カワハギ

特徴

(写真:2020年8月上旬採集。全長約6cm。まだ幼魚サイズのカワハギ)

レア度:★★★★★ 脊索動物門 条鰭綱 フグ目 カワハギ科 カワハギ属 学名:Stephanolepis cirrhifer 英名:Threadsail filefish よく見られる季節:?

最大で30cmほどになるが、日本では44.3cmという記録もある(これが全長なのか、そして真実なのかは調べきらなかった)。美味しい食卓魚として知名度が高く、このあたりのスーパーでもときどき並んでいるのを見かけるが、浦安で岸から生きたカワハギを見ることは非常に稀。レア度はかなり高めである。

私も5年間浦安で採集を行って、捕獲できたのは今回(2020年8月上旬)が初で、河口で適当に網を引いていたら偶然捕れた。ただ東京湾奥ではカワハギを狙った釣り船も多いので、沖の方にはそこそこいるのかもしれない。

体はひし形で平たく、体色は褐色のものが多いが、灰色っぽいものもいる。興奮したりすると体に黒いまだら模様が現れることもある。体の表面は厚く硬い皮に覆われており、触るとヤスリのようにザラザラしている。カワハギを料理する時、この皮をはぐことから「皮はぎ」の名前が付いたそうだ。

背びれの第1条と腹びれが太く短いトゲ状になっており、特に背びれの第1条は先端が鋭く、ノコギリの刃ようなギザギザまである。また成熟したオスは背びれの第2軟条が糸状に細く伸び、それがオスメスを見分ける特徴となる(そのため未成熟な個体だと外見からオスメスを見分けるのは難しい)。

食性は肉食寄りの雑食性で、小型の甲殻類、ゴカイ類、貝類、クラゲ類、紅藻類など様々なものを食べる。砂中に隠れているエサ生物を捕食するために、口から砂地に水を勢いよく吹きかけるという行動もする(かしこい魚だ)。また硬い歯を持ち、噛まれるとけっこう痛い。産卵期は5~8月頃。

(2020年8月)

背びれの第1条と太く短いトゲ状になっており、その先端は鋭く、ノコギリの刃ようなギザギザまである。また硬く丈夫な歯を持ち、噛まれるとけっこう痛い
背びれと尻びれを(あと胸びれも)カーテンのようにヒラヒラさせて、ヘリコプターのように上下左右にゆっくり移動することができる

採集する

(写真:2020年8月上旬採集。全長約6cm。採集したばかりのカワハギ。興奮のためか、体全体に黒いまだら模様が現れている)

私の知る限りでは、浦安の陸から人が近づける場所では滅多に見ない。今回も本当にたまたま採集できただけだ。もしかしたら釣りで釣っている人もいるのかもしれないが、そういう話は今のところ聞いたことがない。そのため浦安でカワハギを採集できるかは完全に運だと思う。

なのでカワハギを採集したいなら、カワハギが産卵期に入り浅場に移動する5~8月に頻繁に海に通って探すしかない。障害物や海藻などに寄り添い隠れる習性があるので、そういう場所を見つけたらしらみつぶしに網ですくっていこう。

あとは高洲や日の出の海岸で、カワハギ用の針を使って根気よく投げ釣りをしてればいつか釣れるかもしれない…?。

飼育する

まだ2週間ほどしか飼っていないが、その中で発見したことを記録しておく(2020年8月8日)。

まず飼育環境だが、水槽は30cmキューブ、水温25℃前後、比重1.023、硝酸塩高めの自宅水槽でも、今のところ調子を崩すことなく飼育できている。ただ水槽に入れてしばらくすると、尾ぐされ病のように、背びれと尻びれの縁が白くボロボロになってしまったので、水換えをしたところ回復した。もしかすると水質の悪化にはあまり強くないのかもしれない。

個体差もあると思うが、全長6cmほどの個体の餌付きは非常に良く、水槽に入れた翌日には生アサリのミンチを、3日目にはクリル、5日目には粒タイプの配合飼料(おとひめ EP2)を口に入れたり吐き出したりするようになり、今はその粒タイプの配合飼料をモグモグと食べている(ある論文でカワハギの成長における最適水温は20~25℃という記述があった)

これも個体差があると思うのだが、基本的には気が強く、大きなカワハギが小さなカワハギを追い掛け回したり、カワハギが小さなエビやカニをつつくといった行動をよくする。なので狭く隠れ家の少ない水槽にカワハギを複数匹入れるのは良くないのかもしれない。事実、私が採集した2匹のカワハギのうち小さい方は、大きい方のカワハギに追い掛け回され、その後隔離したがストレス等で拒食になり衰弱死してしまった(本当に申し訳ない…)。

また硬いニッパーのような歯を持った魚なので、混泳させる魚によってはひれをかじられるといったトラブルが発生するかもしれない。

食べる

(写真:学生時代に海に潜って銛で突いたカワハギ(既に皮がむかれている)。他の魚は「マハタ」と「クロメバル」だったかな?)

ハッキリ言って滅茶苦茶美味い。みんな一生懸命釣るワケだ。1年中美味い魚だが、旬は夏季らしい。肝が大きくなるのは秋~冬で、こちらを旬と考える人もいる。

どんな料理にしても美味いらしいが、一番のオススメは刺身(というか私は他の料理をあまり知らない)。美しい白身で、しっかりとした歯ごたえと、強い甘みと旨みがあり、ポン酢に薬味を添えて食べても美味しい。もちろん肝醤油も外せない。

何故だか分からないが、カワハギは活け造りのような超新鮮な刺身でも味がちゃんとある。というのも、死んですぐの白身魚は旨み成分が十分生成されていないため味が薄く、あまり美味しくないものも多いのだ。昔、地方で暮らしていた時には、月に1回ぐらい行きつけの居酒屋で生簀に入っているカワハギを刺身にしてもらっていた。あんな美味いカワハギはもう何年も食べてない…。

余談だが、私は学生時代から海に潜って銛で魚を突くのが趣味で、カワハギもよく突いて食べていた。その時のカワハギの通称が「的(まと)」。つまり、動きが遅く、魚体が平たいので銛で狙い易く、突くのが簡単という意味だ。何とも失礼な呼び名である。簡単にたくさん獲れるので、常に金欠の学生にとっては良い食材であった。漁獲したカワハギ達は、皮をはぎ内蔵を取り除き(もちろん肝は別に取っておく)、そのまま野菜などと一緒に豪快に鍋にブチ込む。これでカワハギ鍋の完成。当時は意識していなかったが、振り返れば贅沢なものを食べていたなぁと思う。