ヒライソガニ
特徴
(写真:2021年3月上旬採集。甲羅の幅約3cm。オスのヒライソガニ。「ヒライソ」の名の通り甲羅が平べったい。オス個体はハサミ脚が太く、マッチョな印象を受ける)
レア度:★★★☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 モクズガニ科 学名:Gaetice depressus 英名:? よく見られる季節:?
最大で甲羅の幅が4cmほどになる。北海道から九州、朝鮮半島、台湾、中国北部に広く分布し、小石のある磯でよく見られる種類らしい。浦安では「イソガニ」やケフサイソガニ類ほど数は多くなく、たまにポツポツと見つかる感じ。少し大き目の岩が固まっている場所で岩をひっくり返すと見つかったり、小型個体であれば護岸の上にできた潮だまりでよく見つかる
甲羅は「ヒライソ」の名前の通り平たい板状で形は台形を逆さにしたよう。甲羅の両サイドには切れ込みが2つずつ入っている。体色は暗褐色や紫褐色と地味なものが多いが、時々朱色が強い個体を発見することもある。
ハサミ先端が白色になっている個体が多い(というか全部そう?)。またオス、メスともにハサミに毛などは生えない。オスのヒライソガニは幅広い甲羅と、ボリュームのあるハサミ脚からマッチョな印象を受ける。
甲羅の幅が5mm~2cmほどの小~中型個体のヒライソガニは実にバリエーションに富んだ体色、模様をしている。甲羅だけが白くなっているものや、体全体が白く、甲羅や歩脚に黒い模様が入ったものなど、「これ本当に同じカニですか!?」と言いたくなるようなものばかり(下の写真参照)。全体の傾向としては甲羅に白い模様が入ったものが多い気がする。
ちなみにこのヒライソガニ、水中の有機懸濁物を口(第3顎脚)で集めて食べることのできる、濾過摂食生物でもある。
(追記:2021年5月15日)ある程度大きくなった個体でも、甲羅に白い模様が残っているものもいるようだ(下の写真参照)。
(追記:2023年12月6日)ここ最近(2023年頃)、三番瀬浦安側を中心に「一見ヒライソガニっぽいけど、よく見ると変な特徴のあるカニ」がしばしば発見されている。その特徴とは、①オス個体でハサミの可動指と不動指が長く、その可動指の内側に缶切りのような目立つ出っ張りがある+歩脚に毛が生えている、②甲羅にやや丸みがある+歩脚に毛が生えている、の2パターンだ(もっとあるのかもしれないか)。
もしかするとこれらは別種の可能性もあるとのこと。カニマイスターの方々の続報を待ちたい。
(2021年3月)
(2023年12月)
採集する
(写真:私が採集を行う地域では、こんな感じの場所の石をひっくり返すと、その下からヒライソガニが見つかることが多い)
あまり数を採集したことがないので、コツなどは分からない。今までの経験だと、写真のような潮間帯の大き目の石をひっくり返すと、その下から見つかることが多い。
また小型個体は護岸上にできた潮だまりや、護岸際の海底をタモ網でガサガサっとすると他のカニ類に混じって採れる。
飼育する
(写真:2017年4月撮影。マーレ水槽で飼育していたオスのヒライソガニ。石の上でじっとしながら細かな泡を吐く様は、まるで念仏を唱えているようだった)
三番瀬水槽では過去に何度か飼育したことがある。他のカニ類と同様、特別な世話をしなくても、エサの食べ残しなどを食べて長期間生存してくれた。とは言いつつも、あまり注意して見ていたわけではないので、どのような飼育実態かはよく把握していない。
「イソガニ」や「タカケフサイソガニ」と比べると、タフさは少し劣るような…(急にポックリ逝ってしまうことが何度かあったような…)。
写真のヒライソガニは、水槽に入れてもすぐに物陰に隠れてしまう「イソガニ」やケフサイソガニ類とは違って、外から見える開けた場所に出ていることも多かった(基本的にヒライソガニも障害物の影に隠れるカニだと思うが)。
このヒライソガニはしばしば石の上へ上り、斜め上を見上げながら細かな泡を長時間吐き続けていた。その姿は何か念仏を唱えているようで、何となく人間臭さを感じる1匹だった。