バカガイの稚貝

特徴

(写真:2022年8月中旬、三番瀬で採集。貝殻の幅約8mm。殻頂の蝶番の部分が、濃い茶褐色に色づくことが「バカガイ」の稚貝の特徴とのこと。初めは何の貝なのか検討もつかなかったが、「バカガイ」と知ってから見ると貝殻の形、表面の質感や、貝殻の脆さが確かに「バカガイ」っぽい。目盛りは0.5mm)

レア度:? 軟体動物門 二枚貝綱 マルスダレガイ目 バカガイ科 学名:Mactra chinensis 英名:Rediated trough-shell よく見られる季節:?

2022年8月中旬に行われた三番瀬生物調査にて採集。写真の「バカガイ」の稚貝だが、タモ網で海底そ底引き網の要領で引いていただ偶然網に入ったものだ。

この時は他に同サイズの「アサリ」の稚貝、「シオフキ」の稚貝、「トリガイ」の稚貝なども一緒に採れた。稚貝シーズンなのか?

この「バカガイ」の稚貝だが、成貝とは貝殻の色や模様がかなり異なるので、詳しい人でなければ同定は難しいかもしれない(私もです)。他の稚貝との見分けだが、「バカガイ」の稚貝は貝殻の殻頂の蝶番の部分が濃い茶褐色に色づくことだそうだ(下の写真参照)。…とは言っても一度本物を見たことがある人でないと、難しいだろうなぁと思う。

以下、「バカガイ」の解説。

最大で10cmほど(貝殻の幅)になる。関東では「青柳(アオヤギ)」とも呼ばれ、寿司ネタとしても有名。内湾の浅い砂地に生息しており、浦安では潮干狩りの際にポツポツ見かける。「アサリ」よりも少し沖合のより深い場所に多いらしい。

貝殻は明るい褐色に白っぽい放射状の筋が入るものや、全体が薄いベージュ色で放射状の筋があまり目立たないものなどが見られる。ちなみに貝殻の表面はつるつるしている。貝殻の裏側は縁辺部が褐色で、その内側は白く、頂点付近は紫色に色づく。また貝殻は薄く脆く、ちょっとした衝撃で欠けてしまったり、表面が剥がれたりする。

名前のインパクトから、一度知るとしっかりと記憶に残る貝だが、その名前の由来を知っている人は意外と少ないかもしれない。名前の由来には諸説あり、

①貝殻が薄く壊れやすいことから「破家貝」と名付けられたとする説、②一度に大量に漁獲されることがあるので、「バカみたいに多く獲れる貝」という意味でこの名前が付いた説、③いつも貝の口をあけてオレンジ色の「斧足(ふそく)」を出している姿が、バカのように見えるからという説、④昔、「馬加(まくわり。現在の幕張のこと)」でたくさん獲れたため、地名を音読みし「バカ貝」と呼ぶようになった説、⑤頻繁に場所を変えることから「場替え貝」と名前が付いた説などがある(まだ他にも説がある)。

なので他人に名前の由来を説明するのが非常に大変だ。

砂から2本の水管を出し、プランクトンやデトリタスを海水ごと吸い込んで、体内で濾しとって食べる。また砂に潜るのが「アサリ」などにくらべてかなり速い。産卵期は早春~夏。

(2023年7月)

裏側(右側)の貝殻を撮影。目盛りは0.5mm
自然光下で撮影。こう見ると、貝殻は暗褐色で殻頂の左右が白くなっているのがわかる。ただ全ての「バカガイ」の稚貝がこのような見た目、色彩なのかは不明。目盛りは5mm
貝殻の背側(蝶番の部分)から撮影。ちょっと分かりにくいが、殻頂部分が周りより黒っぽくなっている。またその左右は白っぽくなっている
正面から撮影。貝殻の合わせ面の部分に殻の剥がれが見られる。「バカガイ」は貝殻が薄く脆いという特徴がある

サイドから撮影。目盛りは0.5mm

反対サイドから撮影。目盛りは0.5mm