ウリタエビジャコ

特徴

(写真:2022年3月下旬、三番瀬で採集。体長約4cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。エビのようであるが、エビではない。体色や模様は、周りの環境に合わせて変化させることができる)

レア度:★☆☆☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 エビジャコ科 エビジャコ属 学名:Crangon uritai 英名:? よく見られる季節:3~5月頃

三番瀬にはウリタエビジャコと「カシオペエビジャコ」の2種類が生息しているらしいが、2種は非常によく似ており、その違いはかなり詳しく見ないとわからなかったのだが、この度「浦安市三番瀬環境観察館」のスタッフさんに見分け方を教えてもらい、同定が可能になったので、本ページを作成することができた。

その見分け方については文章で説明するのが難しいので、下の写真を参考にしてほしい。ポイントは尾の付け根の節の裏側の形態が異なる、ということ(うん、わかりにくいね)。

今までのところ、三番瀬の浦安側で見つかるエビジャコのほとんどはこのウリタエビジャコ(大量に採集してしっかり見てみればみればまた違った結果になるかもしれないが…)。

三番瀬浦安側では春から初夏かけて大量のエビジャコ類を見ることができる。タモ網で海底の砂をひとすくいすれば、必ず1匹はエビジャコが捕れるというほどだ。エビジャコは生物の死骸などを食べる掃除屋であると同時に、エビジャコ自体が他の生物の重要なエサ生物であり、三番瀬の生態系を支えているのは間違いない。

エビジャコとは「節足動物門 甲殻綱 十脚目 エビジャコ科」に属する生物で、本州北部~九州、朝鮮半島や中国まで幅広く分布し、内湾の水深が浅く、海底が砂泥の場所に生息している。姿はエビによく似ているが、泳ぐこともあるエビとは違って、エビジャコは日中はほとんど砂の中に潜って過ごしている。

体型はエビ類に比べると全体的に上から潰されたように平たく、角(額角(がっかく))は短く目立たない。またハサミ(第1胸脚)も短く不完全な形状で、その先端は鎌形をしている。

三番瀬で見られるエビジャコの体色は薄い灰褐色や、半透明のものが多く、体の表面には黒い小さな点がたくさん散らばっている。また周囲の環境に合わせて、体色や模様を変化させることができる(飼育観察してわかったが、その変化の幅はかなり広い。かなりの隠れ上手だ)。

ちなみに日本ではエビジャコ類は佃煮にして食べられたり、釣りのエサとして細々と利用されているが、ベルギーとオランダではかなりメジャーな食材らしい(そのエビジャコは三番瀬のエビジャコとは違う種類だが)。また最近浦安に長く住む老人から、浦安の人はエビジャコ類のことを「ハンベエ」と呼び、釣りのエサなどに使っていることを教えてもらった。

それにしても「これはエビじゃなくて、エビジャコというんですよ!」という説明をこれまで一体何回しただろうか。普通の人にはどうでもいい事かもしれないが、私は何故かそこに妙にこだわってしまう。

(2023年11月)

体に対して長めの触覚が2本伸びる
頭部を拡大。角(額角(がっかく))は短く目立たない。またハサミ(第1胸脚)も短く不完全な形状で、その先端は鎌形をしている
頭胸甲と腹部背面を拡大。体内には内臓が黒く透けて見える。また体の表面には黒点が散らばっている
尾部周辺を拡大
これがウリタエビジャコと「カシオぺエビジャコ」を見分けるポイントの1つ。体を裏返し、尾の付け根の節をよく見ると、節の両サイドが盛り上がり、その間に谷のような溝が見られる。「カシオぺエビジャコ」にはこの溝が無いらしい
さらに拡大。私は実際に「カシオぺエビジャコ」のこの部分を見たことがないので、両者の詳細な違いはわからないが、とりあえずこの部分がこのようになっているのがウリタエビジャコとのこと
さらにその箇所をマイクロスコープで拡大してみた。ちなみにこれは2023年5月中旬に三番瀬で採集した個体。この個体、私の肉眼ではパッと見ウリタエビジャコの”例の溝”が確認できなかったので、「もしやカシオぺ(エビジャコ)か!?」と鼻息荒く同定作業を行ってみたのだが、写真が示す通り普通にウリタエビジャコでした…。この溝以外の形質も観察してみたのだが、やっぱりウリタエビジャコでした…。目盛りは0.5mm
こちらはウリタエビジャコのハサミ(第1胸脚)。短く不完全な形状で、先端は鎌形をしているのがわかる。ちなみに写真の上のハサミと下のハサミはそれぞれ別個体のもの。目盛りは0.5mm
こちらも2023年3月に三番瀬で採集した大型の♀個体。体長約4.5cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。黒っぽい色をしているが、これも体色変化の一例だと思う
この個体は腹部に大量の卵を抱いていた。これからの時期の(4~5月頃)の三番瀬浦安側には、大量の子エビジャコが出現する

採集する

(写真:体長約4cm(角(額角)の先端から尾までの長さ)真横から見ると、エビ類と比べて押しつぶされたような平たい体をしているのがわかる)

3~5月頃に三番瀬に行けば簡単に採集できる。3月中は大型の抱卵した個体がよく採れる。

普段は浅く砂に潜っているので、タモ網で海底を引きずるといい(網の先端が直線になったタイプのタモ網がオススメ)。

水温が上がりきった真夏になるとあまり姿を見なくなる。