ハオコゼ
特徴
(写真:2021年4月下旬撮影。全長約7cm。2020年9月中旬に河口付近で採集した、全長約3cmの「ハオコゼの幼魚」が成長したもの。ハオコゼは体色や模様をよく変化させるが、この体色が個人的にはベーシックだと思っている。目盛りは5mm)
レア度:★★★★★★★★★★ 脊索動物門 条鰭綱 カサゴ目 ハオコゼ科 学名:Hypodytes rubripinnis 英名:Redfin velvetfish よく見られる季節:?
最大で全長10cmほどになる。写真のハオコゼは2020年9月中旬、東京湾奥で軽微な「青潮」が発生していたある日、河口付近で偶然採集。採集時は全長3cmと幼魚サイズで見た目もハオコゼ成魚とはだいぶ違った(下の写真参照)。
ハオコゼ自体は珍しい魚ではなく浅い岩礁域や藻場、「アマモ場」など色々な場所で見られる魚だが、浦安でハオコゼを発見したのはこれが初めて。もしかしたら「青潮」から逃れるために、普段人が近づけない場所から河口の浅瀬に逃げてきたのだろうか。
頭が大きく、体は短い寸づまりな体型をしている。背びれが頭の真上から、鳥の鶏冠(とさか)のように発達し、それが尾びれの付け根まで続いている。また体に対して大きな胸びれを持ち、これを足のように動かして海底をのそのそと動くこともある(もちろん泳ぐこともできるが、長距離を遊泳するのは不得意のようだ)。
体色は淡い褐色の地に褐色の不明瞭な横帯模様が見られ、腹面は朱色をしている。しかし個体によって体色や模様は異なる場合があり、また長期間飼育観察した結果、体色と模様はかなり変化させることができ、擬態能力を持っていると考えられる。その証拠にこのページに載っているハオコゼの写真は全て同一個体を撮影したものである。
「オコゼ」の名前が示すよう、背びれの棘に毒を持ち、刺されるとジンジンとした強い痛みが長く続く。私は学生時代に友人からハオコゼを投げられ、うっかり素手でキャッチしてしまい刺された経験がある(この時は本気で怒った)。刺された場合はまず傷口から毒を搾り出し、ヤケドしない程度の熱いお湯で患部を温めると毒が不活化され痛みが和らぐ。症状がひどい場合にはなるべく早く病院に行こう。
食性は小型のエビ類、カニ類、ヨコエビ類、など小型の甲殻類などよく食べるベントス食。夜間の方が活発に行動し採餌を行うという報告がある。産卵期は6~8月頃。
ちなみに私は食べたことはないが、煮付けや唐揚げにして食べることもできるそうだ。
以下に、『日本大百科全書』の『ハオコゼ』の解説を引用させていただく。
『硬骨魚綱 スズキ目 ハオコゼ科に属する海水魚。青森県津軽海峡以南の日本各地、東シナ海、朝鮮半島南・東部、台湾に分布する。地方によりスナバリ、オコゼともいう。
頭部にある棘(とげ)は鋭くとがり、前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)に5本の棘がある。背びれは目の背上方から始まり、第2~3棘(きょく)は長くて、それらのひれ膜は深く切れ込む。臀(しり)びれの棘は3本、腹びれの軟条は4本。
体は側扁(そくへん)し、ほとんど鱗(うろこ)がない。背側面は淡い褐色、腹面は赤い。背びれの第5~8棘の基底部に暗褐色斑(はん)がある。内湾の砂地やアマモ場、岩礁域に群生する。産卵期は夏季、分離浮性卵を産む。
おもに小型の甲殻類を食べる。体長は10センチメートルほどにしかならない小型魚である。刺毒魚で背びれの14~15本の強い棘に刺されるとひどく痛む。シロギスやカレイ釣りの際に混ざって釣れるので注意が必要である。[落合 明・尼岡邦夫]』
(2020年9月)
(2024年4月)
飼育する①
(写真:2020年9月中旬、河口付近で採集。全長約3cm。上の写真の個体の採集した当時の姿。なんだか怪獣の赤ちゃんのようで可愛らしい)
自宅を飼育で開始して3ヶ月が経過したので(2020年12月現在)、これまでの歩みをまとめてみる。
まず水温だが25~18℃の範囲で調子を崩すことはなく、また水の汚れにも強い部類に入ると思う。
夜に活動が活発になるという情報があるがどうやらそのようで、明るいうちは物影や石の下などでじっとしてほとんど動かない。温厚な?性格なのか、他の生物を攻撃したり追い払ったりするということもほぼ無い(今のところ)。
エサは飼育を開始してから割とすぐに、粒タイプの配合飼料(おとひめ EP2)を口にしたが、エサが硬いためか、しばらくオェオェしてから吐き出すので、仕方なくまずは生きたゴカイのミンチを与えることに(クリルや釜揚げ桜えびは食べなかった)。やはり生きたゴカイには速攻で食いつく。
その後は、冷凍保存してあった塩漬けアオイソメのミンチを与え、ときどき細かく砕いた配合飼料をそのミンチに混ぜたりした。そうして1ヶ月ほど経過した頃ようやく、しっかりと水でふやかした配合飼料なら吐き出さずに飲み込むようになった。そして2ヶ月後には、完全に配合飼料に餌付いた(ただ配合飼料は水でふやかす必要がある)。
またエサやりには少しコツがあって、ピンセットにつまんだエサをハオコゼの頭の少し斜め上にフワッと落としてやると、パクッと食いつく。ただ底に落ちたエサは見えていないのか興味がないのか食べてくれない。私的にはもっと積極的にエサを追って欲しいのだが甘やかしすぎたか…。いずれは三番瀬水槽に連れて行くつもりだが、この調子だと三番瀬水槽デビューはまだまだ先になりそうだ。
(追記:2021年4月28日)2020年9月に飼育を開始してから7ヵ月。もうそんなに経ったか!!とこれを書きながら思う。捕まえた時は全長約3cmほどだったが、現在は7cmほどまで成長し、毒のある背びれの棘(きょく)の長さも2倍ほどになり、ずいぶんとハオコゼらしい姿になった。
まぁ行動は相変わらずで、基本的には物陰で動かず、エサもピンセットで鼻先に落としてやらないと積極的には食べない(甘やかしすぎたか…)。ただ最近どうも同じ水槽内の小型のエビや、「エビジャコの一種」を食っているようなのだ。潮時か…。というわけで、うちのハオコゼ君を三番瀬水槽(マーレ水槽)へ移動することに決定!! 大人しく、水の汚れにも強く、動きも面白いナイスな奴だったので、少し寂しい気持ちもある。
入居先の三番瀬水槽(マーレ水槽)はウチの水槽の10倍近い容積があるので、そのまま入れると隠れてしまって、一般の人に見つけてもらえないという事態が予想される。そのため少し大きめの隔離水槽を作成して、その中で展示することにした。みんな見つけてくれるだろうか…?
(つづく)
2021年4月下旬撮影。全長約7cm。飼育開始から1年と7か月が経過。大きさは採ってきたときの倍となり、姿ももう立派なハオコゼ成魚だ。いよいよマーレ水槽で展示をすることに。目盛りは5mm
飼育する②
(写真:2023年11月下旬撮影。同居人の「カサゴ」とただならぬ関係のハオコゼ。まるで繁殖活動をするオスメスのような動きをしていた(ハオコゼがオス役)。あと定期的にハオコゼの体が茶色く汚れたようになる(しばらくするとまた元に戻る)。何なのだろうこれは?)
さて、舞台をマーレ水槽(オーバーフロー式、90×60×45cm)に移し、ハオコゼの飼育生活が新たな始まりを迎えた。
マーレ水槽は気が強くタフな生物たちが多数暮らす戦国時代水槽である。動きがスローで気が強いとも言えないハオコゼが、彼らと共存できるか…。非常に心配であったが、それも杞憂に終わる(笑)
水槽に入れた当初こそ石の下や物陰に隠れていたが、しばらくすると堂々とオープンスペースに鎮座するようになった。どうやらハオコゼを攻撃する生物もいないようだ。先に書いたがハオコゼは背びれに強力な毒針を持っており、ハオコゼ自身もそれを認識し自分が攻撃されにくいことを理解しているのかもしれない。
またハオコゼから他の生物に攻撃するというシーンも今のところ見たことがなく、ヤンチャな見た目に反して観賞魚としてはかなりの優等生だ。
エサも自宅水槽時代にあげていた粒タイプの配合飼料をバクバク食べる。ただ動きが遅いため他魚よりやや食い遅れ気味なので、混泳をさせる場合はエサがハオコゼまできちんと行き渡る工夫をした方が良いかもしれない。
そんなこんなで特に大きな問題もなく現在(2024年4月中旬)もマーレ水槽で元気に暮らしている。気が付けば飼育を開始してから3年半近く経っている。年齢は4歳ぐらいだろうか。