コノシロ

特徴

(写真:2019年12月下旬採集。全長約20cm。ウロコが非常にはがれやすい)

レア度:★★★★☆ 脊索動物門 条鰭綱 ニシン目 ニシン科 学名:Konosirus punctatus 英名:Dotted gizzard shad よく見られる季節:10~12月

全長30cmほどまで成長する。あまり馴染みのない魚かもしれないが、寿司で定番の「コハダ」とはコノシロの幼魚のこと。コノシロは成長とともに名前の変わる出世魚で、関東では4~5cmのものを「シンコ」、7~10cmを「コハダ」、13cmほどを「ナカズミ」、15cm以上を「コノシロ」というようだ。

コノシロは身に小骨がかなり多く、サイズの大きなものはその小骨が硬く食べにくいため、市場価値はとても低い(釣っても逃がす人も多い)。逆に「シンコ」サイズのものは非常に高値がつく。

某寿司漫画で「例え赤字でも毎年初夏に「シンコ」を握ることが、江戸前寿司職人の粋」というようなことを言っていたのが印象に残っている。ただコノシロも食べにくいだけであって美味しい魚なのでそこは注意して欲しい。

浦安では毎年秋になると膨大な数のコノシロ(全長15~20cmほど)が、浦安南東の岸近くまでやってくる(おそらく東京湾奥の色々な場所でも同様のことが起きているのだろう)。特に10~11月の夕マズメ前後には「コノシロ風呂」と言えるほどの状態になり、何でも良いので取りあえずサビキやルアーを投げれば、それにコノシロたちが群がってくる(それらをエサとして認識しているのかは不明だが)。

またそのコノシロを追いかけて、大型の「スズキ」「ブリ」、「サワラ」などの回遊魚に加えて、「タチウオ」まで岸近くにやってくる。浦安釣りの最盛期と言っていいだろう。

さらにはイルカの仲間である「スナメリ」が岸近くにやってくる年もあった(こいつが来ると釣りにならなくなる)。また「ハナザメ」のような全長1~2mほどの大きなサメが、コノシロを追い掛け回している姿も目撃したことがある。

またこの時期以外にも数は少ないが、3月、6月、7月にコノシロ(全長10~20cm)の出現記録がある。東京湾奥のコノシロたちは、真冬以外なら岸からそんなに遠くない場所で暮らしているのかもしれない。

 

(追記:2020年8月3日)2020年7月下旬に「コノシロの稚魚」かも!?と思われる稚魚を採集した。

 

コノシロの形態については以下に、『改訂新版 世界大百科事典』の『コノシロ』の解説を引用させていただく。

『ニシン目 ニシン科の海産魚。関東では当歳魚をシンコ、15cm程度のものをコハダ、関西ではツナシと呼ぶ。

背面は青藍色、腹部は銀白色である。腹面に1列の稜鱗がある。えらぶたの後ろに大きな黒斑があり、体側の中央部より背側のうろこにはそれぞれ黒点があり、縦走帯をなしている。背びれの最後の軟条が長くのびているのが大きな特徴である。

朝鮮半島、日本、中国、ポリネシア、インドに分布し、日本では松島湾、佐渡が北限である。沿岸近くに生息し、定置網、底引網などで漁獲される。産卵期は4~5月で浮遊卵を産む。卵径は1.2~1.6mmで、夕方から夜半にかけて産卵される。プランクトン食性で、4歳までで全長30cmほどに成長するものもある。執筆者:松下 克己』

 

全長~10cmぐらいまでの小型のコノシロは「サッパ」という魚に似ているが、コノシロの体側背側には黒い斑点が多数あるの、背びれの一番後ろの軟条が1本、細長く伸びるという特徴で見分けることができる。

食性はデトリタスの多い雑食性で小型動物、プランクトン、珪藻などを食べるそうだ。秋から冬に浦安で釣ったコノシロの胃の中には、泥のようなものが詰まっていることが多い。海底のデトリタスや珪藻などを砂泥ごと食べているのかもしれない。

またコノシロには咽頭嚢があり、胃の幽門部は肥圧しており、胃は砂嚢状。眼は視瞼(しけん)という透明な膜で覆われている。

(2020年1月)

(2024年2月)

『背面は青藍色、腹部は銀白色である。腹面に1列の稜鱗がある。えらぶたの後ろに大きな黒斑があり、体側の中央部より背側のうろこにはそれぞれ黒点があり、縦走帯をなしている』とのこと
体は光をよく反射する大き目のウロコに覆われており、このウロコは非常にはがれやすい。光の反射具合によって、背側が金色っぽく見える。尾びれと背びれは明るい黄色をしている
口は小さく上アゴが前方に出る。下アゴには歯はない。眼は視瞼(しけん)という透明な膜で覆われている
背びれの一番後ろの軟条が1本、細長く伸びる

採集する

(写真:2019年12月下旬、日の出の海岸で釣りで採集したコノシロ。全長約20cm。然るべきときに釣りに行けば、このサイズのものが無限に釣れる)

残念ながら私は今までタモ網でコノシロを採集したことはない。個人が浦安で採集するなら釣りが第一候補になるだろう。

常連釣り人の様子を見ると春~夏にも散発的に釣れているようだが、秋~初冬(特に10~12月)なら日の出・高洲の海岸からかなりの高確率で釣ることができる(2024年現在)。日中でも群れが接岸していれば釣れるが、夕マズメ前後がベスト。コノシロが群れていると水面がモヤモヤした感じ見えるので、そのような場所を探すと良い。

 

この時期のコノシロはルアーやサビキなどの疑似餌によく反応する。メタルジグや鉄板系バイブレーションなどの飛距離が出て沈むのが速いルアーや、ジグサビキなどの仕掛けを使うと良いだろう。蛍光色やキラキラ光るブレードが付いたルアーだとさらに反応が良い(重さは15~20gもあれば十分)。

ちなみに私は手っ取り早くコノシロを集めたいので、ルアーやサビキは使わずに自作の引っかけ仕掛けを使うことが多い。

釣り方だが、まず上記の仕掛けを海に向かって真っすぐ投げて、糸を張りながら仕掛けを海底まで落とす。コノシロがいれば仕掛けが沈む最中にゴツッゴツッとコノシロが当たってくる感触が伝わってくる。そして海底に着底したらリールを巻きながら小刻みに数回強く竿をシャクる(「ワンピッチワンジャーク」で検索してみてください)。

大抵の場合、着底して最初のシャクリでコノシロがかかることが多い。かからなければまた海底まで落として数回シャクるを繰り返す(あまり手前までこれをやると根掛かるので注意)。

まぁ…食わせて釣るというかは、仕掛けに突進してきたコノシロを引っかけるという感じだ(でも口元にかかることが多いのでエサとして認識しているのだろうか?)。このような釣り方を「邪道」「残酷」「危ない」といった風に考える方もいるので、実践する際は他の釣り人とは十分距離を取り、また周囲の安全にも気を配っていただきたい。

そういえばこの時期には投網を使って大量のコノシロを漁獲していく、地元の常連セミプロ漁師?の姿もチラホラ目にする。

 

余談だが、コノシロが釣れているときにそのコノシロを生きたままエサにすると、大きな「スズキ」やサメ、エイなどが高確率で釣れる(「泳がせ釣り」ってやつですな)。

食べる

(写真:自作したコノシロの酢締め)

先にも話したが、コノシロも小骨が食べにくいだけで味自体はとても良い。特に晩秋~冬にかけて釣れるものが脂が乗っていて美味しい。この小骨をどうするかが問題だが、代表的なのは酢に浸けて骨を柔らかくしてしまう「酢締め」だろう。

まずコノシロを三枚におろし腹骨をすき取ったら、塩を両面にたっぷり振って冷蔵庫で30分置き、水分を出す。そうしたら塩とドリップをしっかり洗い流して水気をよく拭き取り、酢100mlに対して砂糖10gを溶かしたものに浸ける(お好みで昆布や醤油などを入れるのもあり)。

浸ける時間は人によって様々だが、骨を完全に柔らかくしたいなら24時間ぐらい浸けると良い。ただ浸け時間が長ければ長いほど、身は白く締まって刺身感は無くなる(私はしっかり浸かった方が好きなので一晩~24時間浸ける)。早く食べたいときは、先に薄くそぎ切りにした身を浸けると、つけ時間を大幅に短縮できるかもしれない。ワサビを付けて食べると美味。

 

また人から教えてもらったものだが、七味醤油漬けもおススメ。三枚におろして腹骨をすき取り、2~3mmぐらいの厚さにそぎ切りにしていく。そうしたらその切り身を醤油、みりん、酒、七味を適当に混ぜたタレに漬け込む(分量は忘れてしまったのでお好みの味に調整してください)。酒のアテやご飯のお供に最適だ。

 

他には塩焼き、煮付けなども試してみたが、私にはどうしても小骨が気になってしまい、あまり美味しく食べられなかった(2mm間隔ぐらいで骨切りもしてみたんだけどね)。

コノシロの七味醤油漬け。手軽にできるので、時間がない時に良い
コノシロの煮付け。写真のように骨切りもしてみてたのだが、私には小骨が気になってしまい、美味しいとは言えなかった…