ホトトギスガイ

特徴

(写真:2022年3月下旬、三番瀬で採集。殻長約2cm。生きた状態で撮影。一見地味だが、緑褐色の貝殻に黒く複雑なシマ模様があり、べっ甲のような趣のある見た目をしていると思う。目盛りは0.5mm)

レア度:★★★☆☆ 軟体動物門 二枚貝綱 イガイ目 イガイ科 学名:Musculista senhousia 英名:? よく見られる季節:?

最大で殻長が3cmほどになる。貝殻の暗褐色のシマ模様が、野鳥の「ホトトギス」の体の模様と似ていることからこの名前が付いたらしい。

私はずっと「ホトトギス」という鳥を「ウグイス」のような黄緑色のカワイイ鳥なんだろうなと思っていたが、今回これを書くにあたり調べてみたら全然違った(笑) 小さな貝だが、よく見ると美しい色と模様をしており、どこか大人な雰囲気がある。

写真のホトトギスガイは、2022年3月下旬の三番瀬で、海底をタモ網で引きずっていたら偶然採れたもの。本種は内湾の浅い場所や干潟、汽水域などに生息していおり、海底の砂の中や転石の下などで見つけることができる。

水の汚染に強い貝としても知られ、養殖用の「マガキ」にくっついたり、船のバラスト水(船の重量や浮力を調節するために船体に汲み上げる水)に混入して、世界の温帯域へ分布を広げている。

ホトトギスガイはたくさんの足糸(そくし)を出して周囲の砂粒をくっつけ、直径3~4cmほどの砂の塊を作り自分の体を埋めることがある。またしばしば大発生し、たくさんのホトトギスガイがお互い足糸を絡ませてカーペット状になることもある。このカーペットのせいで、その下の砂中にいる二枚貝が窒息死してしまうこともあるそうだ。小さくても侮れない貝である。

またその足糸と足をたくみに使い、垂直な壁を上ったりすることができる(下の写真参照)。このような行動は「ミドリイガイ」などにも見られる。

他の二枚貝と同様に水中プランクトンや「デトリタス」を海水と一緒に吸い込んで食べる。産卵期は初夏~秋で特に盛夏に活発になる。

(2023年8月)

反対側の貝殻を撮影。貝殻にくっついている黒い物体は、ホトトギスガイが出した足糸に砂や泥が付着したもの
貝殻を拡大して見てみる。貝殻の形状は「親指部分がとがったサンダルのような形」もしくは幅広の男性の足のような形をしている
横から撮影。横から見ると細長い卵型、紡錘形で、殻頂周辺は膨らむが、後縁は平たくなる
こちらは2019年5月に河口付近で採集した採集。殻長約1.1cm。生きた状態で撮影。このような小さめの個体の方が、貝殻表面が滑らかで、貝殻のシマ模様もよく見える。目盛りは0.5mm

こちらは2022年2月上旬に三番瀬で採集した個体。生きた状態で撮影。殻長約1.4cm。老成個体なのだろうか? 貝殻は厚めでその表面には隆起した太いスジも見られる。目盛りは1cm

このような老成した?ホトトギスガイの貝殻は殻頂の辺り剥げたようになっていることが多く、剥げた部分からは真珠光沢が見える、目盛りは1cm

背面から撮影。よく見ると貝殻の蝶番の部分に(写真中心右寄り)、幼貝ではよく見られたホトトギスガイ独特のシマ模様があるのがわかる
栄養状態が悪かったのだろうか? 何度も「成長→停滞→成長→停滞」を繰り返したかのように、貝殻表面は凸凹している。目盛りは1cm
強めの光を当ててよく見てみると、貝殻の縁辺の方の下地に模様があるのがわかる
中身を取り出し、貝殻の内側を見てみる。内側からだと、ホトトギスガイ独特のシマ模様がよくわかる。目盛りは1cm

飼育する

(写真:砂に体半分だけ潜り、じっとしているホトトギスガイ)

飼育するつもりはなかったのだが、生態観察のため、しばらく自宅水槽に入れてみた。

水槽に入れたばかりのころは、足糸(そくし)と細長い足を使って、水槽のガラス面を登ったり、足で自身に砂粒をまとわりつけたりと、動きも活発だったが(下の写真)、数日が立つと諦めたのか体力がなくなったのか、砂に体半分ほど潜ってほとんど動かなくなった。

その後2週間近く絶食状態だったが、元気に?生存していた(ごめんね)。

水槽の壁面にくっついているホトトギスガイ。足糸(そくし)と細長い足をたくみに使い、垂直な壁を上ったりすることができる。このような行動は同じイガイ科の「ミドリイガイ」「コウロエンカワヒバリガイ」でも見られる
細長い足を使って、砂粒を体にまとわりつけようとしている?ホトトギスガイ