マナマコ

特徴

(写真:2016年2月上旬撮影。体長約14cm(黒い個体)、体長約9cm(オレンジの個体)。ナマコ類はそのときの状態によって体の長さや硬さが変わるので、重さで計測する場合が多い)

レア度:★★★★★ 棘皮動物門 ナマコ綱 楯手目 シカクナマコ科 学名:Stichopus armatus 英名:Japanese common sea cucumber よく見られる季節:?

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マナマコは最大30cmほどの大きさになるが、ナマコの体は伸びたり縮んだりするので、精確な大きさがわかりづらい(計算式で体サイズを推定する試みもなされている)。なので売買の際は重さで表記されることも多い。

写真のマナマコは、私が三番瀬水槽の管理を引き継ぐ前(2015年以前)からマーレ水槽にいたもの。なのでどのように採集したのかは不明だが、昔の三番瀬を知る知り合いによれば、最近三番瀬でマナマコを見ることはめっきり減ってしまったそうだ。

ナマコはウニやヒトデと同じ「棘皮(きょくひ)動物」というグループに分類される生物で、それぞれの生物をよく観察すると、体の造りに色々な共通点がある。

ナマコは不思議な生きもので、目もなければ心臓もない、肛門から水を吸って呼吸をしたりもする(皮膚呼吸もする)。体の表面の細胞で明るさや暗さ、体の向きなどは感じ取れるようだ。また体中にある突起は足のように見えるが、正確には「いぼ足」といいその役割はよく分かっていない。マナマコの足は腹側にたくさんある小さなブツブツで、それらを管足(かんそく)という。管足は伸び縮みする吸盤状になっており、それで垂直のガラス面を登ったりすることもできる。

エサは砂の上や中にある細かな有機物(生物の死骸が細かくバラバラになったものや海藻の破片、エサの食べ残しや、プランクトンなど。これらをまとめて「デトリタス」と呼ぶことがある)を砂ごと食べ、砂だけ糞として排出する。また砂上に生えた珪藻類や微小な動物も砂ごと飲み込んでエサにするようだ。

卵期は3~9月で、地域によって時期は大きく異なる。口の後ろの背面に生殖器があり、成熟個体は前半身を左右にくねらせながら産卵、放精する。

マナマコには体色によって「アカ」、「アオ」、「クロ」の3タイプに分けられ、「アカ」は外洋に面した磯などに、「アオ」、「クロ」は内湾の海底が砂や泥の場所に生息する。ちなみに私は浦安の海では「クロ」しか見たことない。「ではマーレ水槽にいるオレンジっぽいマナマコは一体何なのだろう?」といつも疑問に思っている。

よく「どうしてマナマコは動きがゆっくりなんですか?」と子供に質問されることがあるが、その時はこう答えるようにしている(私の個人的な見解です)。

「マナマコは敵に襲われることが少ないので逃げ回る必要がない、またエサが砂(の中の有機物)なのでエサを探しまわらなくて良い。そのため動きが遅くても生きていけるのでは?」

ちなみにマナマコの移動速度だが、色々文献を見たところ1分間に1~10cmぐらい、1日では最大50mほど移動するそうだ(水温16℃ぐらいが最も移動速度が速くなる)。

参考として以下に、『改訂新版 世界大百科事典』の『マナマコ』の解説を引用させていただく。

『ナマコ綱 マナマコ科の棘皮(きよくひ)動物。日本各地に分布し、潮間帯から水深30mくらいまでの浅海にすむ。体長20~30cm、体幅6~8cmの円筒状。

体色には変異があって外洋の岩礁にすむものは濃淡の褐色と栗色の斑紋があって俗にアカコと呼ばれる。また内湾の砂泥底にすみ、暗青緑色から黒っぽいものはアオコと呼ばれ、極端に黒いのはクロコとも呼ばれる。

背面から側面には大小の円錐形のいぼ足がほぼ6縦列に並ぶ。腹面は赤みを帯び、管足は3縦帯に密生している。触手は20本ある。皮膚の中に埋没している骨片は孔のあいた円板の中央からやぐらのように突出した形で、年齢によって形がはなはだしく異なっている。

水温が16℃以上になると餌をとるのを止めて夏眠状態にはいるが、北海道ではこのようなことがないといわれる。産卵期は3~9月であるが、地方によって多少異なり、南方では早い。産卵数は50万~300万粒で、満1年で体長6cmほどに成長する。砂泥とともにケイ藻類、海藻、小型の貝類などをたべる。

再生力が強いのを利用してナマコを殺さずに内臓を採取し、コノワタの原料にしている。アカコを数十個体おけに入れ、その上から2個ほどのナマコの腸の汁を入れると,その刺激で全部のアカコが内臓をはき出してしまう。内臓は6ヵ月ほどで再生する。

アオコは肉がかたいので生でたべる。煮て干したものをイリコ、内臓を塩づけにしたものをコノワタ、卵巣を生干ししたものをコノコといって、いずれも食用にする。→ナマコ 執筆者:今島 実』

(2020年1月)

(2024年1月)

採集する

私の経験では、浦安周辺でマナマコを採集できるかは完全に運による。それほど数が少なく滅多に出会わない。8年間で捕まえたのは2回だけだろうか。

昔は三番瀬でよく見かけたそうだが、環境が変化したからか、誰かが捕りすぎたのか、現在ではほとんど見ないというのが仲間内での見解だ。

上に書いたようにマナマコは水温が下がる冬に活発に活動するので、冬季の深夜に三番瀬を歩きまくって探せば見つかるのかもしれない(冬季は深夜にしか潮が大きく引かないので)。また三番瀬では「クロ」タイプのマナマコが見つかることが多い。

ちなみに令和2年12月1日、改正漁業法の施行に伴い、アワビやナマコの密漁に対する罰則が大幅に強化され、3年以下の懲役又は3000万円以下の罰金となったので、採集して持ち帰ることは基本的にNGと考えた方がよいだろう。

飼育する

(写真:口を開けたマナマコ。口の中に見える触手で砂を舐めとるようにして食べる)

特別な世話をしなくても、水槽に入れておくだけで長生きしてくれる。おそらくエサの食べ残しや他の生物の排泄物、死骸、水槽に生えたコケなどをエサにしているのだろう。マナマコがいると水槽の砂をキレイにしてくれるので、非常にありがたい存在だ。

ただ水槽で飼っていると餌が少ないのか、少しづつ体が小さくなっていく(小さくなるが弱っている感じではない)。

攻撃的で岩肌をかじったり、ついばんだりするような習性を持つ魚類が水槽内にいると、そいつらが空腹の際にマナマコをかじることがあるので注意が必要。体をかじられてもしばらくすると再生するが、それが続くとストレスからか、石の隙間などに逃げ込んであまり動かなくなってしまうことがあった。

寿命は10年ほどと言われており、現在「マーレ水槽」で飼育しているマナマコは水槽に来て5年以上経つ(2020年1月現在)ので、そろそろ寿命が心配だ。夏場はあまり動かず岩陰などでじっとしていることが多いが、冬になると元気に動き出す。ずっと同じ水温水質の水槽内でマナマコはどうやって季節を感じ取っているのだろう…謎である。

食べる

予備知識としてナマコ類は肉に「ホロチュリン」という毒素を含んでおり、生のまま食べると中毒になる。ただし、このマナマコは例外的にホロチュリンの量がとても少ないので生食が可能になっている。このホロチュリンはナマコを干して乾燥させ、熱を加えると分解されるが、素人がマナマコ以外のナマコを食べるのは控えた方が良いと思う。

マナマコといえば薄く輪切りにして、合わせ酢に浸して食べるのが有名。というか私はそれしか食べたことがない。生きたものを調理するのがポイントだ。

また腸は「このわた」、卵巣は「くちこ」と呼ばれ高級食材となる。また干しナマコは非常に高価であり、たくさんの干しナマコが中国へ輸出されているらしい。干しナマコ…食べてみたい。

マナマコには「アカ」、「アオ」、「クロ」の3タイプがあるが、その中でも「アカ」が最も味が良く高級とされている。