ボラ

特徴

(写真:2022年6月上旬撮影。全長約50cm。「浦安郷土博物館」で飼育されていたものを撮影。浦安沿岸では真冬以外の季節に、このサイズのボラをよく目にする)

レア度:★☆☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 ボラ目 ボラ科 ボラ属 学名:Mugil cephalus 英名:Flathead gray mullet 良く見られる季節:4~11月

最大で1mを超えることもある。海や魚に興味がない人でも名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれない。浦安の海や川で、ロケットのごとく水面から飛び跳ねている魚がいたら95%はボラ(だと思う)。飛び跳ねている理由は「寄生虫を落とすため」とか「敵から逃げるため」と言われているが、はっきりとわかっていない。

日本全国、磯から干潟、河川、湖など至るところに生息している魚で、淡水にもよく順応し完全な淡水で飼育している例も多い。浦安では3月頃になると3cmほどのボラの幼魚の群れが現れ始め、キラキラと美しいその姿を見ると「あぁ、春になったんだなぁ」と感慨深い気持ちになる。

成長によって名前が変わる出世魚で、関東では「オボコ」→「イナッコ」→「スバシリ」→「イナ」→「ボラ」→「トド」と呼ばれるそうだが(Wikipediaより)、今まで私は「オボコ」、「スバシリ」、「イナ」と呼んでいる人に出会ったことがない。5cmぐらいまでの特に小さなものを「ハク」もしくは「イナッコ」、それ以外は「ボラ」、超大型を「トド」と呼ぶ感じだろうか。

雑食性で、珪藻類や海底に降り積もった「デトリタス(生物の死骸や生物由来の有機物が細かくバラバラになったホコリのようなもの)」を食べたり、岩や海藻に生えた藻類を食べる。浦安の海岸でも30~50cmのボラの群れが、体を左右に振りながら岩肌に生えた藻類を食べているのをよく見かける。また水面に浮いている有機物のカケラ?を水と一緒に吸い込むようにして食べることもある(油が水面に浮いているような水域だと、油も一緒に吸い込んで食べてしまう。

このようにな食性に加え、水の汚い場所でも生息できるタフさから、「ボラは臭い、汚い」などと東京湾奥でのボラの評価はすこぶる悪い。

そういえば毎年、都市部の河川を大量のボラが遡上する様子がニュースになるが、浦安の境川でも大雨の際、暗渠(あんきょ)の入口に大量のボラが集結することがある。

(2020年9月)

顔に対して眼は大きく、上唇の厚みが目立つ。ウロコは大きくしっかりとしている
どことなく淡水魚の雰囲気を持つ。体型は魚雷のような形をしているなぁと個人的に思う

採集する

(写真:2019年4月中旬採集。全長約3cm。ボラの幼魚。目盛りは1cm)

全長4cmほどまでのボラの幼魚なら、タモ網ですくうのはそんなに難しくはない。ただ小型と言えども、結構すばしっこいのでちょっとしたコツがいる。

タモ網を構えたら水鳥になったつもりで体の動きを止め、ボラの幼魚の群れが油断して近づいてきたところを、一気に上から網を被せる。また人影に敏感に反応するので、タモ網や手を広げて、群れを逃げ場のないところまで誘導してから、これまた一気に網で捕獲するという手もある(もっといい採集方法があれば教えてください)。

使うタモ網は安物だと、採集時の衝撃でシャフトが折れたり曲がったりしてしまうので、柄が太くしっかりとしたものを使うと良い。あ、そうそう、私は使えないが「投網」を使うとものすごい数が捕れると思う。

小さなボラは外傷やショックに弱く、採集時に体に傷がついたものはかなりの確率でその後死んでしまう。飼育を前提とするなら、傷ついていない元気そうな個体を選び、なるべく水から出さず手でも触れず、デリケートに扱う必要がある。

大きなボラは…やはり釣りだろうか? コマセ(撒きエサ)を使ったサビキ釣りやウキ釣りの外道として釣れることも多い。またボラを大きな針で引っ掛ける釣り方もある(「ボラ掛け針」という専用の針もある)。

そういえば過去に夏の三番瀬で、おそらく東南アジア系の留学生だろうか…外国人2人組が岸壁から投網を投げては、そのまま海に飛び込み投網に入った魚を捕らえるというダイナミックな漁?でボラを狙っていた(千葉県は一般人が陸から投網をすることは一応許可されている。詳しくはこちら)。また違う日にはたぶん同じ外国人が、手投げ式の銛?槍?で岸からボラを仕留めようとしていた(これはいいのか?笑)。

飼育する

(写真:2017年4月撮影。ボラ幼魚の群れ。稼働したばかりの市役所水槽にて。群れで中層を漂う姿は非常に美しい)

性格も温厚で、中~上層を泳ぐので水槽映えし、コケや水面の油膜などを食べてくれるので、個人的には飼いたい魚なのだが、少々問題がある。

小さなボラの幼魚は非常に痩せやすく、1日に複数回エサをあげないと、あっという間に痩せて死んでしまう(水槽内にボラのエサとなるコケなどが常にある場合は別だが)。ただ1日1回、満腹まで食わしてやれば、痩せて死ぬことはある程度防げるが、成長がすごく遅い。エサやりが隔日などになってしまうと、みるみる痩せていってしまう。

まだ私に水槽の知識がない頃、写真のように市役所水槽に全長3cmほどのボラを数十匹入れたことがあった。初めのうちは「キレイ!!」と大好評だったが、エサやりを毎日できなかったため、あっという間に水槽はボラの幼魚の死体だらけに。あの時のボラには非常に悪いことをした。このような経験から現在では小さなボラの幼魚の飼育はしないようにしている(期間限定や他の生物のエサと入れることはある)。

10cmぐらいまで成長したボラならエサ不足への耐性もあり、丈夫で飼いやすそうなので、いつか飼育してみたいと考えている(ただそのサイズになると泳ぎが速く、捕まえるのが非常に難しい)。

食べる

(写真:2019年10月中旬に浦安の海側で釣ったボラ(全長約40cm)を2枚に卸した)

「水の綺麗な場所のボラは美味い」、「昔は高級魚だった」というのは釣り人の間では有名な話である。しかしイマイチ気が乗らず、ずっと食わず嫌いをしていたが、2019年10月中旬とうとう食べてみることにした。

釣った場所は浦安高洲、サイズは40cm弱。巷では「釣った瞬間から臭い」などと言われたい放題のボラだが、幸運にも?私が釣ったボラはそんなことはなく、釣ったその場で血抜きをして、ウロコと内蔵、頭を取り除いてクーラーボックスに入れ持ち帰った。

自宅へ帰り、表面のヌメリや血合いを洗い流す。ここでも臭いはしない。そして、三枚に卸すと見事な美しい白身。「これは刺身でイケるんじゃないか」と、少し切り取って口に入れてみる。甘い!!そして噛みしめるごとに旨みが………旨み…?

旨み…を通り越して脂臭さが口にいつまでも残る…「これはちょっとたくさんは食べれないな」と刺身は断念することにした。ただ浦安のボラの名誉のために言っておくが、これは決して化学的、人為的な油臭さではなく、あくまでボラという魚が持つ「強すぎる旨み」という感じだ(後で人に聞くと、洗いにして余分な脂を落としてから酢味噌で食べると美味しいそうだ。そうすればよかった…)

最終的にこのボラは、フライにして食べることにした。これは素直に美味しかった。脂臭さもなく、ホクホクの白身でどんなソースでも合う。しかし「フライにするならボラじゃなくてもなぁ」と心の中でつぶやくのであった。

余談だが、高級食材のカラスミはボラの卵巣を加工したもので、これを狙いにボラを釣る人もいる。未熟な卵巣で作ったカラスミの方が高価で美味らしい。