ホソウミニナ

特徴

(写真:2023年9月上旬、浦安市内河川中流域で採集。貝殻の長さ約3cm。貝殻は灰色や黒褐色をしているが、貝殻の巻きの継ぎ目に白い帯模様がある個体も多い)

レア度:★★☆☆☆ 軟体動物門 腹足綱 吸腔目 ウミニナ科 学名:Batillaria cumingii 英名:? よく見られる季節:1年中?

最大で貝殻の長さが3.5cm、幅が1cmほどになるそうだ。写真のホソウミニナは2023年9月上旬に浦安市内河川の中流域で採集。この場所は河口から3kmほど上流の地点で、川底は貝殻混じりの泥底、水深も満潮時でも2mもない。さらにすぐ上流には水門があるので流れもほとんどない。

そのため水の交換が緩慢で、夏季は水温がかなり上がる(手を浸けると暖かいと感じるほど)。また塩分濃度は海水に近い時もあれば汽水になることもある。…まぁなんというか、かなりタフな環境ということだ。そんなこの場所には大量のホソウミニナが生息している(死んだ貝殻の数も半端じゃないが)。

特の大潮の干潮時に訪れると、川幅の半分ほどまで海底が露わになり、その水際に数千…いや数万匹?レベルのホソウミニナが出現する。ただこのページを書いている今日(2023年9月5日)、あることに気が付いた。

「あの場所にいるの、本当に全部ホソウミニナかなぁ…?」

3年ぐらい前に訪れたときは、確かに典型的なホソウミニナの貝殻をしたホソウミニナが大量にいた。だが今日(2023年9月5日)に採集に行くと、典型的な貝殻をしたホソウミニナもいるけど、貝殻がちょっと違うホソウミニナ?もかなりの数がいた(具体的には貝殻の形は細くてホソウミニナっぽいけど、殻口上下の滑層溜が微妙に発達している)。

実は最近、このHPの貝類のページを全てを見直し修正している。その過程で貝類の奥深さに驚嘆しつつ、自分の未熟さを恥じているのだが……正直「ちょっともう貝は勘弁してください」状態になっている(笑) なので先に書いた「ホソウミニナ?」の件は保留にさせてください…。

 

さて、『Wikipedia』によると、『ホソウミニナ』は『成貝は殻高25-35mm、殻径10mmほどの塔型で、厚質で堅い。螺層は8階ほどで、体層(巻きの一番底)を除けば膨らみはわずかで円錐形に近い。

貝殻の色は灰色や黒褐色で、縫合(巻きの繋ぎ目)に沿って白い帯模様が入る個体も多い。螺肋(巻きに沿った隆起線)は7本で、不規則に区切られた煉瓦積みのような細かい彫刻がある。縦肋(巻きに対して垂直に交わる隆起線)はそれほど強くないが、個体によっては強く発現し殻表がゴツゴツした印象になることがある。

殻口は小さく、円形を呈する。蓋は円形で濃褐色のキチン質、多旋型で核は中央にある。

同属のウミニナやイボウミニナに似るが、小型であること・和名通り細長いこと・彫刻のきめが細かいこと・殻口が殻に比して小さく円形をしていること・殻口上部に滑層瘤(かっそうりゅう:陶器のような質感の白い三角形部分)がないことで区別できる』だそうです…。

飼育観察してみて気付いたことだが、ホソウミニナを含むウミニナ類は、浦安で見かける巻貝の中では動きが独特で、まず体(足)を前方に少し伸ばし、そのあと体(足)の後方を縮めて、貝殻を前に引っ張るという移動方法をとる。「アラムシロ」みたいにスーッとは動かない。このような移動をするので、海底に線状の移動した跡が残り易い。

(2023年8月)

『成貝は殻高25-35mm、殻径10mmほどの塔型で、厚質で堅い。螺層は8階ほどで、体層(巻きの一番底)を除けば膨らみはわずかで円錐形に近い』とのこと
『螺肋(巻きに沿った隆起線)は7本で、不規則に区切られた煉瓦積みのような細かい彫刻がある』とのこと。目盛りは5mm
目盛りは5mm
『殻口は小さく、円形を呈する。蓋は円形で濃褐色のキチン質、多旋型で核は中央にある』。「ウミニナ」との見分けポイントの1つとしてホソウミニナは『殻口上部に滑層瘤(かっそうりゅう:陶器のような質感の白い三角形部分)がないことで区別できる』とのこと
『縦肋(巻きに対して垂直に交わる隆起線)はそれほど強くないが、個体によっては強く発現し殻表がゴツゴツした印象になることがある』とのこと
貝殻の上半分を拡大。先端は鋭く尖るが、先端が欠けている個体も多い
軟体部を見てみる。頭部には2本の触角があり、触角には黒い斑模様が見られる。触角の付け根の辺りに小さな黒い眼がある。また体(足)は薄いねずみ色の地に灰黒色の斑模様が密に入る
こちらは別の個体。足の底面は薄い灰色一色。またこの個体の貝殻には縫合(巻きの繋ぎ目)に沿って白い帯模様が入っている

飼育する

(写真:砂に潜ろうとするホソウミニナ。ホソウミニナの貝殻の付着物を「ユビナガホンヤドカリ」が食べている。スジエビ類や「ユビナガホンヤドカリ」はこういう付着物が大好物なのだ)

砂が必要だろうということで、サンゴ砂(細目)が敷いてある自宅水槽5号で飼うことにした。水温は20~28℃までは問題なし。比重は1.023。

同居人はスジエビ類、小型のヤドカリ、「アラムシロ」。ホソウミニナの貝殻は防御力が高そうなので、このメンツで問題ないだろうと飼育を開始した。

水槽に入れた当初は、水槽の壁面に張り付いたり、蓋に逆さになって張りついたりとややアクティブだったが、しばらく経つと1日のうちのほとんどを砂に潜って過ごすようになった。うーん観察し甲斐がない。

エサは藻類やデトリタスなど、海底に溜まった雑多なものを食べそうだったので、他の生物用に与えていた顆粒状の配合飼料(おとひめ)やフレークタイプのエサを、食べ残しがほんの少し残るように、多めに与えてやった。それで3ヵ月以上生存しているので、OKということなのだろう。

そのまま飼育開始から3ヵ月以上経過したのだが、貝殻に私が見てわかるような変化はない(ちょびっと殻高が伸びたかな?)。いつまで飼育すればいいんだろうな~なんて考えていた2022年末、ある異変に気付く。

「そういえば最近、ホソウミニナが砂の外に出てきてないな…」

底砂をピンセットで突いて、ホソウミニナを探す。硬い感触。発見!! 急いで殻口を確認する。

「うわ~食われてるよ…」

実は2022年11月の終わりに、貝殻の直径2.5cmほどの「ホソヤツメタ」という巻貝を同じ水槽に入れており、そいつに食われたのだ。この「ホソヤツメタ」、「ツメタ」という名前から分かる通り、他の貝類を襲って食べる、貝食性の巻貝である。

「ホソヤツメタ」のサイズも小さいし、水槽に入れてから1ヵ月ぐらいは悪さをする様子がなかったので、大丈夫だろう油断していた。そういえばある時から、いつもは砂中にいる同居人の「アラムシロ」(こいつも巻貝)が砂から出て人工水草に登るようして集まっていたのは、「ホソヤツメタ」から逃げていたのかもしれない(「アラムシロ」は移動スピードが速いので逃げられたのかも)。

ホソウミニナの貝殻には「ホソヤツメタ」が開けた、直径1mmほどのキレイなすり鉢状の穴があった。がっくりである。

その後「ホソヤツメタ」は茹でて食べ、ホソウミニナの貝殻ともども標本となってもらった。

食べる

貝殻標本を作製していた際に、身がキレイに貝殻から抜けたので、「せっかくだし…」ということで食べてみることにした。

水だけで10分間ほど茹でて、身(足)の部分だけを食べてみる。もちろん内臓は食べない。採集場所の水質が悪いのと暑い季節だったからね(貝はアタると怖いよ~)

うん、普通にイケる。味はよくある「サザエ」系の味だが、もちろん「サザエ」ほどの味の濃さや磯ぽっさはない。はっきり言って味が薄い(茹ですぎたせいもあるかもしれないが…)。ただ逆にクセや泥臭さもほぼなかったので、「食べれる貝」ではあると思う(自己責任で食べてね~)。

たくさんいるので採集は楽だが、身が小さいうえ、やや取り出しにくいので、積極的に採って食べようとは思わないかな…。