イシワケイソギンチャク
特徴
(写真:2020年3月中旬、三番瀬で採集。高さ約5cm、触手を含む直径約6cm)
レア度:★★★★★★☆☆☆☆ 刺胞動物門 花虫綱 イソギンチャク目 ウメボシイソギンチャク科 学名:Gyractis japonica sensu 英名:? よく見られる季節:1年中?
最大で(触手を除いた体長が)10cmほどになる。本州~九州までの干潟など海底が砂の場所に生息しているイソギンチャク。三番瀬や河口付近の砂に埋まった岩と岩の間に、はさまるようにして居るのをときどき目にする。
浦安でよく見られる「タテジマイソギンチャク」と比べ大型で触手も太く、力強い見た目をしていると思う。
体は白色がかった褐色で、触手は半透明や白、薄い茶色をしている。写真の個体の触手には、黒い縦筋が4本と白い斑点模様が見られるが、このような模様が見られない個体も多い(なので私には種類の見分けが難しい)。
どうやら体や触手の色には個体によって様々なパターンがあるようだ。また飼育していると体色が変化することも多い(周りの環境に合わせているのだろうか?)。
ちなみに「触手の数は96本」という情報があったが、これもすべてのイシワケイソギンチャクがそうとは言えない気がする。実際にイシワケイソギンチャクの色違いバージョンと思われる個体の触手を数えてみたが、その時は約86本だったし、もっと少ないものもいる。
もしかしたら、近縁な複数種のイソギンチャクが現在は「イシワケイソギンチャク」として1つにまとめられていて、今後それらの分類が見直されたりするのかもしれない(個人的な推測です)。
実はこのイシワケイソギンチャク食用となるらしいが、今では有明海周辺でしか食べられていないとのこと。また有明地方ではイシワケイソギンチャクを「ワケノシンノス」と呼び、これは「若い者の尻の穴」を意味する(わけのしんのす…わけぇのしりのす…若けぇの尻の巣、というわけだ)。
なんともオカルティックな呼び名だ。たしかに小さく縮んだイシワケイソギンチャクは人間の肛門に見えなくもない。どんな味がするのか非常に気になる。
(2020年4月)
(2024年5月)
採集する
(写真:体を縮めたイシワケイソギンチャク)
砂に埋まった岩と岩の間に、はさまるようにして居ることが多い。体は砂に潜り、砂上に触手と口(口盤)だけを出している。砂にはかなり深く、強固に潜っているので採集するのにはなかなか骨が折れる。
イソギンチャクの体を傷つけないよう、イソギンチャクの周りの砂を指でほじほじしながら、イソギンチャクの底面を引き剥がすようにして採集する。採集した際には、イソギンチャクがくっつくための石や貝殻なども同時に拾っておくといい。
飼育する
(写真:ゴカイ類を丸呑みするイシワケイソギンチャク。かなり色々なものを食べる)
自宅水槽でしばらく飼ってみた。イソギンチャクというと動かないイメージがあるが、このイシワケイソギンチャクは、ベストなポジションを求めて、けっこう頻繁に移動する。
食欲旺盛で、動物質のものならほぼ何でも食べるようだ。今まで食べたエサは、小さなエビ、小魚、ゴカイ類、ヨコエビ類、ヒラムシ類、クリル(乾燥エビ)、粒タイプの配合飼料。
エサが触手に触れると、まるで食虫植物のようにあっという間にエサを包み込み、大きなタラコ唇のような口でジワジワ飲み込んでいく。その様は若干ホラー。エビの殻など硬いものは消化しにくいようで、そのようなものはしばらくすると口から吐き出すことがある。
自宅水槽では攻撃的な大型生物がいないため、そのまま水槽に入れておいても問題はなかった(逆に他の生物の方が危ない)。しかし三番瀬水槽では、「メジナ」や「クロダイ」、ギンポ類などに攻撃を受けて食べられてしまったのか、しばらくすると姿を消してしまうことが多い。
なので現在は小型のエビとカニと一緒に隔離水槽に入れて飼育している。小型のエビ、カニとは相性が良いようで、隔離水槽に入れてから9ヶ月経過することができている(2021年1月現在)。
ただエサが少ないためか、三番瀬水槽に連れてきた当時と比べると、体のサイズが1/3ほどになってしまった。(それでも極端に弱ったりはしていないので、絶食耐性が高いのではと推測している)。
(追記:2023年5月2日)自宅で長期飼育していたイシワケイソギンチャクが、(この辺りでは)大型のヤドカリ「コブヨコバサミ」と同居させたところ、あっというまにに食われてしまった。腹が減っていたから食ったのか、「コブヨコバサミ」が常食しているエサなのか不明だが、頑丈なハサミでブチッ…ブチッ…と細かくちぎりながら食べていた(下の写真)。
その攻撃力?から当時の自宅水槽内では最強を誇っていたイシワケイソギンチャクだが、何とも意外であっけない最期であった。