ホソヤツメタ?

特徴

(写真:2022年10月下旬、三番瀬で採集。貝殻の直径約2.5cm。パッと見は「ツメタガイ」に酷似している。見分けには貝殻の底面の中心の臍孔(さいこう)をあたりを見るのだが…私もあまり自身はない)

レア度:? 軟体動物門 腹足綱 吸腔目 タマガイ科 学名:Glossaulax didyma hosoyai 英名:? よく見られる季節:?

(同定に自信がありません。他の資料も参照してください。間違っていたら教えていただけると嬉しいです)

2022年の秋頃だったか…。いつもお世話になっている「浦安市三番瀬環境観察館」のスタッフさんが、「ツメタガイ」と思われる貝を手に取りそれをまじまじと見つめている。ちなみに「ツメタガイ」とは「アサリ」などの貝類を捕食する貝食性の巻貝で三番瀬浦安側にも多数生息しており、変わった形の卵塊を作ることでも有名である。

スタッフさんに「どうしたんですか?」と尋ねると、「これツメタじゃないっぽいですねぇ…」と驚きの発言。素人の私にはスタッフさんが手に持っているのは「ツメタガイ」にしか見えない。

話によれば、「ツメタガイ」によく似たホソヤツメタという種がおり、スタッフさんが手にしている個体にはその特徴が見られるらしい。

大きな違いは、ホソヤツメタの方が貝殻の底面の臍盤(さいばん)が大きく、臍孔(さいこう)を塞ぐようなかたちとなっている(下の写真参照)。ただこの特徴も結構個体差があるようで、ネット上のホソヤツメタの画像を拝見すると、臍孔が完全に塞がれているものもあれば、窪みがある程度残っているものもある。

また軟体部や蓋も一応「ツメタガイ」と比較してみたが、私の目ではこれといった違いは見つけることができなかった(下の写真参照)。

一応、2か月ほど水槽に入れて飼育?してみたが「ツメタガイ」と同じく砂に潜っていることが多くあまりパッとしない(大事に飼っていた「ホソウミニナ」くんたちを捕食してはくれたが…)。

最終的には標本を作るために、水のみで茹でて食べてみたが、味も「ツメタガイ」とほぼ変わらない。

おそらく9年間の生物採集のなかで、かなりの数のホソヤツメタを「はい、ツメタガイね!(ポイッ)」としていたに違いない。存在を知らなければ幸せ(平和)でいられたのに…。貝類、知れば知るほど恐ろしい(いろんな意味で)ヤツらである。

(2023年6月)

貝殻の底面を見てみる。たしかに「ツメタガイ」に比べて、臍盤(さいばん)が大きく、臍孔(さいこう)は塞がれている。目盛りは5mm
別角度から。うん、窪みは少しあるけど塞がっている。「ツメタガイ」の場合は、影ができるぐらいもっとしっかり窪んでいる(へその部分に穴が開いている)。目盛りは5mm
サイドから撮影。目盛りは5mm
反対側から。目盛りは5mm

軟体部を貝殻の外に出して移動している様子。「ツメタガイ」と比べるとやや灰黒色が強いか? そして触角が長めにも感じるが…? いや、個体差もあるのでこれは信用ならないな

反対側から

真上から。「ツメタガイ」だと、身(外套膜)が貝殻の5~8割ぐらいを覆うイメージがある。しかしこれも個体差や貝の状態により変化するのでアテにはならんか

軟体部の底面は肌色で「ツメタガイ」とほぼ同じ

採集する

(写真:これは「ツメタガイ」が砂の中を進む様子。※ホソヤツメタではありません)

狙って採集したことがないので何とも言えないが、写真(これは「ツメタガイ」)のように砂に浅くもぐっていたり、海底にドンといるので、それを手で掴む(潮干狩りの要領で砂を掘っても見つかる)。

きちんと数を数えたワケではないので、眉唾程度に聞いて欲しいのだが、2022年は「ツメタガイ」と思って採集したものの中に「これホソヤじゃね?」と思われる個体がけっこう混じっていた印象がある。もしかすると三番瀬浦安側には意外とたくさんいるのかもしれない(想像です)。

2023年7月上旬撮影。何故かたまたま三番瀬の護岸の上にツメタガイ類の貝殻が大量に転がっていたので、ざっくり「ツメタガイ」とホソヤツメタで分けてみた。結果は「ツメタガイ」:15個、ツメタ?ホソヤ?:3個、ホソヤツメタ?:4個。…まぁ何のアテにもならんのだが(笑)

飼育する

(写真:ケースから脱走を試みるホソヤツメタ? ずっしりとした体とは裏腹に、動きはなかなか素早い)

飼育…というか、後で貝殻標本にしようと思って、砂の敷いてある自宅水槽5号に入れたのだが、気が付けば2か月程度ほったらかしにしてしまっていた。

自宅水槽5号は底砂の厚さが2~3cmしかないのだが、それでも特に問題はないらしく、水槽に入れるとすぐに砂に潜って姿を消してしまった。そのため「水槽に入れた」とは言っても、生態の観察などはできていないのが現状。

ちなみに水温は20~16℃程度では問題なし。比重は1.023。同居人はスジエビ類、小型のヤドカリ、「アラムシロ」「ホソウミニナ」。また特にホソヤツメタ用のエサやりはしていない。

そして月日は流れ、ホソヤツメタの存在も忘れかけていたある日、「そういえば最近、「ホソウミニナ」が砂の外に出てきてないな…」とふと思う。

底砂をピンセットで突いて、「ホソウミニナ」を探す。硬い感触。発見!! 急いで殻口を確認する。

「うわ~食われてるよ…」

「ホソウミニナ」は防御力高そうだし、結構移動もするから大丈夫だろうと高を括っていたが、ホソヤツメタに食われていた。まぁそりゃ食うわな。

ホソヤツメタのサイズも小さいし、水槽に入れてから1ヵ月ぐらいは悪さをする様子がなかったので、大丈夫だろう油断していた。

そういえばある時から、いつもは砂中にいる同居人の「アラムシロ」(こいつも巻貝)が砂から出て人工水草に登るようして集まっていたのは、ホソヤツメタから逃げていたのかもしれない(「アラムシロ」は移動スピードが速いので逃げられたのかも)。

先述の「ホソウミニナ」の貝殻にはホソヤツメタが開けた、直径1mmほどのキレイなすり鉢状の穴があった。しかしいつ見ても見事な穴の開けっぷりである(下の写真参照)。

その後、このホソヤツメタは茹でて食べ、「ホソウミニナ」の貝殻ともども標本となってもらった。

ホソヤツメタ?が「ホソウミニナ」の貝殻に開けた穴。直径1mmほどでキレイなすり鉢状をしている
穴を拡大して見てみる。美しい。職人技だ

食べる

(写真:水だけで茹でて、中身を取り出したホソヤツメタ?の貝殻、身、蓋)

貝殻標本にするため、いつものように水だけで10分ほど念入りに茹でて、味を確かめてみる。

身(足部分)の味はとても薄い「サザエ」。旨味風味弱いが不味くはない。身(足部分)と内臓の境目にあたりにピリッとした苦みが少しある。

内臓は意外にも苦み・エグみはほぼない。適度な塩気とコクがありなかなか美味いと感じた。

取り出した身と内臓
茹でて身を取り出した後の貝殻
蓋。べっ甲のようで美しい