ブリ(ワカシ、イナダ)

特徴

(写真:2019年10月上旬採集。全長約40cm。この程度のサイズのブリを関東では「イナダ」と呼ぶ。スケールは30cm定規)

レア度:★★★★★ 脊索動物門 条鰭綱 スズキ目 アジ科 ブリ属 学名:Seriola quinqueradiata​ 英名:Japanese amberjack よく見られる季節:9~11月

全長1m、体重20kgを超える大型回遊魚。この魚を知らないというという人はほとんどいないだろう。養殖も盛んに行われ、年中スーパーに並ぶお馴染みの魚だ。しかしこれが浦安の、しかも岸から釣れるというのには驚く人も多いと思う。ただしブリといっても釣れるのはほとんど20~50cmの「ワカシ」、「イナダ」と呼ばれるサイズのもの(晩秋には希に80cmを超えるブリサイズが釣れることもあるが)。

いつ頃から釣れるようになったかは私には分からないが、少なくともここ数年(2019年時点)は毎年秋になると、浦安沿岸を含む東京湾の最奥までブリが回遊してくる。浦安に40年暮らすという老人の話によると2009年ぐらいから釣れるようになったとか。

ひとたび「ブリ(イナダ)が釣れてるぞ!!」という情報が出回れば、いつもは閑散としている浦安の釣り場があっという間に釣り人でいっぱいになる。例えサイズが小さくともブリなどの青物(「サワラ」、「カンパチ」、ブリなど背が青い中~大型回遊魚を「青物(あおもの)」という)は、釣り人を惹きつける魔力があるようだ。

先に話したが、ブリは成長により名前が変わる出世魚で関東では~35cmを「ワカシ」、35~60cmを「イナダ」、60~80cmを「ワラサ」、80cm~を「ブリ」と呼ぶことが多い。ちなみに「ハマチ」とはワカシ、イナダサイズの養殖物のこと指す。またブリは地方によって様々な呼び名が存在する。

ブリは回遊海域から日本海、太平洋、東シナ海の3グループに分けられるそうで、産卵期は各海域で違うがピークは3~5月だそうだ。卵から孵化し1cmほどに成長したブリの幼魚は、流れ藻(ながれも。水面を漂う海藻のかたまり)に寄り添いながら、流れ藻に付いた甲殻類やプランクトンなどを食べて成長する。この時期のブリを藻(も)に付くことから「モジャコ」と呼ぶ。この「モジャコ」を獲って来て生簀で大きく育てるのが「養殖ブリ」の主流だったが、近年では親ブリから卵と精子を採取して、人工孵化させた仔魚(しぎょ。生まれたばかりの魚)を育てる「完全養殖」の技術も確立されている。

養殖関連の仕事をしている知人によれば、人工孵化させたブリは約2cmほどになると他のブリの幼魚を追い掛け始め、時には共食いもするそうだ。成長にするにつれ主に小魚を捕食するようになり、時にはエビなどの甲殻類やイカなどの頭足類を食べることもある。

(2020年1月)

水の抵抗が少なそうな体の形状をしている。ウロコは細かい
綺麗に二又に分かれた尾びれを持つ。「ザ・回遊魚の尾びれ」って感じだ

採集する

(写真:ルアーの一種「メタルジグ」。イワシなどの小魚を模しており、様々なカラーがある)

秋に釣りで採集する。陸から行うブリの釣り方は、コマセ(撒きエサ)とオキアミを使ったカゴ釣り、生きた小魚を餌にした泳がせ釣り、ルアー釣りなどが挙げられるが、浦安でイナダサイズを狙うならメタルジグを使ったルアー釣りが一番人気だ。朝日が昇る時(朝マズメ)や日没前後(夕マズメ)の時間帯は魚が活発にエサ追うので、そのような時間を狙うと釣れやすい。

ただ浦安でのイナダのルアー釣りは、魚が岸近くを回遊してくるのを待ちつつ、ルアーを投げ続ける釣りなので非常に疲れる。また掛かった魚を逃さないためにタモ網の準備を忘れずに。(ちょっと詳しいことを書くと、Mクラス以上のシーバスロッド、道糸はPE1号以上、リーダー5号で30g前後のメタルジグを使用すれば、40cm前後のイナダなら余裕を持って釣れると思う)

私も含めて、みんな必死にこの魚を追い求めるが、地方のスーパーなどで40cmのイナダが一匹298円で売っていたりするの見ると虚しくなることがある(しかも結構そういうのを見かける)。

また以前、知人がブリの幼魚と思われる5cmほどの魚を三番瀬で採集したことがあるが、そういうことは今までに一度しかなかった。

2018年5月採集。全長約5cm。知人が三番瀬で採集したブリの幼魚(モジャコ)と思われる魚
流れ藻(ながれも)をタモ網ですくったところ偶然捕れたそうだ

食べる

(写真:養殖ブリ「柚子鰤王」の刺身)

食べたことがある人も多いと思うが、場所や季節、養殖か天然かさらにサイズによって大きく味の変わる魚。東京湾奥で秋口に釣れるワカシ、イナダサイズのブリは脂が乗っていないことが多く、さっぱりとした味わい。刺身よりフライなどにした方が良い気がする。「寒ブリ」という言葉あるとおり、季節が進み水温が下がると脂が乗ってくる。

私は身が脂で真っ白な養殖ブリよりも、赤みと脂のバランスが良い天然ものの方が好きだ。ただ高知大学?で生産されている、柚子を練りこんだ餌で飼育した「柚子鰤王」は脂がノリノリなのにも関わらず、さっぱりとしていて非常に美味しかった(5日熟成させた刺身は最高だった)。