ヒラメの幼魚

特徴

(写真:2023年5月末に三番瀬で採集。全長約5cm。「左ヒラメ右カレイ」という言葉があるよう、左を向いている(これについては例外もあるが)。カレイ類の幼魚とよく似るが、詳しく見ると「口が大きく歯が鋭い歯がある」、「目付きが鋭い」といった違いに気が付く)。写真は「浦安三番瀬を大切にする会」の会員が撮影)

レア度:★★★★★ 脊索動物門 条鰭綱 カレイ目 ヒラメ科  学名:Paralichthys olivaceus 英名:Bastard halibut よく見られる季節:?

2023年5月末に三番瀬で開催された干潟観察会で、誰かが採集してくれた(ありがとう…)。私は観察会に参加していないので、詳しい採集情報は不明。おそらくタモ網海底を引きずっていたら偶然網に入ったものと思われる。

問答無用のぶっちぎりでレアである!!(笑) 実はかなり昔から「ごく稀に電波塔の方で小さなヒラメが釣れることがある or 釣ったことがある人がいる」という情報を知っていたのだが、私が浦安に来て9年余り…その姿を見たのは今回が初であった。

ヒラメというと、白身の高級魚(今では養殖物もすっかり定着したが)、船で釣るものというイメージがあるが、実は意外と岸からの釣りでも釣れることの多い魚なのだ。

エサとなる小魚(アジ類、イワシ類、サバ類など。ルアー界では「ベイトフィッシュ」とも呼ばれる)が良く釣れている場所の海底には、それを狙うヒラメが身を潜めていることも多い。

そんな時はまず小魚を釣って、それを生きたまま大きな針に掛けなおし、海底付近にまで沈める(これを「泳がせ釣りという」)。そうするとヒラメやその他大型魚類がいる場合はかなりの確率で食いついてくる。小魚から高級魚のヒラメへ…まさにわらしべ長者的な釣りである。私は釣り初心者にサビキ釣りやちょい投げ釣りを習得したら、是非次は泳がせ釣りをしろ!といつも言っている。

さて、余談が長くなってしまった。今回採集されたヒラメだが、全長5cmと幼魚サイズながらも、しっかりとヒラメの特徴を持った姿をしている。

まずはその獰猛そうな顔。ヒラメ獰猛な肉食魚で、体色を周りと同化させ隠れながら、泳いでいる魚や甲殻類、イカ類などに飛びついて捕食する。そのため獲物を逃さぬよう、大きな口と鋭い歯を備えている(写真のようなサイズのヒラメ幼魚はアミ類、「カタクチイワシ」、ハゼ類の稚魚などを食べるようだ)。

そして目付きがカレイ類に比べると怖い(笑) これは大きなヒラメだと顕著なのだが、体に対して眼が小さめで、人間でいう黒目部分が小さく見えるため。その食性と相まって「切れたナイフ(笑)」のような雰囲気がある。

あとは体型がフットボールのようにやや横長の紡錘形をしていること(これは個体にもよるが)。また体色や模様は周囲の環境に合わせて著しく変化するが、通常時?には体色は暗褐色で、体表には白く縁どられた歪な円形の黒褐色の斑点と、明瞭な白斑点が多数みられる。

またヒラメの天然ものは腹面(裏面)は真っ白だが、養殖もの(種苗放流されたものも)には黒~褐色の模様が入ることが多い。これに関しては理由はよく分かっていないが、過去に三番瀬水槽で飼育した「イシガレイ」の幼魚でも同じようなことが起こった。

以下に、『日本大百科全書』のヒラメの解説を引用させていただく。

『和名 ヒラメ bastard halibut/Paralichthys olivaceusは樺太(からふと)(サハリン)や千島列島から九州までと、朝鮮半島、東シナ海、南シナ海に分布する。

体は楕円形。口は大きくて目の後縁まで開く。両顎(りょうがく)の歯は強く、1列に並ぶ。上眼は頭の背縁に近い。有眼側の体は暗褐色で、無数の黒褐色と白色の斑紋(はんもん)が散在する。

産卵期は2~7月で、南方ほど早い。この時期には水深20~70メートルの潮通しのよい砂泥、砂礫(されき)または岩礁域にきて産卵する。卵は直径1ミリメートル前後で、15℃ぐらいの水温では約60時間で孵化(ふか)する。

孵化仔魚は2ミリメートル前後で、背びれの前数軟条が伸長し、水深5~10メートルの河口や沿岸で底生生活をする。1年で全長15~30センチメートル、3年で34~57センチメートル、5年で50~76センチメートル、6年で59~83センチメートルになる。最大体長は85センチメートルほどになる。

40センチメートルぐらいで成熟する。初春から夏にかけて、産卵のために浅い所へ移動し、秋から冬には水深100~200メートルの沖合いへ去る。成魚は底生魚類、イカ類、甲殻類などを食べる。

底刺網(そこさしあみ)、底引網、手繰(てぐり)網、延縄(はえなわ)、釣りなどで、ほとんど一年中漁獲され、水産上の重要魚である。日本各地の沿岸で盛んに養殖されている。[尼岡邦夫]』

(2023年7月)

ヒラメ獰猛な肉食魚で、体色を周りと同化させ隠れながら、泳いでいる魚や甲殻類、イカ類などに飛びついて捕食する。そのため獲物を逃さぬよう、大きな口と鋭い歯を備えている。また個人的感想だが、カレイ類と比べると鋭い目付きをしていると思う
体型がフットボールのようにやや横長の紡錘形をしていること(これは個体にもよるが)。また体色や模様は周囲の環境に合わせて著しく変化するが、通常時?には体色は暗褐色で、体表には白く縁どられた歪な円形の黒褐色の斑点と、明瞭な白斑点が多数みられる
同日に採集された「イシガレイの幼魚」(写真上)とヒラメの幼魚(写真下)。腹側(内臓、腹びれがある方)を手前にして並べると、左を向くのがヒラメで右を向くのがカレイという有名な見分け方があるが、これには例外もある

「左ヒラメ右カレイ」??

(写真:千葉県勝浦市で堤防から釣ったヒラメ。全長約45cm)

先に書いたように、「腹側(内臓、腹びれがある方)を手前にして、頭が左を向くのがヒラメで、右を向くのがカレイ」という有名な見分け方があり、これを「左ヒラメ右カレイ」と呼ぶ(人や地域によってはちょっと違う場合があるが…)。

大体の場合はこれでいいのだが、実はこれに当てはまらない例外カレイがいる。それは「ヌマガレイ」という魚。この「ヌマガレイ」は左を向くカレイで、日本近海で捕れる「ヌマガレイ」はほぼ左を向いているらしい。

しかし海外だとまた話が変わってきて、アラスカに生息するものでは30%が右を向き、さらにカリフォルニアでは50%の「ヌマガレイ」が右を向くらしい。どうやら東に行くほど右を向く割合が増えるようだ。おっと、ヒラメのページなのに、いつの間にかカレイの話になってしまっていた。

ちなみに右を向くヒラメというのもいて、日本でもひじょ~に稀に捕獲されるらしい。幻の右ヒラメだとか。

こちらは食卓でもお馴染みの「イシガレイ」。浦安の総合公園で釣ったものだ。ちゃんと右を向いている。向いている方向以外には口の大きさに注目して欲しい。この「イシガレイ」、全長50cmとかなり大型なのだが、顔に対する口の大きさ(口の開く量)がヒラメよりかなり小さい。

採集する

(写真:千葉県勝浦市で冬に堤防から釣ったヒラメ。大きい方が全長約60cm、小さい方が50cmといったところだ。アジの泳がせ釣りで捕獲。泳がせ釣りはいいぞ~)

私は稚魚・幼魚も含め浦安でヒラメを捕獲したことがないので、詳しいことは分からない。

実際に東京湾奥ではヒラメはあまり見られないそうだ。ただ電波塔の方で、ルアー釣りの人が小さいヒラメを釣ったとか釣ってないとか…。

「ヒラメを釣った!!」というと大層に聞こえるかもかもしれないが、意外と身近にいる魚で、初心者がうっかり釣ってしまうことも多々ある。釣れる魚に「ヒラメ」が挙げられている場所で、小さなアジやイワシがたくさん釣れていれば、ヒラメを狙える可能性大だ。

おススメは小さなアジやイワシ、サバなどを生きたままエサにする「泳がせ釣り」。泳がせ釣りにも色々種類はあるが、ヒラメを狙うのなら「ぶっこみ式」の泳がせ仕掛けが良い(調べてみてね)。ちなみに今から紹介するやり方で「スズキ」「マゴチ」、「カンパチ」などの回遊魚も釣れる。

一部の人のために私の仕掛けを書くと、竿:3号‐4.5m、リール:スピニングリール4000番(太い糸が100m巻ければ何でもいい)、道糸:ナイロン5号、ハリス:フロロ5号を70cm、捨て糸:1.5号ぐらいを90cm、オモリ:15号~、針:がまかつ ヒラメ 7号 ネムリ(針には「活き餌ロック」というゴムビーズを付ける)、エサは10~15cmぐらいのアジを背掛けにする

生き餌が弱らないように、サイドスローでフワッと仕掛けを投入し、オモリが着底したら道糸をピンと張って、リールのドラグを緩めて待つ。その間も近くでサビキ釣りをするか、コマセ(撒きエサ)を撒くと小魚と一緒にヒラメも集まって良い。

生き餌が元気に泳いでいる時は竿先が規則正しく細かく揺れる。しばらくしてもアタリが無い場合は竿を一度煽って誘いを入れて、再びオモリを着底させる。

ヒラメなどの捕食者が生き餌に近づく or 攻撃すると、生き餌は逃れようと激しく動きまるため、竿先が不規則に大きく動く。そしてヒラメがエサに食いつくと、竿先が一瞬ガクッと揺れ、竿先の揺れが止まったり道糸が弛んだりする。

ケースによるが、ヒラメは捕食があまり上手でなく、またエサを飲み込むのにも時間がかかる。そのため先に書いたようなアタリがあっても、変に竿をさわらず、しばらく放置するぐらいでいい。

そしてアワセのタイミングだが、これもケースによるが、ヒラメが生き餌を飲み込もうとする度に、グンッ!…ググンッ!!と竿が絞りこまれるので、それが何回か起こって動きが止まる or ヒラメが移動しようとして仕掛けが大きく動いたら、リールのドラグを適度に締め、ヨイショッと!という感じで魚の重みを感じつつ、かつシャープに竿を煽ってアワセを入れる。

アワセが成功したら、あとはポンピングなどをしながら糸を巻き、焦らずにやり取りする。

ヒラメは口がそこそこデカい上に、歯が鋭いので、針がかからず生き餌がすっぽ抜ける、ハリスが歯に当たって切れるということが起きるが、上に書いたような仕掛けとネムリ針(針先が内側に少し曲がった針)を使うことで、これらをクリアできる。

釣りあげたら、すぐに活締めと血抜きを行って、クーラーボックスへ。この際鋭いヒラメの歯でケガをしないように。

同じ場所で連続でヒラメが釣れることも結構あるので、ハリスが傷んでいないか点検したらすぐに同じ場所に仕掛けを投入すると良い。

裏側が真っ白なのは天然の証。12月中旬に釣ったものなので、肉付きも良くコンディションはグッド
こちらは南房のサーフ(砂浜)でルアーで釣ったもの。ルアーの大きさが15cmぐらいなので、全長25cmほどか? ~40cmぐらいまでの小型のヒラメを「ソゲ」と呼ぶこともある。40cm以上でないと”ヒラメ”として認めてもらえない(笑) 逆に60cmを超えるものは「座布団ヒラメ」もしくは「座布団」と呼ばれる

食べる

(写真:12月に外房で釣った全長約60cmのヒラメの刺身。締めてから1日寝かせたもの。まぁ不味いワケはない)

言わずと知れた白身の高級魚。養殖も盛んに行われているので、スーパーでもお求めやすい価格で入手できる。

ただヒラメだからといって、どんなヒラメでも滅茶苦茶美味いというワケではない。季節やエサ、漁獲後の扱いなどによって味が大きく変化する魚だと思う。

一般的には初秋~早春が旬と言われており、逆に春から初夏にかけては産卵のため味が落ちる。確かに昔、初夏の三浦で釣った40cmぐらいのヒラメを刺身にしたのだが、旨味が全然なく、何だかうっすら苦みのようなものまであってガッカリしたのを覚えている(個体差や捌き方に問題があったかもだが)。

過去最高に美味かったのは、12月に外房で釣った60cmクラス天然ものの刺身(写真)。釣ってから1日寝かせたが、適度な旨味、脂、歯ごたえの三拍子が揃っており、かなりの量があったにも関わらず、2人であっという間に平らげてしまった。

他の料理にしても美味いのだろうが、私はヒラメはほとんどの場合刺身で食べてしまう。

ちなみにヒラメやカレイの「五枚おろし」は一見難しそうだが、実際にやってみるとヘタな魚の三枚おろしより簡単。ヒラメやカレイを釣ったらチャレンジしてみよう。

あとヒラメの身には「クドア・セプテンプンクタータ」(通称クドア)という、人体に有害な寄生虫が寄生していることがある。症状としては食後数時間で一過性のおう吐や下痢を発症し、軽症で終わるというものだ。

加熱や冷凍をすれば防げるが、そうしてしまっては刺身を楽しむことができない。心配な方は一度にたくさんの天然ヒラメの刺身を食べるのはやめておこう。養殖ヒラメに関しては対策は取られているようである。