メバル(の一種)
特徴
(写真:2019年5月中旬採集。全長約5cm。この時期浦安ではこのような体色のメバルの幼魚が見つかることが多い。目盛りは5mm)
レア度:★★★★★★★☆☆☆ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 メバル科 学名:Sebastes sp. 英名:Japanese rockfish? よく見られる季節:4~5月(幼魚)
全長30cmほどまで成長するが、希に30cmを大きく超える個体も存在する。大きな顔と口、そして何より大きな目が特徴。眼の大きさから「目張(めばる)」の名前が付いた。
「メバルの煮付け」などの料理で食卓にも馴染み深い魚だが、近年は高級魚として扱われることが多いので、食べる機会はそんなにないかもしれない。成長の遅い魚と言われており(個人的には疑問だが)、地域にもよるが全長20cmを超えるのに5年ほどかかると言われている。
浦安では4~5月頃に全長3~4cmほどの幼魚を目にする。特に三番瀬や河口域の浅瀬で海底に沈んだ「オゴノリ」やアオサ類などの海藻のかたまりを網ですくうと、その中から見つかることが多い。
他には夏~秋季に三番瀬南東のテトラポッド帯の水中を観察してみたところ、敷石の間に隠れる全長10~15cmのメバルをポツポツ目にしたことがある。
また数は多くないものの、冬~春にかけては浦安沿岸で釣ることも可能らしい(私はまだ釣ったことないが)。冬の魚というイメージが強いが、メバル自体は周年釣れる。ただメバルは低水温に適応しているので(沿岸の生息するメバルはの適水温は14℃前後らしい)、水温が下がり他の魚が釣れなくなる冬場でも釣れることから、そのようなイメージが付いたのではないだろうか。
食性は肉食性で、場所によりその食性も変化するが、幼魚は主に小型の甲殻類を、そして成魚にになるとエビやカニなどの甲殻類や小魚、小型のイカなどを大きな口で丸呑みにする。このような食性からルアーフィッシングの対象魚としても人気がある。
またメバルは「カサゴ」など同じく卵胎生(らんたいせい)で、冬に交尾したメスは体内で卵を孵化させ、交尾の1ヶ月後ぐらいに5mmほどの稚魚を出産するそうだ。
(2020年1月)
(2024年6月)
3種類の「メバル」
(写真:こちらは他県の磯で採集したメバル。全長約25cm。採集した環境と外観から「クロメバル」かな?と考えている)
このページのタイトルを「メバル(の一種)」としたのには訳がある。昔から「メバルには体色や生息場所などが異なる3つのタイプがある」と言われていて、海に潜ってよくメバルを見ていた私も同じ印象を抱いていた。
専門家達による議論が繰り返された末、とうとう2008年にそれらのメバルに遺伝子的に違いがあることが分かり、今まで「メバル」として1つにまとめられていたものが、「アカメバル」、「シロメバル」、「クロメバル」の3種に分けられた。
ざっと違いを説明すると、まず「アカメバル」は体色が赤っぽく(金色っぽくもある)、胸びれの柔らかい筋(軟条(なんじょう))の数が15本(のものが多い)で尻びれの軟条が7本。また個人的には砂地が絡むような穏やかな藻場やアマモ場に生息しているイメージがある。
次に「シロメバル」は体色が白っぽく、胸びれの軟条が17本(のものが多い)で尻びれの軟条が8本。
そして「クロメバル」は体色が黒っぽく、胸鰭の軟条が16本(のものが多い)で尻びれの軟条が7もしくは8本。個人的には主に岩礁域に生息していて、遊泳性が高い印象がある。
ただ体色は成長段階や生息環境で変わることもあるし、正直パッと見た目で判断するのはちょっと難しい。見分けには上記にあるよう、ひれの軟条の数を数えるのが有効だが、そのためには魚に手で触れて確かめる必要があり、小さな幼魚にはそれが負担となるので私は今まで行っていなかった。そんな理由から、私は浦安で採集したメバルを「メバル(の一種)」として紹介することにした。
(追記:2024年5月1日)2024年4月までに浦安の沿岸で採集したメバルのうち、3個体のひれの軟条数を数えてみた。結果は3個体全てが胸びれ軟条数が17で「シロメバル」であった。
採集する
(写真:2018年5月中旬、三番瀬で採集。全長約4cm。たくさんのメバルの幼魚が海底に沈んだ海藻の塊の中に隠れていた)
先に書いた通り、4~5月頃に三番瀬や河口の海底に沈んだ海藻などを網ですくうと一緒に採れることが多い。
成魚のメバルは釣りでの採集が一般的だろうか。基本的に夜の方がよく釣れると言われている。釣り方は生きたエビやアオイソメをエサにしたウキ釣りや、岸壁際にエサを落とすヘチ釣りなど様々な釣り方で狙える。メバルを専門にした釣り船もあるほどだ。
また最近はルアーフィッシングの対象魚としても人気で、メバル専用の竿やルアーもたくさん売られている(メバルを釣るので「メバリング」と言う)。30cmを超えるメバルを「尺メバル」と呼び、これを釣ることは釣り人最高の名誉の1つだ。
日の出や高洲の海岸のテトラポッド帯の水中を観察してみると、全長10~15cmのメバルを結構よく目にする(下の写真参照)。「昔に比べてメバルも釣れなくなった」と言われるが、今でも意外と数はいるのかもしれない。
余談だが、私は銛突き(もりつき)が好きで海に潜ってはよくメバルを突いていた(浦安でじゃないです)。もしかしたら今まで突いた魚の中で一番多いのがメバルかもしれない。
メバルは水中で人が近づいてもあまり逃げないので突き易いのだが、銛を紙一重でサッと避けるのが上手い。またそんなに深くまで潜らなくなくても20cmを超えるメバルがゴロゴロいたので、銛突きを始めた当初はメバルは良い練習相手兼おかずであった。
メバルを安定して突けるようになると、ようやく銛突き初級といったところか。
飼育する
(写真:2019年7月上旬撮影。全長約10cm。マーレ水槽で飼育中のメバル。落ち着いた様子で体色も白っぽい)
三番瀬水槽では過去に何度もメバルを飼育した。丈夫で配合飼料もよく食べるので、飼い易い魚だと思う。また水槽の中層を泳いでくれるので水槽映えもする。
ただ小さいうちはいいのだが、大きくなってくると口に入るサイズの魚やエビなど、他の生物をバクバク食べるようになってしまう。特にエビは大好物のようで、メバルと同居させるとあっという間にいなくなる。
また魚を押しのけてエサをバクバク食べるので成長も速い(ただ「メジナ」と「クロダイ」には遠慮していた。ヤツらはさらに強い)。さらに縄張り意識も強く、縄張りに近づいてくる生物を追い払ったり、同じメバル同士で激しく争うこともある。
ただ気の強い魚ではあると思うのだが、ジャイアンになり切れないというか、さらに強い魚にはあっさりと負けを認めイジメられたりすることも多い。メバルの存在が目立つのか、ジャイアン的魚のターゲットにされやすい印象。
そのためメバルを飼育する際は十分なスペースと隠れ家を用意し、また口に入りそうな生物は混泳させないか隔離する必要がある。ちなみに洞窟のような隠れ家を好むので、半分に割った植木鉢などを設置してやると良い。