クロダイ

特徴

(写真:2015年9月中旬採集。全長約50cm。このクロダイは新潟の磯で生きたカマス(全長約20cm)をエサにしたら釣れたもの。しかも同サイズが5匹連続でだ)

レア度:★★★☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 タイ科 クロダイ属 学名:Acanthopagrus schlegeli 英名:Blackhead seabream よく見られる季節:5~10月

全長60cmほどまで成長する。釣り人が大好きな魚その①。50cm以上のクロダイを釣るために人生をかけているオジサンは珍しくない。この魚を釣るためだけに、多数の釣法、そして無数の道具が開発され今に至る。ちなみに釣り人はクロダイのことを「チヌ」と呼ぶことが多い。

成長によって呼び名が変わり、関東では小型のものを「チンチン」、中型のものを「カイズ」、そして大型を「クロダイ」と呼び、さらに50cmを超えると「年無し」と呼ぶ(これはクロダイは長寿であり、50cmを超えたクロダイは何歳かわからないということから来ている)。ちなみにクロダイは15年以上生きるそうで、はっきりとした寿命は調べても分からなかった。

何でも食べる悪食な魚として有名で、魚やカニ、エビ、ゴカイ類、貝、海藻、果てはスイカの皮やトウモロコシまで食べ、実際にそれをエサとした釣り方まで存在する。そんな習性から、近年ルアーフィッシング(チヌを釣るので「チニング」という)の対象魚としても人気を集めている。性格は繊細かつ大胆と言われ、物音や光に敏感に反応するかと思えば、背びれが水面から出そうなぐらい浅瀬を悠々と泳いでいることもある。

性転換する魚としても知られ、生まれてから2~3歳まではオスで(この期間中にオスでもメスでもある時期が存在するそうだ)、その後メスへと性転換する。しかし文献によると例外的に一生涯オスのクロダイもいるらしい。ちなみに産卵期は春~初夏で地域によって違いがある。

(2020年5月)

採集する

(写真:2019年7月下旬採集。全長約2cm。クロダイの幼魚)

クロダイ自体は珍しい魚ではなく、浦安の海や河川に多数のクロダイが生息していると思われる。初夏~夏にかけては浅瀬で1~3cmほどの「クロダイの稚魚・幼魚」をよく見かけるので、それをタモ網ですくうのが最も手軽な採集方法だろうか。

ある程度成長したクロダイは警戒心が高く泳ぎも俊敏で、タモ網で捕まえるのは非常に難しい。そのようなクロダイは夏~秋の夜釣りで捕獲するのが初心者には良いかもしれない。秋に浦安のテトラポッド帯を泳いだことがあるのだが、水中はそこらじゅう10~30cmのクロダイだらけで、その多さに驚いた経験がある。

クロダイの釣り方を思いつくままに列記してみると、フカセ釣り、ウキフカセ釣り、前打ち、ダンゴ釣り、ヘチ釣り、カカリ釣り、さぐり釣り、投げ釣り、ルアー釣り(チニング)、泳がせ釣り、フライフィッシングなどなど…。そうそう、サビキ釣りでもクロダイがかかることがある。このようにクロダイ釣りには多種多様な釣り方が存在し、しかもそのどれもが非常に奥深く、さらにクロダイの魚体の美しさや力強さが相まって、多くの釣り人を魅了しているのである。

飼育する

水質の悪い海域や汽水域にも生息できる丈夫な魚であり、また餌付きも非常に良く、飼育は簡単な方だと思う。

ただ食欲旺盛過ぎてで自分より小さな魚や、小型のカニやヤドカリなどをバクバク食ってしまうため混泳には注意が必要。さらに他の魚を追い掛け回したり、クロダイ同士でケンカすることも多い。

個人的には少し白点病になりやすい印象がある(でも余計なことをせずに見守っていると自力で治った)。

食べる

(写真:2019年9月下旬に浦安で釣ったクロダイ(全長約35cm)の刺身)

人によって味の評価が分かれる魚。季節やエサ、魚のサイズ、生息場所などによって味が大きく変化するようだ。

私も自分で捕らえたクロダイを何回か食べたことがあるが、夏に地方の水のキレイな磯で捕獲したクロダイは絶品だった(昼に捕獲してその夜に刺身で食べた)。しかし8月の浦安で釣った30cmのクロダイは、身が水っぽく少しオシッコのような臭いがした(胃を開いてみると海藻をたくさん食べていた)。ところが違う年の9月に浦安で釣った40cmの個体は、嫌な臭いもなく刺身でかなり美味しかった(釣ってから1時間後に刺身で食べた。このクロダイはイガイ類を大量に食べていた)。

クロダイは死ぬと他の魚に比べて身が柔らかく水っぽくなるのが速いので、なるべく新鮮なものを食すか、塩などで身を締める工夫が必要かもしれない(良い料理法があったら教えてください)。