スジエビモドキ

特徴

(写真:2020年4月上旬、三番瀬で採集。全長約3cm(額角の先端から尾の後端までの長さ)。「スジエビ」の名前の通り、腹部に細いスジ模様が数本見られる)

レア度:★★☆☆☆☆☆☆☆☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 テナガエビ科 学名:Palaemon serrifer 英名:? よく見られる季節:春~夏

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最大で全長4cmほどになる。「おそらく浦安にもいるだろう…」と思いながらも、ずっと見つけられずにいたが、とうとう2020年4月上旬に三番瀬で発見した。

発見時の様子だが、その時期はまだ海中にはエビの姿が少なく「まだ時期的に早いか…」と帰り支度をしていると、護岸上にできた「タイドプール(潮だまり)」の中にある大きな板状の石が目に付いた。

「せっかくだから最後にこの石の裏を見てみよう」と石をひっくり返すと、そこには10匹ほどのエビの群れが! しかもそのエビ達は、このあたりに大量にいる「ユビナガスジエビ」とどこか雰囲気が違う。逃げられないよう急いでタモ網ですくい、家に持ち帰って顕微鏡で観察したり詳しい人に聞いてみたところ、どうやらスジエビモドキらしいということで、めでたくこのページを書くことができた。

 

(追記:2020年7月23日)「ユビナガスジエビ」より数が少なく、この辺ではあまり多いエビではないのかな?」と思っていたが、2020年7月下旬に三番瀬で行われた生物観察会では、スジエビモドキの子エビと思われる体長1.5cmほどのエビを浅瀬で大量に捕獲した。

 

見た目は「ユビナガスジエビ」に非常によく似ている。ハサミ脚(第2胸脚)や脚の関節部が黄色くなっていたり、角(額角)が水平に近いことなど、共通点が多い。

一番の違いは腹部に見られるスジ模様だろう。「ユビナガスジエビ」の腹部にはスジ模様はないが、スジエビモドキの腹部には体節の後縁に沿ったスジ模様が数本見られる(腹部のちょうど中間あたりにある1本のスジが最も目立つ)。

また拡大して見ると、「ユビナガスジエビ」は体の表面全体に小さな黒い点が密に散らばっているが、スジエビモドキの体の表面にある黒い点は「ユビナガスジエビ」に比べると数が少ない。あと個人的には「ユビナガスジエビ」と比べて、ハサミ脚(第2胸脚)が少し短い印象を受ける。

浦安で見られるスジエビモドキは「ユビナガスジエビ」と同様に半透明のものが多いが、中には褐色っぽいものや青緑色を帯びたものなどもいた(下の写真参照)。

スジエビモドキは肉食性の強い雑食性で、小魚、小型甲殻類、ゴカイ類、海藻など何でも食べる。また岩やカキ殻についた泥状のデトリタスを非常に好んで食べていた。

 

(追記:2022年9月6日)今まで撮影したスジエビモドキ見返していると、どうも第一触角(2番目に長い2本の触角)に白いシマ模様が入っているものと、そうでないものがいるような…。別種なのか、個体変異なのか…。

 

(追記:2024年5月13日)このページを書いた当時(2020年4月)は、たまにしか発見できないエビという印象があったが、現在では採集に行けば毎回見つかる「いつものメンバー」になったように思う。ただ最近スジエビ類の同定に自信が無くなってきた…。他のスジエビ類の発見やそれらに関する知識が増えたためだ。

昔なら知識も乏しく、頭の中で候補に挙がるスジエビ類も少なかったので、結構いい加減に「よし、これは~だな!」としていたのだが、現在は様々な可能性が浮かぶようになってしまい、安易に「これは~だ!!」とすることが出来なくなってしまった(良いことなのだが)。特に小型個体(体長~2cmぐらい)だと迷うことが多い。

(2020年4月)

(2024年5月)

こちらは2020年4月上旬、三番瀬採集した個体。体長約3cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。死直後に撮影。この個体は体全体が褐色っぽい

スジエビモドキの頭部(頭胸甲)。額角はほぼ水平~ほんの少し上反りで、顔は「ユビナガスジエビ」によく似ていると思う
頭胸甲から腹部にかけて、はっきりとした細いスジ模様が見られる。よく見ると腹部の体節の後端に沿ってスジ模様があるのがわかる。あと腹部の中間のスジが最もよく目立つ
尾部周辺を拡大
スジエビモドキの触角
ハサミ脚(第2胸脚)や歩脚の関節部は黄色くなっている

採集する

(写真:2020年4月上旬、三番瀬採集。体長約3cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。腹部の中間のスジ模様がよく目立つ)

あまり数を捕まえたことがないので、どこにたくさんいるかは分からない。

調べてみたが「磯のタイドプールによくいる」といった情報や、「河口~河川に多い」といった情報があったり、調べると余計分からなくなってしまった。地域によって生息場所に違いがあるのかもしれない。

私は三番瀬の護岸上のタイドプールで見つけたので、とりあえずその辺りを探してみるのをオススメする。

 

(追記:2022年9月6日)2022年初夏~夏の三番瀬生物調査では、「ユビナガスジエビ」ほど多くはないももの、割と三番瀬岸近くの水中から採集されることが多かったように思う。5~10匹ユビナガがいたら1匹はスジエビモドキみたいな感じで。

 

(追記:2024年5月14日)最近では初夏~秋にかけて三番瀬や河口付近で生物採集すれば毎回1匹は普通に採れるという感じ。時にはエビはスジエビモドキしか採れないということもある。珍しいということはなくなった印象。昔からそれなりに数がいたが見逃していたのか、それとも増えたのか…。

飼育する

(写真:2022年4月上旬、河口付近で採集。体長約3cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。この個体は体全体が青緑色がかっている。カッコいいので持ち帰り飼育することにした。目盛りは5mm)

水の汚れや環境の変化に強く、また配合飼料でも何でもよく食べるので、「ユビナガスジエビ」同様飼育は簡単。

ただスジエビ類を高密度で飼育し、かつエサの量が少ないと、お互いを食い合うのか弱い個体が死んでいくのかは定かではないが、数が減っていってしまうので注意が必要。

「ユビナガスジエビ」と比べると落ち着きがないというか、動きがわちゃわちゃしていて、ちょっと泳ぎが下手なような(←これは飼育初期の印象で、1ヵ月ほどすると落ち着いたのかそんなに動かなくなった)。

性格は貪欲な「ユビナガスジエビ」に比べると、温厚~ややおとなしい印象を受ける。ただ食欲は旺盛なので水槽の掃除屋に最適だが、肉食性が強いのかコケはほとんど食べない?ようだ。

あと魚類にとっては格好のエサになってしまうので、魚類との混泳には注意が必要(魚の種類によるが隔離飼育が無難だと思う)。

上の写真の個体の頭部周辺を拡大。目盛りは5mm
腹部を拡大。この個体は体全体が青緑色がかっていた。目盛りは5mm
こちらは2020年6月下旬に飼育していた別個体。体長約3cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。抱卵の兆候なのかは不明だが、抱卵前になると頭胸甲の内部に、白カビのような白いツブツブが現れる。これは何なのだろうか?
こちらは2023年1月中旬に自宅水槽で飼育していた個体。体長約3cm(角(額角)の先端から尾の先端までの長さ)。抱卵しており、また前述した白いカビののブツブツが体内に見られる。季節は真冬だが水温は20℃ほどあったので、産卵したのだろうか?