テナガツノヤドカリ
特徴
(写真:2022年8月中旬、三番瀬で採集。貝殻の直径約2.5cm。左のハサミの方が大きいのと、羽根状をした第2触覚が特徴。この個体は「ツメタガイ」の貝殻を利用している)
レア度:★★★★☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 ヤドカリ科 学名:Diogenes nitidimanus 英名:? よく見られる季節:4~10月?
大きいもので貝殻を入れて500円硬貨ぐらいの大きさになる。浦安でよく見られる「ユビナガホンヤドカリ」は右のハサミが大きいのに対し、本種は左のハサミが大きい。
テナガツノヤドカリは羽根状の触角を持ち、これを振り回して水中に浮遊するエサを集めて食べる。また「ユビナガホンヤドカリ」と同様に生物の死骸や砂中のデトリタスも食べるそうだ。
過去の私はずっと「三番瀬の浦安側に生息する小型のヤドカリは、全てユビナガホンヤドカリ」思い込んでいた。しかし2018年ぐらいから「左のハサミが大きいヤドカリがいる」という話をチラホラ聞くようになり、それから三番瀬で見かけるヤドカリを注意深く観察していたところ、2019年8月上旬にとうとうこのテナガツノヤドカリを発見した。
このテナガツノヤドカリは「イボキサゴ」という巻貝を好んで宿として利用するらしい。「イボキサゴ」は長らく三番瀬では絶滅したと思われていたのだが、2019年に三番瀬での「イボキサゴ」の生息が正式に再確認されたのだ。おそらく「イボキサゴ」の増加に合わせてテナガツノヤドカリの個体数も増えたのではと推測している。
繁殖期は春から秋までと長いとのこと。
(追記:2022年9月19日)このページを作成した2019年はたしかに生きた「イボキサゴ」を頻繁に目撃したのだが、その年以降はめっきり姿をみなくなってしまった。2022年現在では4~5人で採集に出て、1個体見つかればラッキーというほどレアになってしまっている。
ただテナガツノヤドカリの方はそんなことはなく、数は多くないものの、初夏~秋にかけて採集に出るとポツポツと見つかる感じ。「イボキサゴ」の貝殻ではなく、「イボニシ」や小型の「アカニシ」、「ツメタガイ」の貝殻を利用した個体も見かける。
(2020年4月)
(2023年11月)
採集する
(写真:2019年8月、三番瀬で撮影。「イボキサゴ」の貝殻に入ったテナガツノヤドカリ)
採集は単純で、見つけたら拾うだけ。個体数は膨大にいる「ユビナガホンヤドカリ」に比べるとかなり少ない。
「イボキサゴ」の貝殻に入っていることが多いそうので(他の貝殻にも入っているが)、「イボキサゴ」の貝殻を重点的に拾うと良いかもしれない。
護岸上や波打ち際よりも、少し沖の砂の上で発見することが多く、また単独で見つかることが多い(三番瀬浦安側では)。
飼育する
(写真:2020年4月下旬に採集した個体。約2cm(貝殻の大きさ)。この個体はハサミが太くゴツイ。オスだろうか?)
大きめのテナガツノヤドカリ(写真)が採集できたので、自宅水槽で飼ってみることにした。
この個体だけなのかもしれないが、あまり動かずじっとしていることが多い。落ち着いているという感じだ。エサを与えても「我先に!」とエサへ突進する「ユビナガホンヤドカリ」と違い、動きは静か。動きは静かだが警戒心はそれなりにあり、ピンセットなどを近づけるとサッと貝殻の中に隠れてしまう。
エサは配合飼料や冷凍ブラインシュリンプ、クリル(乾燥エビ)などを与えてみたが、そのようなエサはあまりお気に召さない様子でほとんど食べてくれなかった。ときどき水中のエサを集めるためか、羽根状の第2触角を振り回していた。長期飼育にはプランクトン的なエサを与えてやる必要があるのかもしれない。
また写真の個体は自身のハサミが大き過ぎて前に移動しにくいのか、後ろ向きで移動することがほとんどだった。
それと貝殻の引越しは頻繁に行うようで、1日の間に同じ2つの貝殻を行ったり来たりするということもあった。