シマメノウフネガイ
特徴
(写真:2021年4月上旬、三番瀬で「アカニシ」の貝殻に付着していたものを採集。貝殻の直径約2.5cm。写真のように貝殻表面にに藻類のような茶色い汚れが付着していることも多い。目盛りは1cm)
レア度:★★☆☆☆ 軟体動物門 腹足綱 盤足目 カリバガサガイ科 学名:Crepidula onyx 英名:Onyx slippersnail よく見られる季節:?(一年中見るような気がする)
最大で貝殻の長さは4cm、高さは1~3cmほどになる。北アメリカ西岸が原産地の外来種で日本では1968年に東京湾で発見された。その後分布を広げ、現在では北海道南西部から九州にまで生息している。
「サザエ」、「アワビ」などの他の巻貝の貝殻に付着し、その排泄物や水中のデトリタスを食べて生活しているが、浦安では「アカニシ」の貝殻にくっついて見つかることが圧倒的に多い。というか、ほぼ全ての「アカニシ」に付いているんじゃないかと思うぐらいの付着率だ。
1つの「アカニシ」に複数のシマメノウフネガイが付着していたり、シマメノウフネガイの上に違うシマメノウフネガイが重なっていたりする。やりたい放題なヤツらだ。
ただ付着されたからといって栄養を吸い取られたりするわけではないため、宿貝の生存に関わるほどの被害はないが、成長が阻害されたり移動の邪魔になったりするらしい。それと本種に付着された貝は見た目がよろしくないので、「アワビ」などの養殖業者さん達はシマメノウフネガイの除去に手を焼いているようだ。
貝殻はほぼ楕円形で浅いお椀のような形状。殻頂は貝殻の前端にあり、その先端は尖がり少し左にくびれる(ただ個体や付着場所によって貝殻の形態が異なる場合がある)。貝殻は濃い褐色をしており、殻頂付近は黒くなる。またその貝殻表面には不規則な段差があり、それはまるで栄養状態の悪い人の爪のようだ。
貝殻の内側は、中央が光沢のある黒褐色で、その外側が褐色、縁辺は白っぽくなる。個体によっては縁辺部が暗褐色と白のシマ模様になる場合がある(下の写真参照)
貝殻の内側は隔板(かくはん)という白い板状の殻によって2部屋に分かれている(下の写真参照)。
体(足)は薄い肌色をしており、頭部には2本の長い指状の触角がある。
名前の由来だが、シマメノウは「onix(オニックス)」(縞瑪瑙(しまめのう))から。縞瑪瑙とは白や黒、褐色のシマ模様を持つ、宝石などに利用される石のこと。さらに貝殻の形状が船を思わせることから「縞瑪瑙船貝」と名前が付いたそうな。
繁殖期はほぼ通年で、付着した貝殻の上に卵を産み、孵化するまでオスが貝殻の中で保護する。孵化後、幼生は潮の流れに乗って分布を広げる。
それにしても名前の覚えにくい貝である。声に出して覚えよう。
「シマメノウフネガイ」
(2023年8月)
飼育する
(写真:2019年7月上旬撮影。水槽内のパイプ(三重管)に付着するシマメノウフネガイ)
飼育した…と言っていいか分からないが、気がついたら三番瀬水槽(マーレ水槽)内にいた。元々は「アカニシ」か何かにくっついて水槽にやってきたのだろう。写真の通り、他の貝に付着していなくても生活できるようだ。
特別な世話をしなくても半年以上生きていただろうか。しかも同じ場所から一切動かずに(パイプを貝か何かと勘違いしているのか?)。この場所はちょうど水槽内の海水がろ過槽へと落ちる際の入口で、海水中のデトリタスや生物の排泄物、エサの食べカスなどが流れて来ていたのかもしれない。
ただ貝を食べる生物や攻撃的な生物(カニ類、「クロダイ」など)が水槽内にいるとあまり長くはもたないと思う。