トサカギンポ

特徴

(写真:2017年7月採集。全長約6cm。カキ殻や石に開いた穴などに隠れるのが好きなようだ)

レア度:★★★☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 イソギンポ科 ナベカ属 学名:Omobranchus fasciolatoceps​ 英名:Tophat blenny よく見られる季節:5~9月?

9cmほどまで成長する。頭の大きな出っ張り(皮弁(ひべん)という)が鳥のトサカ(鶏冠)のように見えることから、「トサカギンポ」の名前がついた。このトサカに加えて、頭部が黒と黄色のストライプ模様になっており、水中でもよく目立つ魚だ。また体にはウロコがなく、ヌルヌルといている。

浦安では海に面した場所より河川の中~下流域などでよく見かける(そこはほぼ海水)。垂直護岸にカキの貝殻がびっしり付いた場所(通称「カキ殻マンション」)に好んで生息しており、そのような場所を注意深く観察していると、ヒョロロロ~と岸壁際を泳ぐ本種を見つけることができる。護岸に付いたカキのかたまりを取るとその中から見つかることも多い。

食性は肉食性で、小型の甲殻類や小さなゴカイ類を食べるそうだ。口が小さい魚なのでエサも小さいと思う。ちなみに上下のアゴに鋭いキバが2本ずつあり、噛まれると地味に痛い。

産卵期は初夏~夏頃で、カキの貝殻の中などに卵を産み付け、オスが卵を保護する。

個人的にトサカギンポは「イダテンギンポ」と並んで浦安最強タフ魚だと思っている。というのもある年の夏、河川の中流域まで真っ赤になるほどの大規模な赤潮が発生した。護岸上には逃げ場を失った「マハゼ」「マゴチ」の死体がゴロゴロ。もちろんその中にトサカギンポもいた。護岸上は完全に干上がり、魚の表面は乾燥して、誰が見ても死体だろうという風だったので、せめて海に返してやろうと手に取ると、トサカギンポの魚体がかすかに動いたのだ。もしや!!と思い、バケツにくんだ海水の中に入れてやると、乾燥わかめよろしく復活し元気に泳ぎ始めた。

周囲にはそのようなトサカギンポがたくさんおり、飼育用に10匹ほど確保した後、護岸上の魚たちを片っ端から水に戻した。あのトサカギンポたちは、また潮が満ちるまであのまま耐えるつもりだったのか。もしかしたら「イダテンギンポ」やトサカギンポは緊急事態のときに生存するための特殊な機能を持っていたりするのかもしれない(クマムシみたいな)。

(2020年1月)

2019年7月上旬撮影。三番瀬の岸近くにエサと水中カメラを設置したところ、どこからともなくトサカギンポがヒョロヒョロ~と泳いできた。周囲には隠れ家となるような構造物はなかったが、意外と長距離を移動するのかもしれない

採集する

(写真:2018年6月下旬撮影。水槽で飼育しているとシマ模様や体の色が薄くなってくること多い。水槽の底砂が白くてライトが明るいからか?)

カキの貝殻が密集している場所(カキ殻マンション)に多く生息している。危険を察知するとすぐ貝殻の中へ隠れてしまうので、タモ網で捕まえるのはなかなか難しい。カキ殻マンションから離れて、水中を泳いでいる時を狙って採集する必要がある。幸い警戒心はあまり高くないようなので、一度逃げられてもチャンスはまたある。エサでおびき寄せてから網ですくうと良いかもしれない。

一番効率が良いのは、岸壁に付いたカキの貝殻を片っ端からかき落として、その中から探すことかもしれない。でもこれはちょっとやりすぎだと思うのであまりオススメはしない。またタナゴ針など極小の釣り針を使った釣りでも採集できると思う。口が小さいのでエサも極小にする。あとはペットボトルトラップ(びんどう)も有効だと思う。

飼育する

先に書いた通り、最強にタフで配合飼料にもすぐ慣れるので飼育は簡単。カキの貝殻や石に開いた穴に隠れるのが好きなので準備してあげよう。ただ「ナベカ」ほどではないが縄張り意識が強く、トサカギンポ同士でケンカしたり他の魚を追い払ったりするので、狭い場所にたくさん飼うのはオススメしない。

三番瀬水槽では2017年から2年ほど飼っていたが、2019年に「マダコ」の脱走事件が起こり、その「マダコ」全滅させられてしまった…(すまん)。