ジンドウイカ(ヒイカ)の卵嚢?

特徴

(写真:2023年6月中旬、三番瀬で採集。卵嚢1本の長さ約6~7cm。この卵嚢が40本ほどがまとまって砂上に直接産み付けられていたそうだ。目盛りは5mm)

レア度:? 軟体動物門 頭足綱 ツツイカ目 学名:? 英名:? よく見られる季節:?

(同定に自信がありません。間違っている可能性があります。他の資料も参照してください)

イカ類の卵嚢である可能性は高いが、「ジンドウイカ」の卵嚢であるかは不明。形態は「ジンドウイカ」の卵嚢によく似ているのだが、卵嚢内の卵数がかなり少ない(後述)。

2023年6月中旬のある日、ふと「浦安市三番瀬環境観察館」を訪れると、何やら生物採集が行われた気配が…。建物の2階に上がると、ビンゴ!! 本日採集されたと思われる生物が入った大きな桶を発見。

何が採れたのかな~と桶の中を観察していると、スタッフさんが「あぁ、管理人さん!今日これも採れたんですけど、イカの卵ですかね?」と写真のブツを持って現れた。

私も初めて見る卵嚢だったが、見た目から頭足類(タコ・イカ類)のものだろうというのはすぐに分かった。そこからこの辺りで、出現する可能性のある頭足類の卵嚢を思い浮かべる。

まず、「マダコ」ではない。「コウイカ」、「シリヤケイカ」、「アオリイカ」も違う。「ヒメイカ」もサイズ的にあり得ない。残るは…「ジンドウイカ」か?? ただ私はこの時まだ「ジンドウイカ」の卵嚢を見たことが無かった。

 

まず初めに『日本大百科全書』の『ジンドウイカ』の解説から、「ジンドウイカ」の繁殖についての一文を引用させていただいたので、読んでいただきたい。

『春先に沿岸の海藻や海底に、数十個の卵が入った、寒天質で指状の卵嚢(らんのう)の束を産む。[奥谷喬司]』

 

パッと読むと、「お、たしかに今回採集した卵嚢の特徴と一致するな」と思ってしまうのだが、実は異なる点が1点ある。それは卵嚢内の卵の数だ。『日本大百科全書』の解説では卵嚢内の卵数は『数十個の卵が入った』となっている。

今回採集した卵嚢を見て見ると、1つの卵嚢内に入っている卵の数は多くても15個程度で、数十個とは言えない数である。また他の色々なサイトや報告書などを読んでみても「1回の産卵で約2000個の卵を産む」、「60~70個の卵が入った卵嚢」、「卵嚢内に卵は2列に並ぶ」などと記述されており、今回採集した卵嚢内の卵の数は明らかに少ない。

これは何らかの原因でたまたまこの卵嚢内の卵が少なくなってしまったのか、それとも別の種類のイカのものなのか…答えは出ない。卵の数以外は「ジンドウイカ」の卵嚢に合致する特徴をもっているし、この辺(三番瀬周辺)でこのタイプの卵嚢を産むイカって「ジンドウイカ」以外思いつかないのだけど…。

まぁ分からないものは仕方がない! ちょっと悔しいが「ジンドウイカの卵嚢?」ということにしておこう!

前置きが長くなってしまったので、今回採集した卵嚢の特徴は以下の写真を見ながら書いていこうと思う。

(2023年7月)

(2024年5月)

隔離水槽に入れて真上から撮影した様子。卵嚢の数は約40本ほど。それらがまとまり房状になっている。卵嚢は水中に入れると沈む
卵嚢の根本を持って持ち上げている様子。かなりの重量感がある(50g以上はあるんじゃないか?)
この卵嚢は海底の砂上に産み付けられていたようだが、その秘密がこれ。卵嚢の後端は細いヒモ状になっており、さらにその表面には粘着性があるため、砂にくっつくことができる。またこのヒモ状の部分は伸縮性が非常に高く、また強靭で、ちょっと力を入れたぐらいではちぎれなくなっている
卵嚢を1本取り外してよく見てみる。卵嚢は指状で長さは6~8cmほど。卵嚢の後端には先に書いたヒモ状の部位がある。この卵嚢内の卵数は11個。ネットや文献に書かれている「ジンドウイカ」の卵嚢内の卵数(数十個、60~70個)と比べると明らかに少ない。そのためこの卵嚢が「ジンドウイカ」のものなのかは不明である。目盛りは1cm
卵嚢の先端部を拡大。先端には窪みがあり、砂が付いているのか黒くなっている。目盛りは1cm
卵は1列に並んでおり、形はやや楕円形。直径は2mm前後。目盛りは1cm

卵嚢の後端のヒモ状の部位。非常に伸縮性があり2倍以上の長さに伸びる。また表面には粘着性があり、引っ張ってもなかなかちぎれない。目盛りは1cm

自宅へ持ち帰って2日目の卵
自宅へ持ち帰って8日後の卵。白い部分に変化があるような無いような…。この後1週間ほど観察を続けたが、目立った変化は見られなかった。飼育水や水流など発生が進む条件が整っていなかったのだと思う