ギマ

特徴

(写真:2020年6月下旬採集。全長約25cm。メスのギマ。釣り上げてすぐの状態で撮影。とても奇妙な姿をした魚だ。産卵期なのか、体内には大きく肥大した卵巣があった。スケールは15cm定規)

レア度:★★★☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 フグ目 ギマ科 ギマ属 学名:Triacanthus biaculeatus 英名:Short-nosed tripodfish よく見られる季節:6月~夏

最大で全長30cmほどになる。何とも奇妙な、そしてインパクトのある見た目をした魚である。「東京湾奥 変な魚ランキング(岸釣り編)」があるとすれば、No.1に認定してもよいのではないだろうか。

浦安では梅雨頃から夏にかけて、日の出や高洲の海岸で投げ釣りをしていると釣れることがある。またこの時期には、三番瀬や河口の浅瀬で全長1cm~数cmの「ギマの稚魚・幼魚」を目にすることができる。そういえば2019年7月下旬に三番瀬を泳いでいたら、全長8cmほどのギマがフラフラ~と潮の流れに身を任せるように泳いでいる場面に遭遇し、それを後ろからストーキングして撮影したこともあった。

体は「カワハギ」のように平べったく、全身は厚い皮と硬く細かなウロコで覆われている。体色は背側は灰色っぽく、腹側は銀色をしている。第1背びれの第1棘(きょく)が非常に太く長くなっており、また第1背びれの根元周辺は黒く染まる。胸びれ、第2背びれ、尻びれ、尾びれは黄色~くすんだオレンジ色をしている。

腹ビレの両側にはギマの最大の特徴である、太く・長く・鋭いトゲが左右に1本ずつ伸びる(トゲを触るとザラザラと引っかかる感触をしている)。ギマはこのトゲが支えとなるため、陸上で魚体を”立たせる”ことができる(立たされたギマはたまったもんじゃないが)。ギマを釣った釣り人の98%はこの行動をしている(はず)。また釣り上げられると体から大量の粘液を出すので、漁師や一部の釣り人からは嫌われており、「ペペ」や「○ーション」など不名誉なアダ名まで付けられている。

食性は雑食性。浦安で釣れるギマの消化管内容物を見てみると、細かく砕かれた薄い貝殻の破片と黒いドロドロしたものが消化管にパンパンに詰まっていることが多い。産卵期は6~7月頃。

ちなみに「ギマ」という名前の由来だが、『旬の食材百科 FoodsLink フーズリンク』の解説を引用させてもらうと、『いくつかの説があり、綿糸・綿布などを加工し、麻に似た風合いをもたせたものを「擬麻」というが、この魚のザラっとした肌がこの生地のようだからという説、銀色の体で、馬のような顔つきであることから「銀馬(ぎんま)」と呼ばれるようになり、それが訛ってギマとなったという説などがある。』だそうだ。

(2020年7月)

なんと形容してよいのか…ヘンテコな見た目だ
まるで馬のような眼と顔をしている。わずかに見える白目が不気味さを感じさせる
体は厚い皮と細かく硬いウロコに覆われており、光を当てると銀色に輝く
第1背びれの第1棘(きょく)が太く長い。また背びれの根元周辺は黒くなっている
腹びれの両側にはギマの最大の特徴である、太く・長く・鋭いトゲが左右に1本ずつ伸びる(トゲは触るとザラザラと引っかかる感触)
尻びれは鮮やかな黄色
腹にある2本のトゲのおかげで、陸上で魚体を立たせることができる(立たされたギマはたまったもんじゃないが)。ギマを釣った釣り人の98%はこの行動をしている(はず)
正面から見ると不思議と可愛さを感じる(私は)

採集する

(写真:2020年6月下旬採集。投げ釣りで捕獲したギマ。釣り上げられると体から大量の粘液を出す)

中~大型のギマは高洲や日の出の海岸で、「シロギス」狙いの投げ釣りをしていると外道としてよく釣れる。季節は梅雨~夏がベスト。口が細い魚なので、小さめの針に、イソメ類などの吸い込み易いエサを使うのが良いと思う。ただ気を付けないと針を飲み込んで、ハリスを噛み切っていってしまうこともある。また見た目以上に泳ぐ力が強いので、細い仕掛けだと糸を切られてしまうこともあるので注意。ちなみに私はゴールドのブレードが付いたメタルジグ(ルアーの一種)で釣ったこともある(光るものが好きなのか?)

釣り上げられると体から大量の粘液を出すので、漁師や一部の釣り人からは嫌われている(美味しい魚なのに…)。そのため「ペペ」や「○ーション」など不名誉なアダ名まで付けられている。

全長1~数cmの小さな稚魚・幼魚なら泳ぎもそれほど速くないので、タモ網で採集することが可能。季節は成魚と同様梅雨~夏で、三番瀬や河口の浅瀬をよく観察していると、数匹の群れになったギマの稚魚の姿を見ることができる。

飼育する

(写真:2020年6月下旬採集。「ギマの稚魚」。全長約1cm。興奮のためか、体の模様が黒色に変化している)

ギマの成魚を飼育したことはないが、現在(2020年7月上旬)自宅水槽で「ギマの稚魚」を飼育中。水槽の環境は比重1.023、水温25℃前後。今のところこれで問題はないようだ。水槽へ連れてきた当時は、興奮のためか体の模様が黒くなっていたが、しばらくすると下の写真のような肌色の体色に落ち着いた。

エサは現時点では生きたブラインシュリンプしか食べない。だが腹がパンパンに膨れるまで食べてくれるので、エサをあげる方も気持ちが良い。ちなみに写真のようなサイズのギマ稚魚のトゲは未発達で、触ると柔らかい。

ギマの稚魚。全長約1cm。水槽に入れてしばらく経つとこのような肌色の体色に落ち着いた
ギマの稚魚。全長約1.5cm。水槽に入れて数日で一回り大きくなった。稚魚の成長スピードは早い

食べる

(写真:2020年6月下旬撮影。ギマの刺身と肝。夕方に釣ったものをその日の夜に刺身にした)

市場価値も低く、スーパーに並ぶような魚ではないため、釣り人以外に食べたことがある人は少ないかもしれない。その奇妙な見た目とは裏腹になかなか味の良い魚。煮付けや塩焼きが定番のようだが、今回は刺身にしてみた。

まずギマを釣ったら、活け締めと血抜きをしかっりと行う(ギマは血の量がかなり多い)。そうしたら粘液が付いたままでいいのでクーラーボックスに入れてしっかりと冷やす(この時にトゲをハサミで切り取ってしまって、袋に入れれば他の魚に被害が及ばないかも)。

家に持ち帰ったら、トゲを根元からキッチンバサミで切り取って魚全体を水でよく洗う。そして尾びれの付け根あたりに切れ目を入れ、そこから皮を粘液ごと一気にはがす。頭のあたりまで皮をはがしたら、頭と体を切り離し、そのまま内蔵ごと引きちぎる(この時肝を潰さないように気をつけよう)。そうしたら、身と腹の中の血合いを水で洗い流し、水分をよく拭き取ってから三枚におろす。刺身にする際は皮目が少し硬いので、包丁で切り目を入れたり、少し炙っても良いかもしれない。

肝心の味だが、身はコリコリとして歯ごたえが非常に良い。甘みは少ないが、噛むと口の奥の方から旨味湧いてくる。味自体は「カワハギ」などと比べるとさっぱりとしており、わずかに青臭さ、血なまぐささがあるが、刺身としては十分合格点だと思う。今回は釣ってすぐに食べてしまったが、次回は1日ほど寝かしてから食べてみたい(後日、1日寝かしてみたが、身の弾力が減り思ったほどの旨みは出なかった。やり方が悪かったのだろうか?)。

そして肝の方だが、新鮮なものは歯ごたえが良く、甘みは少ないが旨味がとても強い。人にもよると思うが、私は旨味とえぐみの境界線を行くような味だと感じた。しかしこのクセが、さっぱりとした刺身にとても合う。刺身に肝を乗せて一緒に食べると非常に美味い。

(追記:2020年7月22日)刺身以外の食べ方も試してみた。まずは一夜干し。皮と頭、内蔵を取り除き、粘液と血をしっかり洗い流す。そうしたらキッチンペーパーなどで水気をとり、身の両面に塩をまんべんなく振りかける(20cmぐらい上から振りかけると上手くいく。塩の量はそんなに多くなくていい)。そうしたら皿の上に網を敷いて(割り箸などでもOK)冷蔵庫へ30分ほど入れて身から水分を出す。その後、表面の水分と塩をさっと水道水で洗い流し、しっかりと水気を拭き取って一晩干す。ギマの釣れる時期は気温が高く、外で干すと腐るかもしれないので「冷蔵庫干し」がオススメ。表面の乾いてベタつきがなくなれば完成だ。

肝心の味だが、まず身がプリプリと弾力があり、噛むとちょうどいい塩梅で合わさったギマのエキスと塩味が溢れ、なかなかイケる。消極的な言い方だが、旨みの薄いフグの一夜干しといった感じ。おかずというよりは酒のあてに良いかもしれない。身離れも良く骨も少ないので、かぶりついて食べビールを飲むと幸せな気持ちになる。生姜醤油を付けて食べてもみたがこれは非常に美味かった。調味料で化けるかもしれない。

そして次は、ぶつ切りにした卵と肝を入れた味噌汁。夕食時、味噌汁が出来上がる寸前に、ギマの卵と肝が余っていたのを思い出したので、適当に切ってぶち込んでみた(ちなみにに肝は事前に酒でさっと洗ってある)。弱火で1~2分ぐらい火を通す。結果だが卵は正直いって味の主張がほとんどなく食感を楽しむだけのものだった。しかし肝は火を通すことで滅茶苦茶美味くなった。生で食べたときのえぐみが消え、旨みとコクが数段アップしている。クリーミーで舌触りも良い。これは良い発見をした。

ギマも肝をぶつ切りにした。新鮮なものは歯ごたえが良く、旨味がとても強い
ギマの一夜干し。酒の肴にちょうどいい
ギマの一夜干し。身は弾力がありプリプリとしていて、身離れも良い。かぶりついてビールで流し込むと最高
ギマの肝と卵入り味噌汁。卵は味があまりしないが、肝は火を通すことでえぐみが消え、旨みとコクが数段アップして美味