ウグイ属の一種①

特徴

(写真:2023年8月下旬、浦安市内河川の上流で採集。全長約8cm。ハゼ釣り中に釣れたもの。死後3時間後に撮影。「ウグイ」もしくはウグイの何かだとは思うのだが…自分の力ではそれを確かめることはできなかった。目盛りは5mm)

レア度:? 脊索動物門 条鰭綱 コイ目 コイ科 よく見られる季節:?

2023年8月下旬、連日最高気温が35℃に迫る灼熱のなか、浦安市内河川の上流で採集。「マハゼ」の釣り調査中に、ハゼ釣り仕掛け(エサは釜揚げ桜エビ)に食いついてきたものだ。

釣り上げた場所の環境は、水は暗い緑色に濁り、水温は30℃近く、塩分濃度は真水という「マハゼ」にとってはかなりキツイ状況。誰もが心の中で「釣れねぇ…ここはダメだ…」と投げやりに釣り糸を垂れていると、「なんか銀色のが釣れました!!」との叫び声があがる。

「銀色?「ボラ」か?」と姿を確認しに行くと、そこにはいたのは見慣れないフォルムをした白銀に輝く魚(写真)。

「あ、アレだ。たぶん「ウグイ」とかあの系統のやつだ」

普段は海水生物しか扱うことのない私、淡水魚はからっきしである。「持って帰って調べるしかないか…」と思案していると、また「釣れました~!!」の声。同じ種類の魚だ。その場所で合計5匹ぐらい釣れた。小規模な群れが回遊してきて、その度にパタパタッと釣れる感じだった(想像です)。

サンプルとして2匹ほどマイバケツにキープし、「仮に「ウグイ」であれば、彼らは海水にも対応できるはずだからウチの水槽でも飼えるかも…」と思って、あまり深く考えずにバケツに海水足し入れた。水合わせのつもりである。

それから10分ほど経ってバケツの様子を確認すると、全滅していた…。やってしまった。河川(淡水域)と海を行き来する魚だとしても、この変化は急激過ぎたのか(ってまだ「ウグイ」と決まったわけでないが)。

死がいを腐らないようクーラーボックスに移して、自宅に帰ってからアルコール固定をし、「そのうちじっくり同定作業を行うか!」と冷蔵庫の扉を閉めたのであった。

 

それから半年の月日が流れた。

忘れていたワケではない。むしろいつも頭の片隅にいた。しかし気が乗らなかったのだ。だっておそらく同定できないのだもの…。

しかし逃げてばかりもいられない! 今日で決着をつける! マイクロスコープOK! 臭い(サンプルの)OK! チェックすべきは背鰭前方鱗数(背鰭の前方の付け根から後頭部にいたる正中線上のウロコの数)と側線鱗数(側線上の1縦列の全鱗数で肩帯に接するウロコ(鰓孔の上端付近)から下尾骨後端までの数)の2つだ!!

 

ぜっ全っ然わからねぇ………!!!!!

この系統の魚はウロコが細かく数えにくい。さらに今回は幼魚~若魚サイズなので、ウロコはより小さく、薄くなっている。そして何よりおれはウロコを数える教育と訓練を受けていない!!

2時間ぐらいウーンウーン言いながらやった後、諦めることにした。人間、苦手なこと、出来ないことを認め受け入れることも大事である。というワケで、この魚は「ウグイ属の一種①」と記録することにした(「ウグイ」、可能性低めで「マルタ」だと思うんだけどなぁ~)。

「これ分かりますよ!​!」という方がいましたら、ご連絡お待ちしております!!

(2024年2月)

頭部を拡大。眼が大きく横顔のかなりの範囲を占める。目盛りは5mm

口は小さめで大きくは開かない。口は下向きで、上アゴの方が前方に突き出ている。目盛りは5mm

胴部側面を撮影。ウロコは非常に細かく、また薄い。光をよく反射して銀色に輝く。体側の上から1/3の高さのあたりにうっすらと直線の側線が見える。じゃあその下にある、日本の景気グラフのような形の目立つ線は何なのだ?
胴部の後半~尾部を拡大。目盛りは1cm
尾柄部および尾びれを拡大。尾びれはくすんだオレンジ色のようで、後縁は「くの字」に切れ込み、切れ込みの中央はさらに丸く窪んでいる
背びれを立ててみる。「背びれと腹びれの始まる位置が同じ」というのも「ウグイ」の特徴らしいが…如何に。目盛りは1cm
臀びれを立ててみる。前方の4条がオレンジ色に染まっている
腹びれを立ててみる。腹びれは透明だ
胸びれも広げて撮影。前方から6~7軟条がオレンジ色に染まり、また各軟条には細かな黒い点列が見られる
同個体を真上から撮影。背面はオリーブ色といった感じ。口元から頭部は色が薄くなっている。目盛りは5mm
ひっくり返して腹面から撮影。こうやって見ると、浦安で見かける海水魚たちに比べて、腹びれがかなり後方に、また胸びれも体の下方にあるのが分かる。このように、ひれと肛門などの位置関係が種の同定に役立つ場合もある。目盛りは5mm