ケアシホンヤドカリ

特徴

(写真:2023年5月上旬、三番瀬で採集。約3cm(貝殻の直径)。薄緑色の体と赤い第2触覚のコントラストが美しい。この個体は「コシダカガンガラ」の貝殻に入っている)

レア度:★★★★★ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 ホンヤドカリ科 学名: Pagurus lanuginosus 英名:? よく見られる季節:?

「まだ新たな種類のヤドカリがいたのか…」(byおれ)

2023年5月上旬、「浦安市三番瀬環境観察館」のスタッフさんが三番瀬で採集。もうこの辺りのヤドカリは出尽くしただろうと思ってが、まだいたとは。

このページを書くにあたり、ちょっと調べて見ると、このケアシホンヤドカリが含まれる「ホンヤドカリ属」のヤドカリだけで30種類いるようだ。ヤドカリってのもきっととても奥が深いのだろう。

私がケアシホンヤドカリを見たのはこの時が初めて。なのでレア度はMAXとした。他のスタッフさん曰くこの辺りで見つかるのはそこそこ珍しいそうだ。ケアシホンヤドカリは日本各地の磯のタイドプールなどでよく見られる種で、水の上に出ることはあまりないとか。

(追記:2023年11月22日)2023年の秋は三番瀬でケアシホンヤドカリが多く見つかったようだ。

個人的に三番瀬浦安側で見つかる「ヨモギホンヤドカリ」に似ているなぁと思ったが、もっと似た種も他にいるらしい。そのことについても触れたケアシホンヤドカリの解説文を『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』で見つけたので、以下に引用させていただく。

『軟甲綱 十脚目 ホンヤドカリ科 Paguridae(→ヤドカリ類)。甲長約1cm。甲、鋏脚、歩脚とも長毛で密に覆われ、黒褐色の斑点が散在する。体色は一様に地味な灰緑褐色であるが、第1触角、第2触角は鮮やかな橙黄色。

ホンヤドカリ類の特徴として右の鋏脚は左よりはるかに大きい。左右とも腕節、掌部に鋭いとげがある。腹部左側には、雄では3本、雌では4本の腹肢がある。

北海道から九州地方、朝鮮半島に分布し、外洋に面した岩礁の潮だまりにごく普通に見られる。ほぼ同じ分布域をもつホンヤドカリよりもやや波の荒い低潮帯にすむ。

形態的にも生態的にも本種にきわめてよく似た3種が隠蔽種として知られている。体表に斑点がないヒメケアシホンヤドカリ P. spina、白い小斑点があるホシゾラホンヤドカリ P. maculosus、歩脚の指節基部に黒い帯模様があるヨモギホンヤドカリ P. nigrofascia である』

三番瀬浦安側は南東方面(東京湾方面)に行くとテトラポッドや転石帯が出現し、磯っぽい生物も増えてくる。そちらの方で生物採集をし出したのがこの2年間ぐらいなので、これからまだまだ新しい生物が見つかるだろう。

干潟、河川・河口、カキ礁、泥場、テトラ帯、サーフ(超小規模だが)と様々フィールドを持つ浦安。うーん侮れない。

(2023年6月)

『体色は一様に地味な灰緑褐色であるが、第1触角、第2触角は鮮やかな橙黄色』とのこと
横から撮影
上から撮影。目盛りは5mm
ホンヤドカリ類の特徴として右の鋏脚は左よりはるかに大きい。左右とも腕節、掌部に鋭いとげがある。目盛りは5mm
甲、鋏脚、歩脚とも長毛で密に覆われ、黒褐色の斑点が散在する。同属の「ヨモギホンヤドカリ」では歩脚の指節基部に黒い帯模様があるが、ケアシホンヤドカリではそれが見られない
貝殻の奥に隠れた様子。大きい右側の方のハサミで蓋をするようにして身を守っている