ヒメシラトリ

特徴

(写真:2024年5月下旬に三番瀬で採集。貝殻の幅約2.2cm。生きた状態で撮影。殻頂付近が淡くオレンジ色に色づき、貝殻表面は殻皮が剥がれ易く乾燥するとガサガサした感じ)

レア度:★★★★★★★★★☆ 軟体動物門 腹足綱 マルスダレガイ目 ニッコウガイ科 学名:Macoma incongrua 英名:? よく見られる季節:?

写真のヒメシラトリは2024年5月下旬の三番瀬で採集されたもの。この日は2個体のヒメシラトリを採集できたが、浦安で採れるのはかなり稀という印象。ネットで他のヒメシラトリの写真を見させてもらったが、個体や生息場所によって貝殻の色や模様が異なる場合があるようで、確実な同定には少々知識が必要かもしれない。

 

以下に『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』の『ヒメシラトリガイ』の解説を引用させていただく。

『軟体動物門 二枚貝綱 ニッコウガイ科。殻長 3.5cm、殻高 3cm、殻幅 1.4cm。殻は卵三角形で、左殻は右殻よりふくらむ。前縁は広く丸く、後縁は狭くなり、後背縁に沿ってひだがあり、右方へねじれる。

殻表は白色で殻頂部は淡橙色、弱い成長脈があり、淡灰黄色の殻皮をかぶる。靭帯は殻頂のうしろに外在し明らかである。内面も白色で殻頂部は淡橙色。殻頂の下に歯があるが、前後側歯を欠く。右殻では外套線は深く彎入し、左殻では直接前筋痕に達する。

北海道から九州、また中国、朝鮮半島に広く分布し、内湾の潮間帯から水深 20mの泥底にすむ。』

 

個人的には貝殻の形状が独特だなぁと思う。上の解説の『左殻は右殻よりふくらむ。前縁は広く丸く、後縁は狭くなり、後背縁に沿ってひだがあり、右方へねじれる』という部分なのだが、知らない人が見たら成長異常か何かのために貝殻が歪になってしまったと勘違いしそうな形状である。

また今回は生きた個体を自宅に持ち帰ることができたので、水槽に入れてじっくりと観察してみた。

海水に入れるとしばらくしてニュ~っと水管を伸ばし始めた。お!!水管が2本に分かれているではないか!! 2本に分かれる水管を見るのはこの時が初めてだったが、このような水管を持つ二枚貝は他にも結構いるようだ。

足(斧足)も伸ばして砂に潜ろうとする………するが砂粒が多すぎるのか上手く潜れないようで、しばらくすると諦めてしまった。一応砂に埋めてみたのだが、翌朝には砂の上に出て来てしまっている。多分砂の粒径や質がダメなんだんだろうなぁ~。

 

数日の観察後、冷凍して中身を取り出し、貝殻内側も観察してみた。貝殻内側も殻頂周辺がオレンジに色づいており、これは貝殻表面よりもよく目立つ。その周囲は白色で手触りはツルツルとしていた。貝殻は薄く指で力を込めると簡単に割ってしまいそうである。

(2023年1月)

(2024年8月)

貝をひっくり返して右側の貝殻を撮影。『殻は卵三角形で、左殻は右殻よりふくらむ。前縁は広く丸く、後縁は狭くなり、後背縁に沿ってひだがあり、右方へねじれる。殻表は白色で殻頂部は淡橙色、弱い成長脈があり、淡灰黄色の殻皮をかぶる』とのこと
前方から撮影。二枚貝を撮影するときによく貝の置き方を間違えてしまう…これは上下が逆さまになってしまっている
後方から撮影。これも上下が逆だ…よく見ると水管が出ると思われる場所に隙間がある
腹面から撮影。これも上下逆…
背面から撮影。もちろん上下逆(笑)
靱帯を拡大。橙色をしておりよく目立つ
こちらは別個体。水管と足を伸ばした様子
同個体。水管を拡大。綺麗に2本に分かれている!!
同個体を真上から撮影
足を伸ばし砂に潜ろうしている様子。しかし結局砂に潜ることは叶わなかった(底砂が悪いのだろう)

砂に潜るのを諦めて?砂上で水管を伸ばすヒメシラトリ

冷凍した個体の貝殻を開けて中身を見てみる。あれ?もう1本の水管どこ行った?
中身を取り除き洗浄した後の貝殻内側。貝殻内側も殻頂周辺がオレンジに色づいており、これは貝殻表面よりもよく目立つ。その周囲は白色で手触りはツルツルとしていた。目盛りは1cm
貝殻の下から光を当ててみた。貝殻の薄さが伝わると思う
こちらは2022年5月下旬に採集された、ヒメシラトリの幼貝。貝殻の幅約1.1cm。貝殻は非常に薄く中身が透けて見える。生きた状態で撮影。目盛りは1cm
同個体の反対側(右側)の貝殻。このサイズだと殻頂のオレンジ色は目立たないな。目盛りは1cm
同幼貝を背面から撮影。このサイズでも左殻の方が膨らむという特徴は確認できる