolabrax japonicus 英名:Japanese seabass よく見られる季節:5~11月
最大で全長1mを超え、126cmの日本記録がある(2024年3月現在)。釣り人が大好きな魚その②(その①はこちら)。大きな口で魚やエビ、カニなどを捕食する典型的な肉食魚。そんな習性から、関東ではルアーフィッシングの対象魚として絶大な人気を誇り、今の釣り業界がもっているのはこの魚のお陰といっても過言ではないかもしれない。浦安を含む東京湾奥で大きなタモ網を背負って、釣竿を何度も振っている人を見たら、まずこの魚を狙ってると思ってくれていい。
実は東京湾は世界一スズキのいる海とも言われ、毎年東京湾全体で2000トン以上のスズキが水揚げされている。また我が千葉県はスズキの漁獲量日本一で、さらにお隣の船橋市ではブランド魚としても売り出されている。
成長によって呼び名が変わる出世魚で、関東では全長20~30cmぐらいまでを「セイゴ」、60cm未満を「フッコ」、60cm以上を「スズキ」と呼ぶ。またルアーフィッシングでは、スズキのことをサイズに関わらず「シーバス」と呼び、その中でも80cm以上のものを敬意を込めて「ランカー」と呼ぶ。諸説あるが「スズキ」サイズに成長するには6年ほどかかるようだ。
スズキの形態や生態については、以下の引用した解説文と写真を参照してほしい(すごく詳しく書いてあります)。
以下に、『日本大百科全書』の『スズキ』の解説を引用させていただく。
『硬骨魚綱 スズキ目 スズキ科 Lateolabracidaeに属する海水魚。科の分類についてはハタ科(Serranidae)、パーシクティス科(旧スズキ科。Percichthyidae)、スズキ科(Lateolabracidae)およびモロネ科(Moronidae)など諸説があり、まだ定説はないが、カナダの魚類学者ネルソンJoseph S. Nelson(1937―2011)らによるもっとも新しい分類体系(2016)に従っている。
日本海側では北海道から九州の北西岸や東シナ海、太平洋側では北海道から日向灘(ひゅうがなだ)、および朝鮮半島の南部と西南部などの沿岸域に分布する。
体は長く側扁(そくへん)する。吻(ふん)は長くてとがり、尾柄(びへい)はむしろ細長い。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁は鋸歯(きょし)状で、隅角(ぐうかく)部に1本の棘(きょく)と下縁に3本の強い前向棘がある。主鰓蓋骨に扁平(へんぺい)な2棘がある。口は大きく、下顎(かがく)は上顎より突出し、主上顎骨の後端は目の後縁下に達する。
背びれは棘部と軟条部の間で深くへこむ。背びれ軟条数は少なく、12~14本(まれに15本)。尾びれの後縁は深くへこむ。
体色は背側では青灰色で、腹側では銀白色である。普通は体に黒点や黒斑(こくはん)がない。若魚(全長25センチメートル以下)では背側や背びれに小黒点がある個体があるが、その直径は鱗(うろこ)と同大かそれ以下である。黒斑の数、大きさ、濃淡には個体差があるが、いずれも成魚になると消える。
雌は2~3歳魚で体長30センチメートルぐらいから、雄は1~2歳魚で体長約24センチメートルから成熟する。産卵期は10月~翌年3月で、地域によって多少の差があるが、冬に盛期がある。外海に面した水深50~80メートルの、急深で凸凹のある岩礁性の湾口部や沿岸部で産卵する。
卵は浮性卵。卵径は1.22~1.45ミリメートルで、1個の油球をもつ。水温14℃のとき4、5日で孵化(ふか)し、孵化仔魚(しぎょ)は全長4.5ミリメートル前後で浮遊生活をする。孵化後2か月で体長18ミリメートルほどに成長して藻場(もば)周辺にすみ、アミ類、ヨコエビ類などの小形甲殻類を食べる。
20ミリメートルぐらいの稚魚になるとアマモ場、河川域や湖内に移動し、エビ、カニ、ゴカイ、ハゼ類などの小魚を貪食(どんしょく)する。若魚~未成魚は内湾や河口域にすみ、おもにイカナゴ、アユ、カタクチイワシ、マアジなどの魚類が主食となる。
水温の低下につれて内湾から湾外の水深90~100メートルの深所へ移動して越冬する。地域によっては稚魚が河口域から河川や湖内へ入って生活するグループもいる。
1年で体長20センチメートル、2年で34センチメートル、3年で45センチメートル、4年で54センチメートル、5年で63センチメートル、6年で70センチメートルほどに成長し、最大全長は1メートルほどになる。
成育により呼び名が変わるので出世魚とよばれる。関東では成長順に25センチメートルぐらいの1歳魚をセイゴ、35センチメートルぐらいの2、3歳魚をフッコ、60センチメートル(4歳魚以上)のものをスズキとよぶ。同様に関西ではセイゴ、ハネ、スズキ、中部ではセイゴ、マダカ、スズキとよぶ。また、コッパ、ハクラ、セイゴ、フッコ、チュウハン、スズキとさらに細かく分けることもある。
地引網、定置網、刺網(さしあみ)、底引網、延縄(はえなわ)、一本釣りで漁獲される。ルアーフィッシングの好対象魚として人気があり、夜明けと夕方によく釣れる。夏は脂肪がのり、もっとも美味で高価である。塩焼き(セイゴ)、洗い、刺身、すしなどにするとおいしい。古代人もこの魚をよく食べていたことは、貝塚からこの種の骨が発見されることからもうかがえる。また、古くからめでたい魚として祝い事に供える地方がある。
いままで体側に鱗径(りんけい)よりも大きな黒斑があるスズキを釣り人がホシスズキとよんでいたが、それが別種にされてタイリクスズキの和名が与えられた。この種は中国大陸沿岸に生息している種と同種であることが判明したが、まだ学名が決まっていない。他方、スズキの近縁種にヒラスズキがあるが、この種は体高がやや高く、尾柄は太短い。腹びれが黒く、下顎の腹面に1列の鱗があることなどでスズキと区別される。また、この種はスズキと異なり川に入らない。[片山正夫・尼岡邦夫 2020年6月23日]』
(2020年1月)
(2024年3月)
採集する
(写真:2018年4月下旬、河口付近で採集。全長約3cm。スズキの幼魚と思われる魚)
比較的泳ぎが速く、警戒心も高い魚なのでタモ網での採集は難しいと思う。ただ春先に三番瀬や河口の浅瀬で群れている、全長1~3cmほどの「スズキの稚魚・幼魚」なら泳ぎもそんなに速くないのでタモ網での採集は容易。
もっと大きなスズキを捕まえたければ、やはり釣りだろう。よく釣れるシーズンは初夏と秋。スズキは基本的に生きたエサしか食べないようなので、アオイソメをエサにした釣りが初心者にはオススメ。生きた小魚やエビをエサにしても釣れる。
場所によって釣り方は変わるが、投げ釣り、ウキ釣り、ヘチ釣りあたりが浦安では釣りやすいだろう。朝マズメ、夕マズメに釣れる確率がグンと上がる。夜にも積極的にエサを獲る魚なので、夕マズメ~夜間にかけての釣りがおススメ。あとは潮が動いている時間に釣りをするのも非常に大事(満潮、干潮の前後は潮が止まるので避ける)。
もちろんルアーでも釣れるが(というかルアー釣りの方が大人気)、初心者が最初の1匹に出会うのにはなかなか苦労するかもしれない。多くの人が「シーバス釣り」を始めてみるも、一匹も釣れずに挫けてしまうこともしばしば。魚がいる季節、時間帯をちゃんと選べば、あっけないほど簡単に釣れる魚でもあるので、やみくもに釣るのではなく、そのあたりをしっかりを意識したい。
と、偉そうなことを言ってしまったが、私もルアー釣りは全然得意ではない。世の中には「シーバス釣り」のエキスパートがたくさんいるので、その方たちの解説を参考にして欲しい。
それと本当に釣るつもりならタモ網の準備を忘れずに。魚が掛かったはいいがタモ網を準備しておらず、結局魚に逃げられたりルアーを失う釣り人を何人も見てきた。
ちなみに浦安では投網を使用する熟練者も見たことがある。
食べる
(写真:浦安産スズキのレモンバターソース)
夏~晩秋までに捕れたスズキが肉付き、脂の乗りともに良く美味いと思う。クセのない白身で料理法を選ばない。
オススメ料理はアクアパッツァ、フライ、南蛮漬け、みりん干しなど。刺身もかなり美味いが、皮にぬめりや臭みが若干あるので、刺身にする際はそれらが身につかないように注意したい。また刺身は1日ほど寝かした方が旨みが増して美味しいと思う。
東京湾奥のスズキには賛否両論あるが、私は普通に美味い魚であると感じている。夏場に捕れる鮮度の良いスズキが高級魚なのも納得だ。ただしそれはきちんと活け締め、血抜き、そして捌く時は包丁とまな板を清潔に保つ等の適切な処理を行った場合である。
それを行わずに「東京湾奥のスズキは不味い」と判断するのはもったいないと思う。もちろん水質の悪い場所で捕れたスズキの中には臭くて食えないものもあるのは事実なのだが…。
それとスズキは食物連鎖の上位に位置する魚なので化学物質や放射性物質の蓄積という点も気になる。それについてはわからないことが多すぎるので私には言及できない(食べるときは自己責任でよろしくお願いします)。