コシダカガンガラ

特徴

(写真:2022年7月上旬、河口付近で採集。貝殻の直径約3cm、高さ約2.5cm。生きた状態で撮影。浦安で見られる巻貝の中では大型な方だ。高さがあるのでよく目立つ。貝殻表面は藻類などが付着して汚れていることが多い。目盛りは1cm)

レア度:★★★☆☆ 軟体動物門 腹足綱 古腹足上目 サザエ/リュウテン科 学名:Omphalius rusticus 英名:? よく見られる季節:春~初夏

最大で貝殻の直径3cm、高さも3cmほどになるらしい。春~初夏にかけて、河口付近の岩や海沿いのテトラポッドに張り付いているのを時々見かける。大量にいる「イボニシ」などと比べると数は全然少なく、たまに見つかる程度。真夏になるとあまり見かけなくなる(ちょっと深場に行くのかな?)

貝殻は丸みのある円錐形をしており、色は薄い褐色で、貝殻の一番下の巻き~底面の一部にかけては黒い縦ジマ模様が見られる。ただ野外では、貝殻表面が藻類に覆われて、貝殻全体が暗緑色に見えることが多い(浦安では)。また藻類の他に、コケムシ類やカンザシゴカイ類の棲管が付着している姿もよく見る。

貝殻の底面は平らで、大部分が白色をしている。底面中心には臍孔(さいこう)があり、その付近は色づかない。殻口~貝殻内部には白色で真珠光沢が見られる。また貝殻は厚く丈夫で、人間が踏みつけても簡単には割れない。

フタは綺麗な円形で薄く、色は濃い褐色でべっ甲のような質感。フタには同心円状の筋が多数見られ、横から見るとわずかに上下逆の円錐形になっているのがわかる。また殻口近くには歯状突起がある。

体(足)は側面から見ると黒色をしており、前方部分や後方部分にはシワのような細いスジ模様が見られる。ちなみに体(足)の底面は他の貝でもよく見られるような肌色をしている。また体(足)と貝殻の境目あたりから、薄い黄色の触角のようなもの(上指突起)が左右4対本ほど伸びる。

個人的には印象に残る顔をしているなぁと思う(下の写真参照)。まず目つきが鋭い。長めで黄色い眼柄(と言っていいのか分からないが)の先端に黒い小さな点状の眼がついている。言葉で表すのが難しいのだが、何だか「性格の悪い牛」のような顔つきをしているというか…(下の写真でご確認ください)。

食性は私が観察した限りでは、植食性がかなり強い。1個体でかなりの量の藻類を食べるため、水槽の掃除屋として最適(詳しくは後述)。また浦安で見かける巻貝類の中では移動速度も速め(秒速1cm以上はある)。

(2023年8月)

貝殻は丸みのある円錐形で貝殻は厚く硬い。目盛りは5mm
貝殻表面が藻類に覆われて、貝殻全体が暗緑色に見える場合が多い(浦安では)。目盛りは1cm
真上から見るとほぼ円形をしている。目盛りは1cm
貝殻の底面は平らで、大部分が白色をしている
底面中心には臍孔(さいこう)があり、その付近は色づかない
殻口~貝殻内部には真珠光沢が見られる
貝殻の一番下の巻き~底面の一部にかけては黒い縦ジマ模様が見られる
殻口近くには歯状突起がある(写真中央左下)
コシダカガンガラの蓋。綺麗な円形で薄く、色は濃い褐色でべっ甲のような質感。蓋には同心円状の筋が多数見られ、横から見るとわずか反りがあり背の低い円錐形のようになっている

採集する

(写真:移動するコシダカガンガラ。鋭いというか独特な目つきをしていると思う)

私が知る範囲では、春~初夏にかけて、河口付近の岩や海沿いののテトラポッドに張り付いているのをよく見かける。よく見かけると言ってもたくさん目にするわけでなく、注意して探すとポツポツと見つかるといった感じ。

干潮時でも水の上には出ることはせず、水中にいることがほとんどなので、存在を知らないとスルーしてしまうかもしれない。

見つけさえすれば、張り付く力はそんなに強くないので引きはがすのは簡単。ただ微妙に手の届かない位置にいることが多いので、ゴミバサミや小さめのタモ網があると採りやすい(濡れても良い装備をして手で掴むのが一番効率は良いが)。

採集時には足元に注意が必要。その食性のためか、ぬるぬるとした海藻の生えた岩やテトラポッド上にいるため、何も対策をしないと足を滑らせる可能性大だ。

私も色んな靴を試したが、そのような場所では靴底がフェルトソールのものが最も滑りにくいと思う(フェルトソールのヒップウェーダーあたりがおススメ。安いものでOK。フェルトが効かなくなってきたり穴が開いたら買い替えよう)。

毎年全国で磯やテトラポッドで足を滑らして、打ちどころが悪かったり、そのまま這い上がれなかったりして死亡する事故が起きているので、油断禁物。

目つきが鋭い。長めで黄色い眼柄(と言っていいのか分からないが)の先端に黒い小さな点状の眼がついている。言葉で表すのが難しいのだが、何だか「性格の悪い牛」のような顔つきをしているというか…
後方から撮影。体(足)と貝殻の境目あたりから、薄い黄色の触角のようなもの(上指突起)が左右4対ほど伸びる

飼育する

(写真:水槽の壁面に付着したコケを食べているコシダカガンガラ。素晴らしい掃除能力で、まさに水槽の「ルンバ」と言えよう(ルンバ使ったことないけど))

タフな巻貝なので、飼育は容易。というか特に何もしなくても、水槽に生えたコケを勝手にモリモリ食べて、長期間生存してくれる。飼育水温は20~28℃まではイケる。ただ高水温(27~28℃)のときは20℃の比較すると活性はかなり落ち、28℃だと慣れるまではちょっと辛そう。

また河口域でも生息しているので、多少の低塩分にも耐えられるのだろう。水の汚染にもかなり強い。自宅水槽2号に入れていた「マガキ」がいつの間にか死んで腐り、水から強い腐敗臭が発生する事件があり、その状態が半日~1日続いたのだが、その状態でも特に弱るということはなかった。

混泳生物の攻撃にもかなり強い。実際に「カゴカキダイ」「カワハギ」「アカオビシマハゼ」といった攻撃的な魚類や「コブヨコバサミ」などの大型甲殻類とも長期間共存している。

面白い行動として、自身の貝殻に他生物(例えば他の貝類やヤドカリ類、エビ類)が乗ると、それを振り落とそうと激しく貝殻をグリングリン回転させる。かなりアグレッシブな巻貝だ。

そして何より特筆すべきはその掃除能力。これは水槽の環境にもよるだろうが、私の自宅水槽3号(45cm水槽。ろ過装置は投げ込み式フィルターのみ)に、殻径3cmほどのコシダカガンガラを1匹入れてからは、水槽掃除をしなくても、ガラス面にコケが全くない状態が現在(2022年7月)2か月ほど保たれている(2023年8月現在も同様な状況)。

逆にエサとなる藻類が無さ過ぎて、コシダカガンガラが餓死しないか心配になるほどだ。ただガラス面以外の場所に藻類がたくさん生えているような水槽だと(マーレ水槽とか)、ガラス面をキレイにする前にそちらの藻類の方を食べてしまい、期待するような掃除効果が得られないことがある。

 

(追記:2023年8月31日)海では何をメインに食べているかは知らないが、飼育していくうちに様々な海藻を食べることが分かった。例としては緑藻類の「ミル」、大型褐藻類の「スナビキモク」、あと種類不明だが紅藻類を食べるシーンも目撃した(下の写真参照)。

海藻の「ミル」を食べるコシダカガンガラ。壁に付いたコケより食いでがありそうだ。普段海ではどんなものを食っているのだろうか?
紅藻類を食べるコシダカガンガラ。この他に大型褐藻類の「スナビキモク」も食していた
コシダカガンガラが糞をしているシーン

食べる

(写真:海水で茹でて身を取り出したコシダカガンガラ。目盛りは1cm)

海水で5分間ほど茹でて、身と肝を食べてみた。

身は「サザエ」のような味と食感で、「サザエ」ほどの味の濃さや磯っぽさは無いが、噛むと後から旨みがじわっと口の中に広がる。またほのかに甘さもあり美味い。肝は「サザエ」の肝をより磯臭くした感じ。旨みが強いが少しえぐみもある。大人の味ってやつか。

この辺りで採れる巻貝ではかなり美味い方だと思う。「食糧難になったら採集する生物リスト」入り決定。