ハナワケイソギンチャク
特徴
(写真:2025年6月中旬、三番瀬で採集。触手を広げた直径約15cm。今までに数回した見たことがない。この辺りで見てきたイソギンチャク類ではぶっちぎりのデカさである)
レア度:★★★★★★★★★☆ 刺胞動物門 花虫綱 イソギンチャク目 学名:? 英名:? よく見られる季節:?
写真の個体は2025年6月中旬に三番瀬で採集したもの。この日は潮が大きく引いたので、少し沖の方を海中を観察しながら歩いていると、いきなりドンとこのイソギンチャクが現れた。
「デ、デ…デカい!!!」
砂上に巨大な花が咲いているようだ。
少し迷ったが、飼育してみたかったので採集してみることに(その時の様子は下の「採集する」の項へ)。かなり苦労して、うまくダメージが少ない状態で採集することができた。
後々知ったのだが、ハナワケイソギンチャクは東京湾奥では希少種らしく、生態もよく分かっていないらしい。
すまん…それを知っていれば採集は控えたのだが…。
以下に写真とともに、ハナワケイソギンチャクの各部形態を見ていきたいと思う。
(2025年7月)
採集する
(写真:上の写真のハナワケイソギンチャクを発見したときの様子。この場所は特に潮が大きく引くときには海底が露出する。やはり海にいる時の方が触手の広がりが大きく、元気そうに見える)
干潟などの砂地に生息するイソギンチャク類は、想像よりかなり深くまで砂に潜っている。それを知らずに触手やイソギンチャクの体の上の方に触れてしまうと、あっという間に砂の中へ引っ込んで採集不可能になることが多々ある。
今回の採集ではスコップなどの道具は持っていなかったので、素手で採集することにした。
まずイソギンチャクを刺激しないよう、少し離れた場所の砂を掘ってなるべく手を深くまで差し込む。そうしたら徐々に砂中の手をイソギンチャクの方に近づけ、射程距離に入ったら一気に指でイソギンチャクの体壁~足盤をほじくり返す。
この際、指先に力を込めイソギンチャクがさらに砂の奥に引っ込まないよう圧迫しつつ、指をシャクトリ虫のように動かしてして足盤にまで指先を到達させる。指先が足盤まで到達すれば、あとは指先でゆっくりと足盤を引き剥がして回収だ。力業である。
中途半端な位置でイソギンチャクを引っ張ると、イソギンチャクの体がちぎれて最悪死んでしまうので、「こりゃ無理そうだ」と思ったら潔く引き下がるのが良いと思う。
ちなみに今回のハナワケイソギンチャクもかなり深くまで体が潜っており、腕を砂に30cmほど突っ込んで何とか採集できた。また人によっては、ハナワケイソギンチャクの触手に触れると、かぶれたり赤いブツブツができることがあるので、グローブ着用をおススメする(私は少しのかゆみと手の一部分が赤くなった)。
イシワケイソギンチャクに共生? 寄生? する生物
(写真:取りあえず自宅水槽4号のサンゴ砂に埋めてみた。この後ある生物との面白いシーンが…)
写真撮影を終えた後、隔離ケースでは狭くて可哀想だったので、取りあえず一番広い自宅水槽4号に入れてみた。体が流されないようにサンゴ砂に穴を掘り、そこにハナワケイソギンチャクの体を入れる。…取りあえずは大丈夫そうだ。
突然やってきた巨大生物に水槽の同居人たちも戦々恐々である。水槽内の生物の中にはハナワケイソギンチャクを今まで見たことのないものもいるだろう。しかし本能がそうさせるのか、ほぼ全ての生物がハナワケイソギンチャクと距離を取る。
それまで水槽内で幅を利かせてきた「メジナの幼魚」たち。ある程度までは近づくが、決して触手に触れようとはしない(下の写真)。そして「ヒライソガニ」。明らかにハナワケイソギンチャクを嫌がっている。体に触手の先端がペタッとくっつくと、大慌てで振り払おうとする(下の写真)。うーん、しばらくしたら慣れる…か??
そんな中、ある生物だけが異質な動きをしているのを発見!! 「イッカククモガニ」(メス)だ!!
ハナワケイソギンチャクに興味津々といった感じで急接近したと思えば、触手の先端を脚でかき分けるような動きをした(下の写真)。そしてしばらくすると、触手に包まれるようにして佇んでいるではないか(下の写真)。まるで自分の住処として利用しているようだ。
どうやら「イッカククモガニ」(メス)の体には、ハナワケイソギンチャクの触手はくっつかないらしい。ハナワケイソギンチャクの触手は触れる対象を識別して「くっつく」or「くっつかない」をON・OFFできる。ハナワケイソギンチャク的に「イッカククモガニ」はOKなのか…。
詳しい人に聞いてみると、このようなイソギンチャクと他生物の関係は海ではしばしば見られるものらしい。
「イッカククモガニ」にとっては明らかにメリットがありそうだが、ハナワケイソギンチャク側にメリット・デメリットはあるのだろうか? …寄生? 共生?
面白いなぁと思っていたのも束の間、数時間後にはハナワケイソギンチャクがサンゴ砂に掘った穴から外に飛び出してしまった。飛び出すというよりかは抜けてしまったというべきか。予想はしていたが、やはり大粒のサンゴ砂ではダメらしい。
ということで狭くてハナワケイソギンチャク君には申し訳ないが、隔離水槽で飼育を継続することとした。
飼育する
(写真:水面に浮かせた隔離水槽で飼育中のハナワケイソギンチャク。狭いだろうが、1ヵ月間飼育できているので取りあえず大きな問題はないのだろう。こうするとエサや糞の掃除をし易い)
写真のとおり、良い環境とは言えないながらも飼育1ヵ月が経過したので、その歩みをまとめてみる。
まず環境は45cm水槽(自宅水槽4号)に浮かせた稚魚用の隔離水槽。水温は25~27℃で大きな問題はないように見える。比重1.023。エサは2日に1~2回。換水は2週間に1回、1/3。高水温には強いようだ。
エサは食うものと食わないものがハッキリとしている。今のところ食ったのは①冷凍アサリのむき身、②アジの刺身、③クリルの3つ。飼育環境や慣れで食うものは変化するかもしれないが、取りあえず動物質の生エサを好むようだ。
嗜好性が最も高かったのは①冷凍アサリのむき身。水槽に入れるとすぐさま触手でグイっと絡め取り、口に持っていく。その時に触手まで口の中に入れるのが何だか笑えた。
逆に③のクリルはあまり好まないようで(体に合わない)、口に入れたあとに吐き出したり、未消化のクリルが糞と一緒に水槽内に沈んでいることもあった。なのでクリルを上げるのは空腹が強そうなときにして、あげるときはクリルを指で潰してしっかりとふやかしてからあげるようにしている。
配合飼料は今のところ全く食わない。ペレット(おとひめ)を粉末状にしたものと、フレーク(ネオプロス)を与えてみたが、触手にくっつきすらしない(触手で判別しているのだろう)。
(追記:2025年7月7日)飼育開始からもうすぐ1ヶ月。何となく、直径4mmほどの大粒のペレット(おとひめ)をハナワケイソギンチャクの上に1粒落としてみた。あ、口に持っていった! …飲み込んだ!! 慣れなのだろうか? 取りあえず配合飼料も食べることが確認された。
ごめん。翌日確認したらやはりペレット吐き出してた…。というわけで、今のところ配合飼料を食べるシーンは目撃していない。
それと下に写真を載せているが、糞は黒い粘液状のものと、エサの残骸と思われるものを少量出す。このハナワケイソギンチャクを採集した場所は周りに障害物が全くない砂地だったので、自然下では何を食っているのか非常に気になった。
またこれも下に写真を載せているが、夜に部屋を暗くすると面白い行動をする(イソギンチャク界隈では普通なのかもしれないが)。
触手を極端に短く縮め、さらに体をパンパンに丸く膨らませるのだ。これは夜間の「防御 & おやすみ」モードとかなのだろうか?
