ヒラムシの一種③
特徴
(写真:2022年3月下旬、三番瀬で採集。体長約4cm。緑褐色の体に黒い細かな点が散らばっている。体に傷が付いており、その部分は皮がめくれたように、白くなっている。目盛りは1cm)
レア度:★★★★★★☆☆☆☆ 扁形動物門 渦虫綱 多岐腸目 学名:? 英名:? よく見られる季節:?
種類不明。どのくらい大きくなるかはわからない。
写真個体は2022年3月下旬、三番瀬で生物採集中に偶然タモ網に入ったもの。このあたりではよく見るタイプのヒラムシだと思う。もしかすると「ヒラムシの一種②」と同じ種類かもしれない。
体は緑褐色で、体表の全体に小さな黒い点が散らばっている。腹面は白っぽい半透明で、その中央には樹枝状の腸が透けて見える。また体はヌルヌルとして掴みづらく、ちぎれやすい。
以下に『改定新版 世界大百科事典』の『ヒラムシ』の解説を引用させていただく。
『渦虫綱 多岐腸目 Polycladidaに属する扁形動物の総称。体が扁平なところからこの名がある。すべて海産で,潮間帯の石の裏側にすむものが多いが,なかには他の動物に内部あるいは外部寄生するもの,または浮遊生活するものもある。体は幅広い葉状や帯状。体長は0.7~50mm,体の表面をおおっている細胞層には繊毛をもった繊毛細胞,腺細胞,感覚細胞などがあり,腺細胞から液を分泌し,繊毛によって岩の上などをすべるように移動する。
体の前方に脳があり,光線を感ずる単眼はいわゆる色素杯単眼で組織の中に埋没している。種類によっては体の前縁に沿って多数並んでいるものもある。腹面の中央に口があり,口から咽頭,腸とつづくが肛門はない。口はよく開いて大きな餌をのみこむことができる。咽頭から前後左右に多少放射状に腸が分かれ,さらにこれから多くの分枝をだして体の周縁に達している。この腸は消化吸収の働きをし,不消化物は口から外へだされる。排出器は原始排出器であって,体側を前後に走る1対の排出管から組織内に小枝が分枝して入りこんで排出物を集め,それを排出管へ送り,さらに排出孔より外にだしている。
雌雄同体で,同一個体に雌と雄の生殖器官があるが,体制に比較して,その構造は複雑である。交尾によって体内で受精した卵は海中に産みだされ,発生がすすんで直接幼体になるか,ミュラー幼生Müller's larvaやゲッテ幼生Goette's larvaになってしばらく浮遊生活をし,その後変態して成体になる。
一般に肉食性で,小型甲殻類,二枚貝,環形動物などほとんどどんな動物でもとらえたものを食べる。イイジマヒラムシStylochus ijimaiやフロリダ産のS.frontalisはカキを好んで食べるので養殖ガキに大きな被害を与える。
潮間帯でふつうに見られるヒラムシ類にはツノヒラムシPlanocera reticulata,ウスヒラムシNotoplana humilis,チチイロウスヒラムシN.japonica,カリオヒラムシCallioplana marginataなどがある。浮遊生活するのはオキヒラムシPlanocera pellucidaで,太平洋,大西洋,インド洋などに分布する。執筆者:今島 実』
ちなみにヒラムシ類は外見が似たものが多いうえ、研究も盛んに行われているわけでもなく、またヒラムシ類の図鑑も数少ない。種類に判別は専門家が顕微鏡下で内蔵を観察してようやく同定できるレベルらしい。
またヒラムシはその見た目とは裏腹に獰猛な肉食性の種が多く、さらにフグ毒で有名なテトロドトキシンを体内に持つものもいるそうだ。すげ~。こえ~。
(2023年9月)
(2024年8月)
写真撮影をした後、自宅水槽5号に取りあえず入れておいた。それから約20日後…この子の存在も忘れかけていたある日、急に姿を現した。そしたら何と産卵を行った!! さらによく見ると採集時についた体の傷も消えている。大した生命力の持ち主だ