アゴハゼ

特徴

(写真:2022年5月上旬、河口付近で採集。全長約6.5cm。アゴハゼは成長段階やその時の興奮状態などにより体色や模様が変化するので注意が必要。またアゴハゼの未成魚は「ドロメ」の未成魚にとてもよく似るので、これも注意が必要。といっても浦安で見つかるのはアゴハゼばかりだけど。目盛りは5mm)

レア度:★☆☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 ハゼ科 学名:Chaenogobius annularis 英名:Forktongue goby よく見られる季節:5~10月

最大で全長が8cmほどになる。口が大きいから「顎ハゼ」なのだろうか? 浦安の水辺で最もよく目にする魚の1つだと思う。護岸上にできた潮だまりや転石帯など、岸近く浅い場所でたくさん見ることができる。

また春になるとアゴハゼの稚魚(「ドロメ」など別種も混じっているかもしれない)と思われる、1~2cmほどの魚の群れが水面付近をのんびり泳いでいるのをよく目にする(アゴハゼは稚仔魚の時期は水面直下~水中を泳いでいるが、成長すると海底付近で暮らすようにる)

アゴハゼは「ドロメ」という魚によく似ており、特に稚魚~幼魚だと見分けるのがなかな苦労する(結局結論が出せないことも多い)。成魚での比較だと「ドロメ」の頭部はアゴハゼより潰れた感じで、また最大サイズは「ドロメ」の方が大きくなる。

またアゴハゼの胸びれと尾びれには明瞭な黒い点列が見られ(「ドロメ」にはない)、さらにアゴハゼの尾びれの後縁白いフチ取りがない(ドロメにはある)という特徴から見分けることができる。あとアゴハゼの胸びれでは上方の軟条が遊離しているという特徴もある

アゴハゼ成魚は岩の上や隙間、石の下、海底などでじっとしてしていることが多く、三番瀬の護岸上にできた潮だまりの中にある石をひっくり返すとそこからよく見つかる。環境の変化に非常に強い魚で、夏場のかなり温度の上がった、水深わずか数cmの水溜まりの中でも平気な顔をしている。

食性は肉食寄りの雑食で、小魚や小型の甲殻類など様々なものを捕食する。性格はおとなしいが食欲は旺盛で、自分の体の半分以上あろうかという獲物も丸呑みにすることもある。繁殖期は1~4月くらいだが、関東では3~6月という説もある。

ハゼ釣りの外道として「ダボハゼ」と呼ばれることもある魚の1つ。

(2020年1月)

(2024年1月)

上の写真と同個体の頭部を拡大。胸びれにある黒い点列がわかるだろうか? またよく見るとエラ蓋した下方から下アゴの腹側にかけて丸い白点が見られる。目盛りは5mm

体の中間部を拡大。背びれは2つある。このような体色、模様が個人的にはアゴハゼ成魚のベーシック(通常時)のように思う。目盛りは5mm
体の後半部と尾びれを拡大。尾びれは丸いウチワ状で、軟条にははっきりとした黒い点列が見られる。また尾びれの後縁には白い縁どりなどは見られない
こちらは2022年9月下旬に、河口付近で採集したもの。全長約9cm。ビッグサイズである。若干体色が薄いように感じるが、これも体色変化の一例だろう。目盛りは5mm
同個体の胸びれを拡大。ハッキリとした点列があるのがわかる。さらに胸びれ上方の6~7軟条が遊離しているのも確認できる。目盛りは5mm

同個体を腹側から撮影。写真では分かりにくいが腹びれは1枚の丸い吸盤状をしており、それを使って様々な場所にくっつき体を安定させる。このような腹びれはハゼ科魚類で多く見られる。目盛りは5mm

こちらは2022年4月上旬に、河口付近で採集した個体。全長6.5cm。この個体は体全体が明るい褐色をしている。ただこれも一個体内の体色変化だと思う。目盛りは5mm
こちらは2022年7月初旬にマーレ水槽で飼育していた個体。全長約5cm。この個体は体色の濃淡がハッキリとしている。未成魚や小~中型個体ではこのように黒色の面積が広いように思う。また尾びれ付け根の大きな黒点も目立つことが多い。目盛りは5mm

採集する

(写真:写真のような護岸上にできた潮だまりで見かけることも多い。というかこういう場所でばかり捕まえる)

浦安では全長3~5cm前後のアゴハゼを見ることが多い。

浅瀬の石の下や岸壁際など様々なところに隠れているので、そのような場所を狙えってタモ網を入れれば、初心者でも1匹は捕れると思う。

私はアゴハゼを狙う時は写真ののような護岸の上にできた潮だまりの中を探すことが多い。潮だまりに少し大き目の石があれば、それをひっくり返せば高確率でアゴハゼその他が隠れている(水槽用の小さな網があると捕まえやすい。ひっくり返した石はちゃんと元に戻そう)。

また貪欲な魚なので釣りでもよく釣れる。道具は何でもいいが軽く穂先が柔らかい竿の方が面白いだろう。岩の多い場所の岩と岩の隙間に、仕掛けを落としていく穴釣りが良いだろう。エサはゴカイ類やオキアミなど大抵のものは食うと思う。

飼育する

(写真:2022年4月上旬、自宅水槽2号にて撮影。丸い吸盤状の腹びれで、水槽のガラス面くっつくアゴハゼ。全長約6cm)

先に話した通り、環境の変化に非常に強く、配合飼料もすぐに食べるようになるので飼育は簡単だと思う。「メジナ」「チチブ」などと並ぶ浦安タフ魚軍団の一角である。

性格はおとなしく、写真のように壁や石の上にくっついてボケーっとしていることが多い。成魚はあまり移動せずじっとしていることの多い魚のようだ。

しかし食欲はかなり旺盛で、腹が減ると小型の魚やエビなど口に入るものなら何でも食べてしまうので、混泳には少し注意が必要。またエサ捕るのがあまり上手くないので、中層を泳ぐ魚がいるとエサが底に到達せず、アゴハゼが食べれないという事態になることもある。そういう時はピンセットなどで口元までエサを運んであげるといい。

 

(追記:2020年10月10日)過去に自宅水槽1号で飼育していたアゴハゼの面白い生態を思い出した。他の魚にもあると思うが、巣作りに非常に熱心なのだ。その巣作りというのが、水槽の底に敷いている粗めのサンゴ砂(粒径5~10mm)を口にくわえては違う場所へ吐き出し、クレーター状の凹みを作る。凹みは主に石やパイプなど障害物の下に作っていた(下の写真)。

丁度繁殖シーズンだったのか、水槽に入れた2~3日後からずっとそれをやっている。クレーターができてはこちらも困るので、そのクレーターを埋める。それでも懲りずにサンゴ砂を運び続ける。それを繰り返しているうちに何だか切なくなってきて、まだ水槽に来て間もなかったが海にお帰りいただいた。

同個体。隔離ケースの下に巣穴?を掘っている。とにかく掘りまくるのだ。そのため水槽のレイアウトが崩壊する
こちらは2022年7月上旬に自宅水槽3号で飼育していたアゴハゼ。全長約4cm。このようなサイズまでの小ぶりなアゴハゼは水槽の壁にほとんどいつもくっついている