イボキサゴ

特徴

(写真:2019年5月中旬、三番瀬で採集。貝殻の直径約2cm。生きた状態で撮影。貝殻の藍色と緻密な模様が美しい。このタイプの色彩の他にも、様々な色、模様のイボキサゴが存在する。目盛りは0.5mm)

レア度:★★★★★ 軟体動物門 腹足綱 古腹足上目 ニシキウズ/ニシキウズガイ科 学名:Umbonium moniliferum 英名:? よく見られる季節:?

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最大で貝殻の直径が2.5cmほどになる。三番瀬では長らくイボキサゴは絶滅したものと考えられていたが、2019年に本種の繁殖・生息が再確認された(半世紀ぶりらしい)。

が、私個人の記録からすると、三番瀬浦安側では2019年と2020年こそ、1回の生物採集で数個体~10個体ほどのイボキサゴを発見していたが、その2021年以降はほとんど見つからないという状態が続いている(複数人で生物採集をして、1回に1個体見つかればかなりラッキーという感じ)。

もちろんイボキサゴに焦点を絞って採集を行えば結果は違ったかもしれないが、現状(2023年)浦安三番瀬側ではイボキサゴはかなり少ないという印象。やっぱり安定的な定着は難しいんだな~。

イボキサゴ「潮間帯(潮の満ち引きによって水没と露出を繰り返す場所)」~水深10m程度の海底や、干潟の砂泥底に生息する巻貝で、貝殻の表面には細い渦状の溝が多数あり、その溝と溝の間に小さなコブ状の隆起(イボ)が規則的に並んでいる。ただしイボのない個体も多いそうなので、これが本種を同定する決定打にはならないようだ。

貝殻の裏側には臍盤(さいばん)と呼ばれる、白くつるっとした面が広がっており、この臍盤の面積が、貝殻の直径の半分以上になるのがイボキサゴの特徴。よく似た巻貝である「キサゴ」の臍盤の面積は貝殻の直径の半分より狭いため、両者を見分けるポイントとなる。また「キサゴ」は外洋に面した砂浜に生息するという違いもある。ちなみに東京湾でのイボキサゴの産卵期は秋頃と考えられている。

貝殻は色彩の変化が実に多種多様で、灰白色のベースに紺色や赤色、茶色の斑模様、全体が黄色っぽいものや、中にはトラ柄のようなものなど様々なタイプがあり、どれもとても美しい(下の写真参照)。このような特徴から「おはじき」の起源になったといわれている。

またイボキサゴの貝殻を「テナガツノヤドカリ」が宿として利用している姿をときどき見かける。

ちなみにイボキサゴは味の良い貝としても知られ、茹でたり煮たりすると美味しいそうだが、身が小さく食べづらいため市場価値は低い。古くは縄文時代から食べられていたそうだ。

(2023年8月)

イボキサゴの裏側。臍盤(さいばん。白くつるっといている部分)の面積が、貝殻の直径の半分より大きいのが本種の特徴。目盛りは5mm

移動するイボキサゴ。柄のある長い眼が2つある。また体の左右からは4対の触手?(上足突起というらしい)が伸びている。目盛りは5mm

顔を拡大。眼と眼と間には2本の触角がある。また先端に毛(触毛)が生えた入水管が見える(写真中央)。入水管の左にもう1つ入水管のような形状のものがあるが、こちらの先端には毛が生えていない…これは何だ??
体(足)は肌色の上から暗い灰色を重ねたような色をしている。また左右4対の上足突起は貝殻と体の間あたりから生えているようだ

こちらは2022年7月上旬に三番瀬で採集した個体。貝殻の直径約1.5cm。生きた状態で撮影。目盛りは5mm

貝殻の裏面を撮影。臍盤の面積が、貝殻の直径の半分より大きい。この個体の臍盤はくすんだピンク色をしていた。。目盛りは1cm
殻口方向から撮影。貝殻の直径が1.5cmに対し、貝殻の高さは1cmほど。イボキサゴの貝殻の表面には細い渦状の溝が多数あり、その溝と溝の間に小さなコブ状の隆起(イボ)が規則的に並んでいるそうだが、この個体には明瞭なイボは見られない。このようにイボが見られない個体も多いそうだ。目盛りは1cm
反対側から撮影。イボキサゴの貝殻は表面が乾燥すると、色が白っぽくなってしまうことが多い。しかし白っぽくならずに鮮やかな色彩を残すものもいる。この違いは何なのだろう? 目盛りは1cm
殻口と蓋を拡大
取り外した蓋を見てみる。この個体の蓋はやや歪な円形で半透明のレモン色をしていた。また蓋には渦状の筋がある。目盛りは1cm
移動している様子を撮影
うーん、何とも変な顔をしているなぁと思う。口はどこにあるんだ?

採集する

(写真:三番瀬浦安側で採集したイボキサゴの貝殻たち。残念ながらこのうちのほとんどは貝殻(死貝)を拾ったもの。本当に様々な色彩をしている。おはじきの起源になったというのも頷ける)

狙ってたくさん採集したことはないが、潮がよく引いた三番瀬で少し沖の方を歩いているとポツポツ見かける。

だがよく目にする年もあればほとんど見ない年もあり、まだ三番瀬(浦安側)での生息は安定的ではないのかもしれない。砂の中をしっかり探せばもっと見つけられるのだろうか?

 

(追記:2022年4月24日)2022年4月現在、生きたイボキサゴを三番瀬の浦安側で見ることがほぼなくなってしまった。2020年ぐらいからほとんど見ないなぁ(貝殻はあるんだけど)。

 

(追記:2023年8月29日)最近はほとんど見つからない。私個人の記録では、三番瀬浦安側では2019年と2020年こそ、1回の生物採集で数個体~10個体ほどのイボキサゴを発見していたが、その2021年以降はほとんど見つからないという状態が続いている(複数人で生物採集をして、1回に1個体見つかればかなりラッキーという感じ)。

もちろんイボキサゴに焦点を絞って採集を行えば結果は違ったかもしれないが、現状(2023年)浦安三番瀬側ではイボキサゴはかなり少ないという印象。やっぱり安定的な定着は難しいんだな~。

このイボキサゴの貝殻は暗いゴールドに黒い模様が入っている。ちょっとシックな雰囲気
こちらの貝殻は暗い紅色に白点が入っており、女性ものの着物のデザインなんかにしたら合いそうだ。どうやら中身にはヤドカリが入っている模様

飼育する

(写真:虫かごに三番瀬産の細かい砂を敷き、その中で隔離飼育中のイボキサゴ。これでも十分飼育可能だった)

三番瀬水槽では過去に1度飼育したことがある。

混泳生物に弱い、または狭い水槽内ではエサをちゃんと食えないのでは(他の生物に先にエサを取られてしまう)という懸念があったため、穴を開けて加工した虫かごに細かい砂を1.5cmほど敷いてその中で隔離飼育することに。

ちなみに水温21℃、比重1.023、硝酸塩濃度超高めの環境である。

ときどき指で細かく砕いたフレークをエサとして与えたところ、どうやらそれを食べてくれていたようで、その後1~2ヶ月間生存した。ただイボキサゴはすぐに砂に潜ってしまうので展示のしがいがない(汗)。

しばらくした後、「もういいか…」と思い、虫かごから出すことにした。案の定すぐに砂に潜ってしまいその後は行方知れず。あのまま虫かごで飼い続けていたら、もっと長い期間飼えそうな感触だった。

こちらは2022年7月中旬、自宅水槽5号にて。砂にちょっと潜ったイボキサゴ。あまり砂に深くは潜らない感じ。この後貝殻標本作成のため茹でました(ごめんね)