アカオビシマハゼ

特徴

(写真:2020年9月中旬、河口付近で採集。全長約7cm。体側に走る2本の黒いラインが特徴的。興奮したり警戒したりすると体全体がすぐ真っ黒になる。)

レア度:★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 ハゼ科 学名:Tridentiger trigonocephalus 英名:Chameleon goby よく見られる季節:4~10月?

全長10cm以上にまで成長する。三番瀬や境川を含む浦安沿岸でよく見られるハゼ科魚類の1つ。春から秋にかけて一度採集に行けば1匹は捕獲できるというぐらいはいる。

特に夏の三番瀬では障害物やテトラポッドなどの側の海底で数匹~十数匹程度の群れでいるのをよく見かける。水の汚染に非常に強い魚であるため、きっと東京湾奥の様々な場所に生息しているのだろう。

頭から尾びれの付け根まで走る2本の黒いシマ模様と、頬あたりの白い斑点が特徴だが、アカオビシマハゼは興奮したり、警戒するとすぐに体色が黒く変化する。そのため捕まえた瞬間は「チチブ」などと間違えてしまうこともある。ちなみにこのシマ模様は魚類学的には縦ジマとなる。

また浦安を含む東京湾奥には、本種に非常によく似た「シモフリシマハゼ」という魚がいる。違いはまず頭部に見られる白点のある範囲が違い、アカオビシマハゼでは喉の部分(頭部の腹側)に白点がないのに対し、「シモフリシマハゼ」ではその部分にも白点が見られる。

またアカオビシマハゼ成魚の尻びれには赤い横ラインが2本見られる。さらにアカオビシマハゼの胸びれの一番上の軟条(なんじょう)が遊離していることも特徴だが、これは捕まえてじっくり観察みないとわかりにくい。

私が採集をする場所では「シモフリシマハゼ」を見ることは稀で、ほとんどがアカオビシマハゼという印象がある。アカオビシマハゼは内湾の砂地に岩などの障害物が点在するような場所や、塩分濃度の高い河口などを主に生息場所とするそうだ。

食性は雑食性で、小型の甲殻類、魚類、ゴカイ類などの底生動物や小さな藻類なども食べる。寿命は基本的には1年(飼育下ではもっと長生きする)。繁殖期は春から夏で、カキ殻の内側などに産卵しオスが卵を保護する。

ハゼ釣りの外道として「チチブ」などとともに、「ダボハゼ」と呼ばれる魚の1つでもある。

(2021年1月)

(2024年1月)

上の写真と同じ個体。よく見ると喉の部分(頭部の腹側)には白い斑点がないのがわかる
こちらも同個体。成魚の尻びれには赤い横ラインが2本走る

採集する

(写真:2022年9月中旬、三番瀬で採集。全長約4cm)

障害物の側で暮らし、なかなかすばしっこいので、タモ網での捕獲はやや難易度高め。ただ数は多く、一度採集を行えば1匹は必ず捕まるという、定番メンバーでもある。

本種が隠れていそうな岩などの障害物を見つけたら、その際で通せんぼをするようにタモ網を構え、岩の間に足を突っ込んんで網の中にかき込むようにするといいそうだ。

また貪欲な魚であり、ゴカイ類などのエサにすぐにパクッと食いつくので、釣りで狙うのもアリだと思う。また秋に三番瀬で水中カメラを仕掛けた際、一緒に設置した釣り用の撒き餌(アミ姫)にも寄ってきたので、そういうものをエサにしても良いのかもしれない。

顔を拡大。人間でいうと頬~アゴの両脇ぐらいまでの範囲に白点が目立つ(アゴの裏側~喉の部分には白点がない)
こちらは2022年8月中旬、三番瀬の岸近くの水中を撮影したもの(水深は1mもない)。こんな感じで障害物の側に多数のアカオビシマハゼと思われる魚が群れていた

飼育する

(写真:体を真っ黒に変化させたアカオビシマハゼ(写真中央))

2020年9月中旬に採集した全長4~5cmのアカオビシマハゼを、一時自宅水槽で飼育していた。白い魚体に目立つ黒ジマ模様はなかなか水槽映えすると思う。

「環境の変化や水質の悪化に強い魚」と言われるだけあって飼育はかなり容易。水槽に入れた2日後からは粒タイプの配合飼料(おとひめ)も、他の生物を押しのけてバクバク食べるようになった。

基本的にはパイプの中や石の影に隠れているが、エサをやると水面まで泳いでくるほど貪欲。また縄張り意識が高いのか、自分が入っているパイプに他の魚が近づくと追い払おうとする(小型のカニは一緒にパイプの中にいても大丈夫だったが)。

あと同じ水槽内に体長2cmほどの「ユビナガスジエビ」がいるのだが、このアカオビシマハゼはその「ユビナガスジエビ」に対しては特に当たりが激しかった。これはエビをエサとして認識しているのか、はたまた違う理由なのか。

以上のような理由から、同居の「アミメハギ」はエサを奪われることが多く、かなり迷惑そうだった。なので1ヶ月ほど自宅で飼育した後、三番瀬水槽(マーレ水槽)に引越しさせた。2021年1月現在、全長6~7cmほどまで成長し元気にやっている。

(追記:2022年4月23日)上記の2020年9月中旬に採集した個体だが、現在も元気でやっている。採集した当時の可愛らしい姿とはだいぶかけ離れてしまったが…(下の写真)。採集時から約1年半が経過し、全長は約11cmと倍になり、そして何より…太った(笑) ふてぶてしい感じもする。

その姿に違わず性格も強烈になり、マーレ水槽の底物の帝王として君臨していた。植木鉢で作った洞窟を根城とし、90cm水槽の底面の半分近くを支配下に置いていた。

潮時か…ということで市役所水槽へ引っ越しさせることにした(コイツがいると小型の生物を新たに入れられないため)。マーレ水槽ではジャイアン的ポジションを獲得していたアカオビシマハゼ君だが、戦国時代の市役所水槽だと体の大きさだけでいえば一気に最下位に。ちょっと可哀想な気もするが、彼(彼女?)なら何とかやっていけるだろう。

2022年4月下旬撮影。採集してから1年半が経過し、全長約11cmまで成長したアカオビシマハゼ。太い。貫禄がある

このサイズに成長してからは、体色が汚れたような肌色、もしくはくすんだ薄紫色でいることがほとんどで、小さい時ほどの体色変化は見られなくなった