レイシガイ

特徴

(写真:2020年3月上旬、河口付近で採集。貝殻の長さ約3.5cm、幅約2cm。生きた状態で撮影。貝殻の内側が橙色をしているのが大きな特徴。目盛りは1cm)

レア度:★★★☆☆ 軟体動物門 腹足綱 吸腔目 アッキガイ科 学名:Reishia bronni 英名:? よく見られる季節:?

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最大で貝殻の高さが6cm、幅は4cmほどになる。北海道南部から台湾あたりまでの、潮間帯~潮間帯下に生息する。浦安沿岸ではレイシガイによく似た「イボニシ」は掃いて捨てるほどいるが、レイシガイはポツリポツリとしか見つからない印象。

貝殻は紡錘形で肌色の地に黒いシマ模様があるそうだが、実際に野外で見る個体は貝殻表面が藻類などによって汚れており、貝殻全体が緑がかった黄色や灰色っぽく見えることが多い。

貝殻表面にはイボ(結節)が並ぶが、イボの形状や数は地域によって異なるようだ。浦安でみる個体はイボの張り出しは少なく、イボの並びもあまりキレイでないものが多い印象がある。

殻口は少し細長な卵型で、殻口の下には水管溝(すいかんこう)と呼ばれる水管が通るための溝が顕著に見られる。蓋は角が丸い横長の歪な台形で、色は薄い半透明の褐色で真ん中に太い暗褐色のシマがある。

貝殻の内側は淡い橙色をしており、特に内唇周辺と外唇は濃い橙色になっているが、これも個体差があると思う。貝殻は硬く、踏みつけても壊れないが、よく見ると欠けや小さな穴が開いていることが多く、脆そうな感じ(実際は硬いんだけど)。

体(足)は肌色の地に灰色~黒色のまだら模様が入っている。体(足)の底面は薄い肌色一色。頭部には2本の触角がありその先端の少し下に黒いシマがある。

レイシガイと「イボニシ」の見分けについては浦安でも話題に上る。私個人の見分け方としては、①レイシガイの方が大型になる、②レイシガイ貝殻の内側(特に内唇、外唇部分)が橙色に染まり外唇部分は黒くならない、③レイシガイの貝殻はカスカスボロボロだが「イボニシ」はそうではない(これは茹でるとより顕著になる)、④卵嚢の発生が進むとレイシガイの卵嚢は灰黒色っぽくなる(「イボニシ」の卵嚢は薄い黄色→鮮やかな紫色になる→?)。あくまで専門家でない私個人の経験と、浦安での場合ということで悪しからず(他の資料も見てね)。

レイシガイは他の貝を襲って食べる肉食性の巻貝で、穿孔腺(せんこうせん)という酸を分泌する器官を持ち、「マガキ」やフジツボ類などの貝殻に穿孔腺からの酸と歯舌(しぜつ)の運動で穴を開け、その肉を食べる。

産卵期は夏頃で、多数のレイシガイが集合し垂直護岸や岩にこん棒状の卵嚢をびっしりと産み付ける。

ちなみに山形県や大分県では現在でも食用として流通しているそうだ。内蔵には独特の辛味があるらしい。

余談だが近縁種に「レイシガイダマシ」と「レイシガイダマシモドキ」という巻貝がいる(どんだけダマすんだ)。

(2020年3月)

貝殻は紡錘形で肌色の地に黒いシマ模様があるそうだが、実際に野外で見る個体は貝殻表面が藻類などによって汚れており、貝殻全体が緑がかった黄色や灰色っぽく見えることが多い。またこの写真の貝殻表面をよく見ると、貝殻の巻に沿った細い筋が多数見られる。目盛りは1cm
貝殻表面にはイボ(結節)が並ぶが、イボの形状や数は地域によって異なるようだ。浦安でみる個体はイボの張り出しは少なく、イボの並びもあまりキレイでないものが多い印象がある。目盛りは1cm
殻頂方面から撮影した様子。目盛りは1cm
移動するレイシガイ。1本の太い水管と2本の触角が見える。体(足)は肌色の地に灰色~黒色のまだら模様が入っている。体(足)の腹面は薄い肌色一色。頭部には2本の触角がありその先端の少し下に黒いシマがある
体(足)の腹面は薄い肌色一色。この写真の貝殻をよく見るとわかるが、貝殻に小さな欠けや小さな穴が多数あり、カスカスボロボロな印象
レイシガイの蓋。「イボニシ」の蓋とそっくりだ。目盛りは1cm
2022年5月上旬、市役所水槽に入れていたレイシガイが産卵をした。当時の水温は22℃前後、比重1.023。カキ殻の内側にある棒状のものがレイシガイの卵嚢だ
レイシガイの卵嚢は、産み付けられたときはほんの少し黄色っぽい白色で、発生が進むと灰黒色になるようだ

飼育する

(写真:水槽の壁を上るレイシガイ。この個体の貝殻は特にカスカスボロボロである)

飼育…と言っていいかわからないが、現在(2021年6月)市役所水槽に数匹入っている。

飼育は容易で特別な世話をしてやらなくても、エサの食べ残しや生物の死骸などを食べて生存できるようだ。また他の貝類や「マガキ」などが水槽にいるとそれらを襲って食べる。

またどういう理由かはわからないが、同居中の割と攻撃的な魚たちにも襲われることなく暮らしている。

ある時「ホソウミニナ」を食おうをしている場面に遭遇した。2匹を引き離して観察してみると「ホソウミニナ」の貝殻の口のすぐ横に、直径1mmほどの小さな穴が開けられていた(下の写真参照)。

「ホソウミニナ」(左)を襲うレイシガイ(右)

食べる

(写真:水のみで茹でて、中身を取り出したレイシガイ。貝殻表面に付着していた藻類にも熱が加わったため、貝殻表面が緑色っぽく)

水のみで5分ほど茹で、身(足)の部分だけ食べてみた。

巷では「身や内臓に苦み、エグみがある」と言われることが多いが、私が食べた個体の身には、そのようなものはほぼ感じられなかった。

味や食感は「サザエ」系統で、「サザエ」ほどの味の濃さや磯っぽさは無いが、確かな旨味とほんの少しクセのようなものを感じる。ただそのクセも不快なものではなく、良いアクセントとなっていると私は感じた。またレイシガイが貝殻内に含んでいた海水の塩気と相まって、中々に美味い。

大きさも手頃で、身も取り出しやすい方なので、酒のツマに良いのではないかと思う。ただ浦安界隈では食べている人はほとんどいないと思われ、その理由も定かではない(レイシガイによく似た「イボニシ」は食いすぎると腹を壊すと言う人に出会ったことがある)

食べる際は自己判断、自己責任で。

身と内臓はなかなかボリューミーで、私的には食欲をそそる色をしている。目盛りは1cm