コウロエンカワヒバリガイ
特徴
(写真:2022年3月下旬、浦安市内河川中流域で殻長30mm超えの大型個体を発見。カキ殻に単体でボツボツ付着していた。目盛りは1cm)
レア度:? 軟体動物門 二枚貝綱 イガイ目 イガイ科 学名:Xenostrobus securis 英名:? よく見られる季節:?
写真は2022年3月下旬、浦安市内河川中流域でカキ殻に単体で付着していたのを採集したもの。殻長35mmで、コウロエンカワヒバリガイとしては最大級のものだろう。
コウロエンカワヒバリガイを初めて発見したのは2022年2月下旬。まずその時の様子について書きたい。
「そろそろ春だし何か生物が出現していないかな?」と約1年ぶりぐらいに浦安市内河口付近を訪れたのた。護岸上(この場所は潮間帯で満潮時には水没する)のけっこうな範囲に、小さなイガイ類が高密度で群生しているのを発見(下の写真)。
それを見て最初は「「ムラサキイガイ」か~。今年はやけに大量発生しているな~」とスルーしそうになったのだが、何か違和感を感じたので手に取ってよく見てみると、「ムラサキイガイ」ではないことに気付く。その後、色々調べたり詳しい人に聞いたところ本種がコウロエンカワヒバリガイということが判明。
詳しい人の話によれば、近年東京湾奥に生息するイガイ類の勢力図に変化が起きていて、今までは「ムラサキイガイ」や「ミドリイガイ」などを目にする機会が多かったが、最近はコウロエンカワヒバリガイやその近縁種を目にすることが増えたそうだ。ちなみに私が浦安でコウロエンカワヒバリガイを見たのはこの時が初めてである。
(追記2023年8月20日)初発見の2022年2月から現在まで、個体数の増減はあるものの、コウロエンカワヒバリガイの姿はずっと確認している。
コウロエンカワヒバリガイはインド洋~西太平洋のオーストラリアやニュージーランドが原産の外来種であり、1972年に岡山県児島湾で初めて発見されたそうだ。寿命は約1年で水の汚れや塩分の変化に強く、他のイガイ類と同様、水中の懸濁物をろ過して食べる。
汚染された内湾や河口域の転石やコンクリート護岸に多く付着し、水路の流れを阻害したり、船底に付着するなどの被害を出す。そのため「特定外来生物」と「日本の侵略的外来種ワースト100」に選出されている。
以下に『国立環境研究所 侵入生物データベース』より『コウロエンカワヒバリガイ』の貝殻の形態についての解説を引用させていただく。
『殻長3cm程度の二枚貝。成貝では赤みがかった黒褐色、幼貝では黄褐色-赤褐色の斑、黒の稲妻型の模様。カワヒバリガイに似るが、殻色・殻頂・殻内面の筋痕の形状などで識別可能。』
私が2022年2月下旬に採集した殻長約12mmの個体(下の写真)は、貝殻は赤みがかった黒褐色で、殻頂付近と縁辺部は黄土色っぽく、殻頂には黒い稲妻型のような模様が見られ、成貝と幼貝の特徴を持っている。
貝殻の形状は上からみると「幅広の男の人の足」のような形、もしくはサンダル「クロックス」のよう。貝殻を横から見ると、ぷっくりと膨らんだ紡錘形で、殻長の4割ほどの厚みがある。
貝殻の表面は触るとツルツルとした感触があるが、拡大してよく見てみると、成長線と思われる筋が多数ある。貝殻の裏側は、殻頂付近と縁辺部が白い真珠層に覆われており、その内側は濃い紫色をしていた。
また2022年3月下旬に採集した殻長約35mmの大型個体は、形態は前述した小型個体と似ているが、貝殻は全体が黒く、色が剥げた部分からは銀色の真珠層が顔を覗かせていた。また貝殻表面の成長線が顕著なものとなり、触るとザラザラとした質感。
(2023年8月)
採集する
(写真:河口の護岸上に高密度で群生するコウロエンカワヒバリガイ。これだけ集まるとちょっと気持ち悪い)
※本種は「特定外来生物」に指定されているため、持ち帰ったり飼育することは禁止されています
まだ一度しか発見したことがないので、浦安のどのような場所に多いかは分からないが、「日本の侵略的外来種ワースト100」に選ばれるぐらいタフな生物なので、きっと色んな所に生息しているのだろう。河口付近や海に近い水路的なところを探すと良いのかもしれない。
見つけさえすれば採集は容易だろう。ただ足糸(そくし)が強靭で、かなりしっかりと基質に付着しているので、引きはがすのには力がいる。その割に貝殻は脆いので、うっかり指で潰さないよう注意したい。スクレーパーなどで、基質ごとこそぎ取ってしまうのが良いかもしれない。
(追記:2022年3月29日)境川中流付近で殻長30mm超えの大型個体が、カキ殻に付着しているのを発見(ちなみにこの時の海水比重は1.019)。河口付近では小型個体が写真のように群生していたが、この場所では単体でカキ殻に付着しているものが多かった。うーんつい最近までは見なかった気がするけど…(見逃していただけ?)。着々と生息域を拡大しているようである。