クロウシノシタ

特徴

(写真:2024年6月下旬、三番瀬で採集。全長約20cm。これまで全長10cmほどの小型個体しか採集できていなかったが、ようやくしっかり成魚と言える個体を採集できた。暗い体色や背びれ~尾びれ~臀びれが黒いというクロウシノシタの特徴がしっかりと出ている。目盛りは5mm)

レア度:★★★★★★★★★☆ 脊索動物門 条鰭綱 カレイ目 ウシノシタ科 学名:Paraplagusia japonica 英名:Black cow-tongue よく見られる季節:?

写真の個体は2024年6月下旬に三番瀬の護岸のすぐ近くで採集されたもの(採集したのは私ではない。採集してくれてた方、グッジョブです!!)。クロウシノシタ自体は2022年の初発見から毎年1~2回ほど見つかっていたのだが(2023年は記録なし)、いずれも全長が10cmほどの小型個体で、このような成魚サイズの採集は今回が初であった。

今回のような全長20cmクラスの個体と全長10cm程度の個体では形態にはほとんど差はないが、体色や模様が大きく異なる。小型個体では体の有眼側全体の単色斑が多数見られるが、全長20cmクラスだと単色斑は見られない。また体色も全長20cmクラスの方がやや暗めのように感じた

もう1つの大きな違いとしては全長10cmクラスの個体では背びれ~尾びれ~臀びれが白色半透明で小さな白斑が見られるのに対し、全長20cmクラスでは背びれ~尾びれ~臀びれが先端部を除いて黒くなっている。これは裏側(無眼側)から観察するとよりよく分かる。

 

ちなみに今回採集した個体は取りあえず自宅に持ち帰り、「せっかくだから食べようかな…」と思案していたのだが、見ているうちに何だか情が湧いてきて、結局元居た場所に逃がすこととした。

 

以下に、『日本大百科全書』の『クロウシノシタ』の解説を引用させていただく。

『硬骨魚綱 カレイ目 ウシノシタ科に属する海水魚。北海道以南の日本各地、東シナ海、黄海、南シナ海に分布する。

吻(ふん)はかぎ状に腹方へ曲がり、先端は下眼の後縁下近くまで伸びる。体の背・腹縁と中央部に3本の側線が走る。口の周りに多数のひげ状物が一列に並ぶ。無眼側の背びれ、臀(しり)びれおよび尾びれは先端部を除いて黒い。

水深1~65メートルの内湾から沿岸の浅海域の砂泥底にすみ、小型の甲殻類のほか貝類、魚類などを食べる。産卵期は5~9月で、盛期は7月。1年で12センチメートル、3年で27センチメートルほどに成長する。最大体長は35センチメートル内外。

定置網や底引網で漁獲される。煮付け、フライ、ムニエルなどにする。味は近縁種のアカシタビラメやイヌノシタよりやや劣る。[落合 明・尼岡邦夫]』

(2024年8月)

『吻(ふん)はかぎ状に腹方へ曲がり、先端は下眼の後縁下近くまで伸びる』とあるが、慣れないとどこが口なのかよく分からない見た目だ。ただ口はけっこう大きく開くらしい
体の背・腹縁と中央部に3本の側線が走る。小型個体では体の有眼側全体の単色斑が多数見られるが、このような全長20cmクラスだと単色斑は見られない。また体色も全長20cmクラスの方がやや暗めのように感じた
体の後半部を拡大
透明ケースに入れて裏側(無眼側)から撮影してみた。全長20cmクラスでは背びれ~尾びれ~臀びれが先端部を除いて黒くなっている。これは小型個体では見られなかった特徴だ
無眼側の頭部周辺を撮影。こちら側は真っ白だ
胸びれは有眼側、無眼側ともに消失している
非常に小さな腹びれを持つ
正面から撮影。コミカルな愛嬌のある顔だ
比較として「クロウシノシタの幼魚」の写真を載せておく。2022年9月中旬、三番瀬で採集。全長約8cm。目盛りは5mm

採集する

(写真:自宅水槽5号にて。2022年に採集した「クロウシノシタの幼魚」。全長約8cm)

私が採集したワケではないので多くは語れないが、今まで浦安で採集できたのは2022年の9~10月の間の3匹と2024年6月に2匹だけなので、レア度は高めと言える(2023年は採集記録なし)。

いずれも波打ち際や岸近くの海底を、タモ網を使って底引き網の要領で引き、偶然網に入ったものだ。逆に言えばこの方法で5匹も捕獲できたので、もしかするとその周りにはたくさんのクロウシノシタが潜んでいたのかもしれない。

ちなみにクロウシノシタの産卵期は7~9月頃で、その際に浅場へとやってくるそうなので、丁度そのタイミングにあたったのかもしれない(全長~10cmで性成熟しているのだろうか?)。

専門に狙う人は少ないが、投げ釣りでも狙うことができるそうだ。仕掛けは「シロギス」の投げ釣り仕掛けと同様のものを使い、エサはイソメ類を多めに付けると良いそうだ。

 

そういえば学生時代、クロウシノシタかは分からないが、学校前の砂浜にシタビラメの類が大量に接岸し、それを水中メガネと銛を使って捕獲して夕飯の足しにしたのを思い出した。楽しかったなぁ~

飼育する

(写真:砂に隠れようとしている「クロウシノシタの幼魚」。砂の粒がちょっと大きすぎるか…。しかししばらくすると慣れたのか、完全に砂に潜るようになった)

以下の飼育記録は全長10cmほどの小型個体のもの。

水槽は自宅水槽5号を使用。たぶんこれだと小さすぎると思う。水槽には細目のサンゴ砂を敷いていたが、これも粒が大きすぎだろう。真夏の波打ち際で採集されただけあって高水温には強く、26~28℃では問題ないようだ。

クロウシノシタはポーカーフェイスというか表情が読めない魚で、魚の状態を把握するのが難しいと感じた。性格はデリケートな方だと思う。物音や自分の体に物体が触れると砂から飛び出して、逃れようと泳ぎまわる。なので底の方で暮らす生物とは混泳させない方が良い気がする(多分単独が良いのかな~)。

たぶん飼育環境が悪いのもあってか、エサは一切食わなかった。与えたエサは釣り用オキアミ、アサリのミンチ、生きたイソメ類 & そのミンチ、冷凍ブラインシュリンプ。このラインナップで食わなければお手上げである(あとは活きたイサザアミか?)。

想像とか推測しか言ってないな自分(笑)

1~2週間ほど観察した後、元居た場所へ返してきた。すまんことをしたね。

 

(追記:2024年2月23日)2022年10月下旬に採集した全長約9cmの個体を「浦安市郷土博物館」に提供して飼育展示してもらっていた。飼育環境は90cmオーバーフロー水槽、水温16~18℃、底砂は粒径2mmほどの砂で、混泳生物は…特に気になるものはいなかったように思う。

提供してから1~2か月ほど経って担当のスタッフさんに「そういえばクロウシノシタどうですか?」と尋ねると、「元気だよ!!エサもよく食べるし」と予想外の返事が。やはり水温とか環境とかで全然変わるんだな~と深く実感した出来事であった(あたりまえだが)。

ちなみにエサは冷凍のオキアミやフレークタイプの配合飼料を食べていたそうだ。

 

(追記:2024年6月7日)上述の「浦安市郷土博物館」へ嫁いでいったクロウシノシタだが、2024年4月に「浦安市郷土博物館」の水槽を見に行くと元気に暮らしていた。もう1年半以上経ったかぁ~。やはり低めの水温が良いのかな? 大きな「ギンポ」「アカオビシマハゼ」等と同居していたが特に問題無さそうであった。

体色を底砂に合わせて変化させ、体全体が白っぽくなっている