タカノケフサイソガニ

特徴

(写真:2020年5月下旬採集。約3cm(甲羅の幅)。大型のオス個体。この個体は暗い緑色をしており、ハサミや歩脚の先端は明るい褐色をしいていた。またハサミの関節部にある毛の束がよく目立つ)

レア度:★☆☆☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 モクズガニ科 学名:Hemigrapsus takanoi 英名:? よく見られる季節:4~10月

最大で甲羅の幅が3cmほどになる。浦安では三番瀬の転石帯や海沿いの護岸上や垂直護岸、河口・河川内など様々な場所で本種を見ることができる。お馴染みメンバーの一人だ。

以前は「ケフサイソガニ」として一種にまとめられていたが、2000年代に「ケフサイソガニ」とタカノケフサイソガニに分けられたらしい。

両種とも同じような場所に生息しており、褐色や暗緑色、灰色っぽい甲羅、オス個体のハサミの関節部に毛の束があること、腹側(口周辺~ハサミ脚にかけて)に黒点があることなど共通点が多く、慣れていないと見分けるのは中々難しい。

ただハサミの関節部の毛の束の大きさによってこの2種を見分けられるそうで、「ケフサイソガニ」はハサミの外側の毛の束が内側より小さく、対してタカノケフサイソガニはハサミの内側と外側の毛の束が同じくらいの大きさとなっている。私は主にこの見分け方からタカノケフサイソガニと「ケフサイソガニ」を見分けている。なおメスのハサミには、「ケフサイソガニ」と同様、毛の束はない…つまり私には見分けられない。

ちなみに私が浦安で採集を行う場所ではタカノケフサイソガニが圧倒的に多く、「ケフサイソガニ」が見つかることは稀。

 

(追記:2020年6月)メスのタカノケフサイソガニと「ケフサイソガニ」の見分け方に関する情報を発見した。話によればメスのタカノケフサイソガニの「ふんどし」には黒点などの模様はなく真っ白で、これが「ケフサイソガニ」のメスと見分けるポイントの1つだそうだ。ただ実物をみて確認したわけではないので、話半分で聞いてもらえるとありがたい。

 

(追記:2022年4月)上記のハサミの毛の束の大きさによる「ケフサイソガニ」(オス)との見分けだが、これは完全ではないようだ。というのも、個体によってはタカノケフサイソガニでも、摩耗などによって、ハサミの外側の毛の束が小さくなってしまう場合があるとのこと。

そのためより正確な同定には、・腹部(「ふんどし」の周辺)の黒点の有無(タカノには黒点はなく、ケフサにはある)、・両種の口やハサミに見られる黒点は「ケフサイソガニ」の方が大きい傾向がある、・甲羅の両サイド上部にある切れ込みの部分形状の違いなどを見るといいそうだ。

 

(追記2023年12月)とうとう「タカノ、ケフサ、一体どっち!​?問題」に決着が着きそうだ。というのも、2022年10月下旬にひょんなことから、「ケフサイソガニ」の可能性がかなり高いカニを2匹採集することができた(詳しくは「ケフサイソガニ」のページを見てね)。

その個体は・明らかにハサミの外側の毛の束が内側に比べて小さい、・腹側の黒点のある範囲が広い(「ふんどし」上にもある)、・黒点がケフサに比べ明らかに大きい、という特徴を有しており、カニ素人の私が見てもしっかり違いを確認することができた。

ただこの時はオス個体しか採集できず、メス個体の確認までは至っていない。上記のような特徴を持ったメス個体を採集したらこのページにアップしたいと思う。

(2020年6月)

(2023年12月)

こちらは2020年5月下旬に、浦安市内河川内で採集したオスのタカノケフサイソガニ。甲羅の幅約3cm。水に入れて真上から撮影した。この個体の甲羅は暗い緑色をしており、脚は明るい褐色をベースに黒褐色のまだら模様が見られる

同個体の甲羅をよく見ている。甲羅は前縁が平らになったウチワのような形で、甲羅の両サイドの上部には大きな切れ込みが2つずつある。この切れ込み周囲の形状が「ケフサイソガニ」との見分けのポイントの1つになるとのことだが、私にはよく分からなかった

オスのタカノケフサイソガニのハサミ。ハサミの関節部には大きな毛の束がある。またハサミ脚と口の周囲に小さな黒点が見られる
オスのタカノケフサイソガニのハサミの内側。関節部にある毛の束が内側外側共に同じぐらいの大きさで、これが「ケフサイソガニ」(オス)と見分けるポイントの1つになる
オスのタカノケフサイソガニの顔。口の周辺には小さな黒点が散らばっている
オスのタカノケフサイソガニの歩脚。黒いまだら模様とシマ模様がみられる。また脚の先端はわずかに淡いオレンジに色づいている

オスのタカノケフサイソガニの腹側。「ふんどし」は細い二等辺三角形をしている。腹側は白く、黒点などの模様は見られない

こちらは同場所で採集したメスのタカノケフサイソガニ。「ふんどし」は半月型で、大量の黒い卵を抱えている。「ふんどし」には黒点などの模様はなく真っ白で、これが「ケフサイソガニ」のメスと見分けるポイントの1つになる
メスのタカノケフサイソガニのハサミの関節部には毛の束はない
メスのハサミの内側も同様に毛の束はない

採集する

(写真:2017年5月に採集した個体。甲羅の幅約2cm。ハサミの外側の毛の束の大きさ、黒点の大きさなどからオスのタカノケフサイソガニと思われる。この個体は薄い褐色をしている)

潮が引いた海岸で石をひっくり返したり、護岸上潮だまりやカキ殻が密集している場所などを探すとよく見つかる。そのよう場所には小型が多く、大きな個体は大きな岩が組まれた場所で釣りをすると釣れることが多い印象がある。

真冬以外であればたくさんいるので採集は容易。手づかみでも十分採集できるが、スルメなどをエサにした釣りでもよく釣れる。またペットボトルトラップ(びんどう)でも採集できると思う。

こちらは河口付近で採集したオスのタカノケフサイソガニ。個体や生息環境によって体色や毛の束の色は異なるようだ
こちらも河口付近で採集したオスのタカノケフサイソガニ。この個体は暗い赤褐色をしていた

飼育する

(写真:2017年4月に採集した個体。甲羅の幅約1.5cm。この個体は暗い褐色の甲羅をしており、ハサミ脚は赤みがかっている)

水の汚れや環境の変化には強いので、飼育は容易だと思う。かなりの高水温(~28℃)でも平気。三番瀬水槽では特別な世話をしなくても、エサの食べ残しや石に生えた藻類など色々なものを食べて勝手に生長してくれた。

ただ混泳には少し注意が必要で、大型のタカノケフサイソガニ(特にオス)は少々気性が荒く、ヤドカリを引っ張り出して食べたり、他のカニとケンカしたりするので注意が必要。逆に小さ過ぎるとだと、「クロダイ」などの魚類に食べられてしまう。

小型のカニ類に共通することだが、飼育には十分なスペースと隠れ家を用意してやりたい。カキ殻を積み重ねたり、石を重ねて狭い隙間を作ってやると良い。