ボラの幼魚

特徴

(写真:2019年4月中旬採集。全長約3cm。「ボラ」の幼魚。目盛りは1cm)

レア度:★☆☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 ボラ目 ボラ科 ボラ属 学名:Mugil cephalus 英名:Flathead gray mullet 良く見られる季節:5月~夏

浦安では毎年3月頃から岸近くの浅瀬に、全長3cmほどの「ボラ」の幼魚の小規模な群れが現れ始める。キラキラと美しいその姿を見ると、「あぁ、春が来たんだなぁ」とほっこりした気持ちになる。その後、気温水温の上昇ととも群れの規模は大きくなり、初夏~夏にかけては何百何千匹単位の群れを、浦安のいたるところでしばしば見かける。5年間ほどざっくりと観察してみたが、出現のタイミングとは年によって若干変わる感じだ。

このボラの幼魚は様々な魚類や海鳥にとって重要なエサ生物となっているようで、実際に「スズキ」「ダツ」がボラの幼魚の群れを追いかけまわしているシーンを何度も目撃した。

「ボラ」は成長によって名前が変わる出世魚で、関東では「オボコ」→「イナ(イナッコ)」→「スバシリ」→「イナ」→「ボラ」→「トド」と呼ばれる。また写真のような全長5cmぐらいまでの特に小さなものを、「ハク」もしくは「イナッコ」と呼ぶことも多い。

(2021年5月)

上の写真拡大し、コントラストを上げてみた
2019年4月中旬採集。全長約3cm。目盛りは1cm
2022年3月下旬に三番瀬で採集した個体。全長約3.5cm
顔を拡大してみる

採集する

(写真:2019年4月中旬採集。全長約3cm。こちらは夜間に採集した個体。目盛りは1cm)

全長4cmぐらいまでの「ボラ」の幼魚なら、タモ網ですくうのはそんなに難しくはない。ただ小さいと言えども結構すばしっこいので、採集にはちょっとしたコツがいる。

そのコツだが、タモ網を構えたら水鳥になったつもりで体の動きを止め、ボラの幼魚の群れが油断して近づいてきたところを、一気に上からタモ網を被せる。また人影に敏感に反応するので、タモ網や腕を広げてわざと影を作り、幼魚の群れを逃げ場のないところまで誘導してから捕獲するという手もある(もっといい採集方法があれば教えてください)。

あとこの時期は夜になると、波当たりが穏やかな場所にボラの幼魚の群れがじっと留まっていることがあるので、魚を驚かさないようにサッとライトで位置を確認して忍び寄り、タモ網で採集するという方法もある。

使うタモ網は安物だと採集時の衝撃でタモ網が折れたり曲がったりしてしまうので、柄が太くフレームのしっかりとしたものを使うと良い(私はここのタモ網を使っています)。それと私は使うことができないが、投網を使うとものすごい数が獲れると思う(地域によっては一般人の投網の使用が禁止されている場合があるので注意)

小さなボラの幼魚は外傷やショックに弱く、採集時に体に傷を負ったものはかなりの確率でその後死んでしまうそうだ。飼育を前提とするなら、できる限り優しく採集し、さらに傷ついていない元気そうな個体を選んで、水から出さず手でも触れずに扱う必要がある。

飼育する

(写真:2017年4月撮影。「ボラ」幼魚の群れ。稼働したばかりの市役所水槽にて。群れで中層を漂う姿は非常に美しい)

性格も温厚で、中~上層を泳ぐので水槽映えし、さらにコケや水面の油膜などを食べてくれるので、個人的には是非飼いたい魚だ。ただボラの幼魚を飼うにはいくつか注意点がある。

小さなボラの幼魚は非常に痩せやすく、1日に複数回エサをあげないとあっという間に痩せて死んでしまう(水槽内にボラのエサとなる藻類やプランクトン、デトリタス等が常にある場合は別だが)。1日1回満腹まで食わしてやれば痩せて死ぬことはある程度防げるが、成長がすごく遅い。

まだ生物飼育の知識が乏しかった頃、写真のように市役所水槽に全長3cmほどのボラの幼魚を数十匹入れてしまったことがあった。初めのうちは「キレイ!!」と大好評だったが、エサやりを毎日できなかったため、あっという間に水槽内が死体だらけに。あの時のボラの幼魚たちに非常に悪いことをした…深く反省している。このような経験から現在は小さなボラの幼魚の飼育はしないようにしている(ごく稀に期間限定や他の生物のエサとして少数入れることはある)。

ちなみに餌付きは良く、採集した翌日には配合飼料を食べてくれることがほとんどだった。エサはフレークタイプや粒タイプの配合飼料をすり潰して細かくし、水面に浮かせてやると魚たちも食べやすそうだった。

ボラの幼魚を飼育している知人によれば、10cmぐらいまで成長したボラであればエサ不足への耐性もあり、丈夫で飼いやすそうなので、いつか飼育してみたいと思っている(ただそのサイズになると泳ぎが速く、タモ網で捕まえるのが非常に難しい)。