イサザアミの一種②

特徴

(写真:2020年5月中旬採集。体長約15cm(触覚を除いた体の長さ)。生きている個体を撮影したので体色が鮮やか。目盛りは0.5mm)

レア度:★★★☆☆ 節足動物門 軟甲綱 アミ目 アミ科 イサザアミ属 学名:? 英名:? よく見られる季節:4月~初秋

東京湾には「ニホンイサザアミ」と「イサザアミ(クロイサザアミ)」の2種が生息しているらしく、浦安沿岸に現れるのがそのどちらかなのか、それとも両方なのかわからないので、写真のイサザアミを「イサザアミの一種②」として扱うことにした。もしかすると別ページの「イサザアミの一種①」と同種かもしれない。

写真の個体は2020年5月中旬、中程度の赤潮が発生した際、河口で採集したもの。赤潮の影響のためか、おびただしい数のイサザアミが岸壁際に集結していた。網ですくえばすぐにバケツ一杯集められそうなほど。またこの時は産卵期にあたったのか、ほとんどの個体が体長10~15mmと大きく、腹部に「保育嚢」を持ったメスだった(下の写真参照)。

体は透明をしており、頭部周辺と保育嚢付近は薄い茶色をしている。また頭部(頭胸甲)背面から腹部にかけては黄色と黒の模様が見られ、どこか虎をイメージさせる色彩だ。生きている間は体は透き通りこの模様もハッキリしているが、弱るもしくは死ぬと体全体が白色になった。体の各部詳細については下の写真を参照。

小さなエビのような見た目をしているが、イサザアミは「軟甲綱 アミ目 アミ科」に属する甲殻類の一種でエビとは異なるグループの生物(ちなみにエビは「軟甲綱 十脚目」に属する)。エビ類に見られるような目立ったハサミ脚は見られず、体に対して触覚が長く太い。私が浦安で今まで見たイサザアミは体が半透明もしくは薄い褐色をしているものが多かった。

私の経験によると、浦安のイサザアミ類は3月の気温が上がり始めるころから浅瀬で姿を見せるようになり、春から初夏には大発生するのをしばしば見かける(特に「赤潮」や「青潮」が発生すると、おびただしい数のイサザアミ類が岸近くに出現する)。そして増えたり減ったり、現れては消えたりを初秋まで繰り返す感じだろうか。

イサザアミ類は様々な生物(魚の稚魚・幼魚、小型甲殻類など)の重要なエサ生物となっており、三番瀬のみならず東京湾全体の生態系のを支えている。

またイサザアミ類だけではないが、アミ類は佃煮にして食べられたり、釣りの撒きエサとして人間にも利用されている。

(2020年5月)

イサザアミの一種②の頭部(頭胸甲)を拡大
頭部(頭胸甲)と腹部の境目あたりに、丸い保育嚢がある(写真中心下)
イサザアミの一種②の腹部。黄色と黒の模様が、どこか虎をイメージさせる
イサザアミの一種②の尾部周辺。目盛りは0.5mm
上から頭部を撮影。目が大きく、角(額角)は細長い三角形で先端はとがる。目盛りは0.5mm
頭部(頭胸甲)を上から撮影。黒い模様の範囲が広い。目盛りは0.5mm
腹部を上から撮影。目盛りは0.5mm
尾(尾節)は4本の鈍く尖ったトゲ?で構成されている。よく見るとトゲ?の縁辺には細かなギザギザがある(これの数が種を見分けるポイントの1つになるそうが、私にはさっぱりだ)。目盛りは0.5mm
2020年5月中旬撮影。体長約15mm(触角を除いた体の長さ)。イサザアミの一種②。保育嚢の中に透明な卵があるのがわかる。自宅水槽のに入れた当初は保育嚢の中には何もなかったが、水槽に入れてから数日後、保育嚢の中に卵が形成された
保育嚢を拡大。丸い透明の卵が見える。卵1つの大きさは直径0.5mmないぐらいだろうか。1匹が1回に産む卵の量はそんなに多くなさそうだ

飼育する

(写真:採集したイサザアミの一種②を隔離水槽に入れてしばらく飼育した)

飼育…というほどではないが、自宅水槽の生物のエサ用に1週間ほど飼ってみた。

河口近くで採集したものなので、海水の比重は1.024前後で問題なかった(水温は23~24℃)。

エサは粒タイプの配合飼料(日清丸紅飼料「おとひめ」)をすり潰したものや、稚魚用の粉末エサ(ニチドウ 「殻無しブラインシュリンプ」)を与えるとすぐに食いついた(水槽に入れて翌日には食べだした)。エサにはあまりこだわりはないのかもしれない。ただ1匹の食べる量はごくわずか。

既に弱っていたのか、ストレスや他の要因によるものか分からないが、写真のような環境で飼育すると、毎日4~5匹ずつ死んでいってしまう。また飛び跳ねた拍子に、水槽のフタやカベにくっついてそのまま死んでしまう個体も結構いたので、長期飼育する場合はそのあたりの工夫が必要だと思う。

全長4cmほどの「アミメハギ」のエサ用として採集したのだが、意外とイサザアミの遊泳力が高く(ヒュンと瞬時に移動する)、小型の「アミメハギ」の泳ぎでは捕まえられない…。結局ピンセットでつまんで与えることとなった。

さすが生きエサの代表というだけあって、「アミメハギ」だけでなく「マコガレイの幼魚」やエビ類、ヤドカリたち…どんな生物も美味そうに食べていた。

ニチドウ(株)の「殻無しブラインシュリンプ」