マガキ

特徴

(写真:2019年1月中旬、三番瀬で撮影。約6cm(1つの貝殻の長さ)。このように浦安沿岸の潮間帯のコンクリート護岸や岩には無数のマガキが密集して付着している。貝殻の形状は付着する場所によって様々)

レア度:★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 軟体動物門 二枚貝綱 カキ目 イタボガキ科 学名:Crassostrea gigas 英名:Japanese oyster よく見られる季節:一年中

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最大で貝殻の長さが20cmほどにもなるらしい。食材として非常に馴染みのあるマガキだが、浦安沿岸にもたくさんのマガキが生息しており、海沿いや河川の汽水域に行けば必ず出会える貝の1つだ。

浦安では特に三番瀬や市内を流れる河川の河口など、淡水の影響を受けかつ栄養の豊富な場所に多く生息している。特に猫実川河口域の海底には凄まじい数のマガキが密集して生息しており、潮が引くとカキで出来た陸地が現れるほどだ。このように干潟で固まって浮かぶように生活している巨大なカキの塊を「カキ礁」と呼ぶ(猫実川河口のカキは干潟の表面に着生しているように見えるが、あれも浮いているのだろうか?)。

一見そうは見えないが、マガキも「アサリ」などと同じ二枚貝の仲間で、貝殻に左右がある。膨らみがあり内側が深くくぼんでいる方が左側の貝殻で、こちらの面で岩や護岸などに付着する。反対の蓋のような貝殻が右側となる。

貝殻の形状は付着する場所・基質によって様々で、平たいものから、厚みのある板状のもの、石ころのような形状のものや、貝殻縁辺が刃物のように鋭く立ったものなど本当に色々な形がある。

マガキは水中のプランクトンやデトリタスを水ごと吸い込んで、体内で濾し取って食べるが、その際に吸い込む海水の量は、マガキ1個あたり1日400Lにもなるそうだ。つまりマガキは非常に優秀な海水の濾過フィルターであり、浦安沿岸の水質浄化に大きく貢献していると考えられる。

またマガキの貝殻は実に多様な生物たちの棲家にもなっている。マガキの貝殻には凹凸や溝が多数あり、さらにそれらが密集することで小型動物たちの集合住宅になっているのだ。

今まで私がマガキの貝殻から発見した生物をざっと挙げると、カイメン類、イソギンチャク類、ヒラムシ類、ヒモムシ類、巻貝類、ゴカイ類、コケムシ類、フジツボ類、ヨコエビ類、ドロクダムシ類、タナイス類、イソコツブムシ類、ヤドカリ類、カニ類、ホヤ類………とにかくすごい数なのだ。

さらにマガキの貝殻からアオサ類やオゴノリ類、テングサ類などの海藻が生えているのも何百回も見てきた。

ただ一方で干潟においてはマガキが増えすぎると、もともと干潟の砂中に暮らしていた生物たちが酸欠状態になって死んでしまう、今まで干潟にいた生物たちが消えて、カキ殻に適した生物に置き換わってしまうという意見もある。

産卵期は6~8月頃のようで、地域によって若干異なる場合がある(8月頃になると水槽で飼育しているマガキが放精することが何度かあった)。

ちなみに「カキ」という名前については①岩からカキ(掻き)落としてとる、②殻をカキ(欠き)砕いて身をとる、③身をカキ(掻き)出して食べるなどの説がある。たしかにどの由来もそれらしいが、個人的には①の掻き落とすが一番しっくりくる気がする。

(2023年8月)

こちらは2022年1月に三番瀬で撮影したもの。垂直護岸に大量のマガキが付着している。貝殻の表面は毛状の紅藻類、緑藻類に覆われている
こちらも2022年1月に三番瀬で撮影したもの。護岸上に貝殻が鋭く切り立ったような形状マガキが大量に付着している。これを外国人が食用に採って持ち帰るのが浦安の定番風景となっている
2022年3月下旬採集。このようにマガキの貝殻からアオサ類が生えているのも非常によく目にする。このアオサ類が鳥類(カモ類)やその他底生動物のエサにもなっている
こちらは2022年10月中旬の三番瀬で、丸いブイに付着していたマガキを引きはがしたもの。貝殻の長さは10cm以上あっただろうか。丸いブイに付着していたので、貝殻がまるでカットされたバウムクーヘンのような形になっていた。貝殻表面にはイソギンチャク類と多数のフジツボ類、それと大量の毛のような生物(何だろう?)が一面付着していた
こちらは2022年6月に三番瀬で採集したマガキ。生きた状態で撮影。貝殻の長さ約8.5cm。「ザ・マガキ」という形状のものを選んで採ってきた。こういう形をしたものは浦安ではあまり見ない。目盛りは5mm
下側(左側)の貝殻を撮影。目盛りは1cm
サイドから撮影。目盛りは5mm
反対サイドから撮影。養殖マガキのような立派なフォルムである。目盛りは5mm
正面から撮影。目盛りは5mm
背面から撮影。目盛りは5mm
採集してから自宅水槽にしばらく入れていたため身は痩せてしまっているが、立派な「カキの身」だ。香りも良い
身を取り除いた後の貝殻(右側)。貝柱(閉殻筋)があった場所には黒い同心円状のシマ模様が見られる。目盛りは5mm
身を取り除いた後の貝殻(左側)。貝柱(閉殻筋)があった場所には黒い同心円状のシマ模様が見られる。目盛りは5mm

採集する

(写真:貝殻を少しだけ開いて呼吸をするマガキ)

たくさん採集したい場合は、河口や河川内などマガキの密度の高い場所に行くと良い。

護岸や岩についているマガキは素手では取りづらいので、ノミや幅の広いマイナスドライバーなどを使って引きはがすと簡単に取れる。マガキの貝殻の端は非常に鋭いので、採集時は軍手やグローブをすることをオススメする。

あと、先に述べたようマガキの貝殻には多種多様な生物暮らしているので、そのような生物が不要な場合は逃がしてあげてほしい。

 

(追記:2021年6月15日)2019年頃から、東京湾奥で外国人が大量のマガキを採り、その場で中身だけ取り出して残った貝殻をその場に捨てていく行為が問題化している。海中に捨てるならまだマシだが、護岸上や遊歩道など人が通る場所に捨てていくケースもあるのでタチが悪い。先に言った通り、マガキの貝殻は非常に鋭く、もし素足で踏んだりすれば大ケガに繋がる。実際に子供がケガをしたというニュースもテレビでやっていた。

「アサリ」「ホンビノスガイ」「マテガイ」「ムラサキイガイ」「イシガニ」そして今度はマガキ…彼らはターゲットにした生物を根こそぎ獲っていってしまう。「考え方が違うから仕方ない」、「文化が違うから仕方ない」…もうそう言って許せる段階はとうに過ぎているのではないのだろうか。

 

(追記:2023年8月22日)現在浦安沿岸では、外国人がマガキを採っていく光景は当たり前のこととなっている。自分もそれを見過ぎて慣れてしまった。採るのは別にいいけど、周辺施設(水道・トイレ)を汚して帰るな、カキ殻放置すんな、事故ったりケガしても騒ぐな(自己責任貫け)って感じである。憎まれっ子世に憚るじゃないけど、これでいいのか?浦安三番瀬??

飼育する

(写真:三番瀬水槽に入れたマガキ)

マガキ自体は環境の変化に強い生物なので、飼育は難しくない。水槽に入れてそのままにしておいても2~3ヶ月ほどは生きているが、三番瀬水槽のように水中にエサとなるプランクトンなどが少ない環境だと長期飼育は難しい(いずれ痩せて死んでしまう)。

長期飼育したい場合は、エサとなるプランクトンや有機懸濁物を定期的に水槽に入れてやる必要があると思う。

マガキは非常に優秀なろ過能力を持った生物なので、水槽にマガキを入れておくと水をキレイにしてくれる(ただマガキ自体が死ぬと一気に水質が悪化するので注意)。私はこれを利用して、イベントなどで一時的に水槽を設置する場合、ろ過フィルター代わりにマガキを入れることをよくする。

あと「イボニシ」「アカニシ」などの貝食性の巻貝が少しでもいると、あっという間に食べられて全滅してしまうので注意が必要(しかも殻を閉じたままいつの間にか殺られているのでタチが悪い)。

 

(追記:2021年6月15日)自宅水槽で2021年1月下旬から6月初旬まで約5か月飼育することができた。エサは時々、水槽の水をかき混ぜわざと濁らせてそのを吸わせたり、水替え&掃除のときの排水をバケツに溜め、そこにマガキを入れて水をかき混ぜ濁らせるという方法でやってみた。満腹にはなっていないだろうが、生存させるだけならこれで何とかいけるようだ。ちなみにそのマガキは今でもマーレ水槽で元気に?やっている。

2019年7月上旬撮影。飼育していたマガキが放精した(白い煙のようなものが精子)。7月は丁度繁殖シーズンにあたる

2020年5月上旬撮影。自宅でマガキを飼育していたら、糞をするシーンを撮ることができた。ヒモ状または棒状の糞を、貝殻の隙間から排出する(写真中央上に映る、茶色く細長いものが糞)。そしてこの糞をヤドカリやエビが食べていた。

食べる

私はまだ浦安のマガキを食べたことがない。美味そうではあるが勇気が出ない(以前カキを食べ過ぎて救急車で運ばれ入院したことがある…)。

浦安のマガキは小粒だが、身詰まりが良く(特に冬季)、磯の香りも強くて食欲をそそる。ときどき外国人の方々が買い物かご何杯分もの大量のマガキを漁獲していくことがあるが(しかも温かい時期に)、あれだけのカキを一体どうやって処理するのだろうか。…というかお腹を壊さないのだろうか。非常に気になる。

2020年の早春に、河口付近でマガキを採っている香港出身の人と話したことがあった。むき身を茹でて食べるらしい。「1日5個ぐらいなら毎日食べても大丈夫!美味しいよ!」と言っていた。

また以前、市役所水槽「マダコ」を飼っていた時にエサとしてマガキを採集していた。味が良いのか「マダコ」は喜んで?ガツガツと食っていた。