クロサギ

特徴

(写真:2022年10月上旬、三番瀬で採集。全長約9cm。白銀の魚体が美しい。水中でピタッと静止することができる。そのため写真が撮りやすい)

レア度:★★★☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 クロサギ科 学名:Gerres equulus 英名:Black-tipped silver-biddy Silver biddy よく見られる季節:8~10月

全長25cmほどまで成長する。毎年8~10月頃にになると三番瀬や河口の浅瀬で、全長4~10cmほどのクロサギ?のような魚の小規模な群れをよく見かけるのだが、動きが素早いためタモ網では捕まえられず、魚種を特定できずにいた(クロサギとよく似た魚がいくつかいるので)。

ところが2022年10月上旬、三番瀬浦安側で運良く1個体だけ採集することができた(採集の様子は後で詳しく)。それをじっくり観察した結果、やっぱりクロサギであることが判明した。

ちなみにクロサギとよく似た魚とは「セダカダイミョウサギ」と「ダイミョウサギ」のことで、どちらもクロサギと同じクロサギ属の魚である。

クロサギは内湾や河口の砂底域に生息する雑食性の魚で、小型甲殻類、ゴカイ類、藻類など様々なものをエサとする。捕食の際、口を斜め前方下方向へに著しく伸ばすことができ、その姿が鳥のサギのクチバシを思わせることから、「黒鷺」の名前が付いたという説がある。

体は縦長の木の葉のような形で、体色は銀白色をしており、背側はやや灰色に色づく。ウロコは大き目ではがれやすい。

生時は胸びれの付け根と腹びれが鮮やかな黄色を呈し、また背びれの上部先端付近が黒く色づくことも特徴だ。背びれの鰭条数は9棘10軟条で、これが近縁種との見分けのポイントの1つとなる。

泳ぎ方が特徴的で、数匹~十数個体の群れで、少し移動してはピタッと静止するといった動きをする。体を真っすぐ立てて、ヒレを細かに動かしながら、本当にピタッと止まる。「見事な体幹だな」なんて思ってしまうほど。

(2023年1月)

(2024年2月)

採集直後の様子。興奮のためか、背中側の灰色がやや濃くなっているように見える。また眼球内も色づいているのが確認できる。目盛りは5mm
クロサギの顔。顔に対して眼は大き目。スマートな表情をしているが、エサを採る際は口が斜め下にズボっと伸び、その姿はちょっと気持ち悪いかもしれない
背びれの上部先端付近が黒く色づくことも特徴。背びれの鰭条数は9棘10軟条
クロサギの尾びれ
生時は胸びれの付け根と腹びれが鮮やかな黄色を呈する
クロサギの尻びれ。目盛りは5mm

採集する

(写真:クロサギを正面から撮影。眼と眼の間にU字の窪みがあるのがわかる(かな?) これもクロサギと近縁種を見分けるポイントの1つらしい)

先に書いた通り、なかなか動きが素早く人影にも敏感に反応するため(ある程度までは近づかせてくれるが)、タモ網で捕えるのは難しい。専門に狙うなら投網とか、釣りが良い気がする。けど浦安でクロサギ釣れたことないんだよなぁ~。

ところが2022年10月上旬に運良くタモ網での採集に成功したので、その様子を詳しく書いてみようと思う。

その日は泳ぎながら水中を観察していると、岸際の転石帯に全長10cmほどクロサギのような魚の群れを発見。私が近づくと、石の間を縫うように逃げていく。「こりゃ捕まんねぇなぁ」と思いつつも、ダメ元で採集を試みることに。

水深は70cmほど。左手には護岸が垂直に切り立ち、その脇の海底には大き目の岩がボツボツと転がっている。右手には砂地が広がっているので、右に逃げられるとアウトである。魚はこちらの様子を伺いながら、岩と岩の間に隠れているようだ。

作戦としては、まず私の体と伸ばした右腕で、魚を左の護岸側に追い込みながら前進する。すると魚たちは逃げようとするが、中には慌てて護岸方向に行ってしまうヤツもいるだろう。

しかし護岸は垂直なカベ・行き止まりなので、魚は仕方なく護岸に沿って、私が迫ってくる方向 or 反対方向に逃げる。そのうち私がいる方に来てしまった魚を、左手に持ったタモ網で捕えようというものだ。まぁほとんど運である。

作戦開始。群れが散らないよう始めはそっと近づき、魚たちが前方の岩と岩の間に隠れたのを確認してから、両手を広げて一気に距離を詰める。驚いた魚たちは、岩の陰から飛び出し、四方八方に逃げ惑う。

魚の数は20ほどだろうか。その大部分が私の射程圏外へと逃げてしまったが、左の護岸のカベ方向に逃げた魚も何匹かいたのを目の端で捉えた。

「ええい、ままよっ!!」

左手に持ったタモ網で通せんぼをするように、護岸のカベと海底を擦りながらグッと前進すると、何かがタモ網に飛び込んだ。このブルブルした感触は…!! すぐさま網の中を確認すると、そこには銀色に輝く1匹の魚が入っていた。

心の中で小さくガッツポーズ。自分は銛で魚を突くのが好きなのだが(千葉県では実質禁止されている)、久々にそれと似た興奮を感じた。

たぶんもっと効率的な方法があるのだろうけど。もし知ってる人がいたら教えてください。

飼育する

(写真:自宅水槽4号でのクロサギの様子。泳ぎ回ることはあまりなく、水中で静止しているか、物陰に隠れていることがほとんどだった)

イベントで展示するために、自宅水槽4号で3週間ほど飼育した。

水槽サイズは45cm、底にはサンゴ砂を厚めに敷き、そこに投げ込みフィルターを埋めるという簡易なシステムな水槽だが、良い環境かは別として、これくらいの設備でも生存には問題ないようだ。美麗な見た目に反して、水の汚れや環境変化にもかなり強い印象を持った。

水温は24~26℃でこれもとりあえず問題なし。性格はなかなか神経質で、人影が近づくとすぐに物陰に隠れてしまう。騒音やこちらの動作には注意が必要だ。

水槽に入れてまず大きな問題になったのが、混泳生物に非常に弱いということである。齧る系のハゼやギンポ類がいると、クロサギの方が大分体が大きいのにも関わらず、ヒレをどんどん齧られてしまう。

魚だけならまだしも、クロサギの1/3ほどの大きさしかないスジエビ類にも、エサかと言わんばかりにガンガンヒレを齧られてしまった。クロサギから何か美味い匂いでも出ているのだろうか?

これはいかんということで、敵対生物を水槽から全て出し、クロサギ単独(ヤドカリは入れたけど)で飼うことにした。

が、今度はエサを食べない…。まぁ環境が良くないのだろう。定番の生エサ、活エサにもほとんど反応せず、食べてくれたのはすり潰したクリルのカスのみ。これじゃあ餓死してしまうぞと思い、ワレカラ類などの小型甲殻類がたくさん付着した「マガキ」を採ってきて水槽に入れてやると、それをついばむ動作が見られた。

なるほど…こういうものが良いのか。それからはクリルのカスに加えて、時々そういうものを水槽内に補充してやることで、特に弱ることなくイベントまでの3週間を終えることができた(ちょっと痩せてはしまったが)。

これは私個人の感想だが、人目や目立つ混泳生物がいると、萎縮してしまい活動が鈍る魚なのかもしれない。また普段は群れでいることが多い魚なので、単独飼育というのもあまり良くなかったのかもしれない。