アシナガスジエビ

特徴

(写真:2023年3月下旬、三番瀬で採集。体長約7.5cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。浦安で今まで見たエビの中ではかなり大型。同科の「イソスジエビ」によく似ると言われる。私的には「ユビナガスジエビ」「イソスジエビ」足して2で割ったような印象)

レア度:? 節足動物門 軟甲綱 十脚目 テナガエビ科 学名:Palaemon ortmanni 英名:? よく見られる季節:?

(同定にちょっと自信がありません。他の資料も参照してください。間違っていたら教えていただけると嬉しいです)

2023年3月下旬に三番瀬浦安側の南東のテトラ帯で採集。ちなみに私がアシナガスジエビを浦安で見たのはこの時が初めて。採集したのは私でなく「浦安市三番瀬環境観察館」のスタッフさんだが(いつもの方とは違う方です)。

生物採集を複数人で行うと、自ずと「誰が一番すごい(珍しい)生物を採集してくるか!」みたいな雰囲気になってくる。この日、私は小さめの「アカエイ」と最大級サイズのオスの「タイワンガザミ」を採集し、内心「今日は勝ったな…」とほくそ笑み海から上がった。

そして採集した生物の仕分けを行う。もちろん私の採集成果は称賛された(笑) ところが、先に紹介したスタッフさんが「このエビなんすかね~?」と私に尋ねてきた。「どれどれ?」と、若干の奢りを含みながら渡されたバケツの中を覗く。

「なんじゃこりゃあ!!」

デカい、とにかく(この辺でとれるエビの中では)デカく見たことないエビがそこにいたのだ(あとこの方は他に、真っ赤なこれも初めて見るエビも採集していた)。それを見て、落ち込んだり負けたという気持ちは湧かなかったが、「うんうん、もっと謙虚な姿勢でなくてはいけないね自分」と少し反省した。

今回採集したメンバーはみな経歴も専門も違い、専門性レベルなら私なんかより遥か上を行く人達。きっと採集における着眼点やメソッド、引き出しも違うのだろう。人によって採集してくる生物に結構偏りがあるのに面白さを感じた。

さて、前置きが長くなってしまった。アシナガスジエビの特徴としては、まず・他のスジエビ類より大型になること、・額角が長く上方向へ反ること、・その額角の下縁が暗い紫色に染まること、・体のシマ模様は細く多数あり、体の後ろの方ではシマ模様が縦方向になること、などが挙げられる。

今回採集した個体もこれらほとんど全てのの特徴が当てはまるのだが、「額角の下縁が暗い紫色に染まる」については微妙なところ。採集した個体の額角をよく見てみ見ると、下縁に黒い細かな点が密集しているのだが、紫に染まるというにはほど遠い(下の写真参照)。

体のサイズ的には十分成長した後だろうし、個体差なのか、生息環境やその他要因によるものなのか、もしかしてアシナガスジエビではないのか…。「これはアシナガスジエビです!!」とバシッと言えないのが正直なところである。

もしエビマイスターの方がこのページを見ていたら、どうでしょう?

(2023年4月)

頭部を上から拡大。他のスジエビ類と比べるとハサミ脚は若干長めか。歩脚は細い感じ
体には横ジマが多数走り、体の後ろの方(尾の付け根あたり)ではシマ模様が縦方向になる
尾部を拡大

目盛りを見てもらうとわかるが、大きい。ハサミ脚を入れると9cm近くになる。目盛りは5mm

「額角が長く上方向へ反ること」と「額角の下縁が暗い紫色に染まること」がアシナガスジエビの大きな特徴だが、今回採集した個体の額角の下縁には、黒い細かな点が密集しているものの、紫に染まっているとは言えない。目盛りは5mm

頭部を横から見てみる。目盛りは5mm
体を横から見てみる。目盛りは5mm
体の後端部を拡大。目盛りは5mm

飼育する

(写真:自宅水槽4号で飼育中のアシナガスジエビ。体長約4cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ))

2023年4月頭頃に、ふと自宅水槽を眺めていると、「あれ?なんかスジが多くて大き目のエビがいるな」ということに気が付く。それまでは大き目の「スジエビモドキ」だろうなどと、スルーしていたのだろう。

このページを書くにあたってじっくり観察してみると、「これ、アシナガスジエビ(の小さいの)やんけ~!!」。いつどこで採集したものか思い出せない。たぶん2023年に採集したものだと思うが。

観察しようとして飼育していたわけではないが、一か月ほど経過したので、その歩みをまとめてみる。

まず水温は20~23℃では全く問題なし。比重は1.023。混泳生物は小さなヤドカリ類やスジエビ類で、特に襲ったり襲われたりということはない。

今まで1匹しか飼育していないので、これが全てとは言えないが、第一印象は「体が大きい割に警戒心が少し高く、神経質さも持っているエビだな」と。

水槽入って間もない頃は、人影に敏感に反応して物陰に逃げたりすることが多かった。また普段も水槽の奥の方の暗がりにいて、あまり活発に動かない。またエサもフレーク類やクリルへの反応はあまり良くない。

これが「ユビナガスジエビ」「スジエビモドキ」なんかだと、水槽に入れたその日からエサをバクバク食うし、水槽中を泳ぎ回るのだが(笑)

人に慣れてくると水槽に近づいたり、エサやりのため水に指を入れても逃げたりせず、エサもガツガツ食べる。ただ海底付近にいることが多く、あまり泳ぎ回らないタイプのようだ。あとやっぱり物陰に隠れてあまり表には出てこない。

それとこれは体の大きさのせいもあるかもしれないが、瞬発力が高く、網で捕まえようとするとバビュンバビュン飛び跳ねる。なので上に挙げた別のスジエビたちと比べると捕まえづらいし、うっかりすると水槽の外に飛び出してしまいそうである。

 

(追記:2023年9月27日)その後、体長が5cm程度まで成長した段階で、市役所水槽で展示することにした。丁度水槽をリニューアルしている際中であり、「エビ類が伸び伸びと暮らせる水槽」をテーマにしていたので(エビたちは魚類に食われてしまうので混泳させる魚も厳選した)、うってつけの存在だった。

ところがこのアシナガスジエビ、人前に出ることを嫌うようだった(笑) 組んだ石と水槽の背面の壁との間にいることがほとんどで、一般の方にはその存在に気が付いてもらえない。まぁそれが性格っていうか生存戦略なら文句は言わんけどね(笑)

そのため水槽を訪れた人には「実はちょっと違うエビが1匹だけいるんですよ~」とエビ探しクイズをするのが恒例となってしまった。

自宅水槽4号にて。やっぱり人目がない場所が好きなようで、人口水草の陰に隠れていることがほとんどだった
2023年4月下旬撮影。浦安で見られる他のスジエビ類と同様、産卵前になると、頭胸甲内部がウグイス色になり、そこに白いプツプツが現れる。このとき水温は20~23℃ぐらいだったかな