スベスベオウギガニ
特徴
(写真:2024年8月中旬、河口付近で採集。甲羅の幅約2.5cm。メスのスベスベオウギガニ。この辺りでは稀にしか見られないカニ。左右のハサミは大きさが違い、甲羅は名前の通りスベスベツルツルとしている)
レア度:★★★★★★★★★☆ 節足動物門 軟甲綱 十脚目 Menippidae 学名:Sphaerozius nitidus 英名:? よく見られる季節:?
(追記:2024年8月27日)2024年8月中旬に河口付近で体に損傷のない綺麗な個体を採集できたので、写真とページ更新を行った。ちなみにその個体の採集時は青潮が発生しており、青潮から逃れるためか、転石の上の水面ギリギリのところにポツンといた。
以下はスベスベオウギガニを浦安で初めて見た時に書いたもの。
2023年5月上旬、ブラっと「浦安市三番瀬環境観察館」を訪れると、スタッフさんたちが今日採集したと思われる生物が水槽に入れて展示されていた。まだ三番瀬歴が浅いスタッフさんが(とはいっても他の分野ではスーパースペシャリストなのだが)、「管理人さん~これ何ですかね?」と水槽の中の生物について尋ねてきた。
それに対し得意げにアレコレ答えながら、「おれも他人から質問されるレベルになったのか…」などとやや自画自賛に浸っていると、見慣れないカニが1匹いることに気が付く。
「これ…!!アレですよ!!あの………スベスベなんとかガニです!!」
締まらない答えである。スベスベと言えば「食ったら死ぬ猛毒ガニ」として有名な「スベスベマンジュウガニ」が有名だが、今回採集されたスベスベオウギガニとは科の違う別種(姿はちょっと似ている気もするが)。
このカニについてはどこかで見た記憶があった。そうだ、ここ観察館に標本が展示されていたのだ。ただ生きたものを見るのは今回が初であった。
さて、このスベスベオウギガニ、甲羅の幅が2.5cmほどまで成長し、名前の通り甲羅の表面がスベスベとしていて光沢がある。また甲羅は丸みをおびた扇形をしている。体色は個体や地域によって色々パターンがあるようだ。
ハサミ脚の節は太く、こちらも丸みがある。ハサミ脚の先端(指部)は暗褐色をしている。またハサミ脚は左右で大きさが異なる。
歩脚はベージュとこげ茶色のシマシマになっている(この個体は)。また歩脚には短く太い毛が生えている。
ちなみにスベスベオウギガニは「タンクガニ」の別名でクロダイ釣りのエサとして利用されている。特にハサミの部分だけを針に刺して使うと効果抜群らしい。塩で締めて保存もできるそうな。
何だが硬くて食べにくそうだと思うのは私だけだろうか? 匂いが強いなどの利点でもあるのだろうか?
(2023年6月)
(2024年8月)
飼育する
(写真:土管の中に隠れるスベスベオウギガニ。このページの最初に紹介した個体である。夜中はどうか分からないが、基本的にここから動かない)
このページの最初に紹介した甲幅約2.5cmのメス個体を自宅水槽5号で飼育して2週間が経った。
環境は30cm虫かご水槽、水温は28℃前後、比重1.023。混泳生物はスジエビ類、小型のヤドカリ類、ヨウジウオ類の幼魚、「ギマの幼魚」、「ナベカ」である。この中ではスベスベオウギガニが最も戦力が高いだろう。
スベスベオウギガニを脅かす生物は水槽内にはいないと思うが、習性ゆえか写真の土管の中からほぼ一歩も外を出ない(夜中は分からんが)。動きがあるのはエサを与えた時のみ。エサは初っ端からクリルの切れ端を食ったので、大概のエサはイケるだろう。ただ細かい粒のようなものはハサミがゴツくて上手く拾えないようだ。
あと自身に近づこうとした魚やエビ類などは敏感に追っ払う。動きが遅く弱い生物は逆に捕らえられて食われてしまうかもしれないので注意したい。
あ、そうそう。このスベスベオウギガニ飼育し始めに脱皮をした。するとどうでしょう!体色が全体的に濃い茶色っぽくなった。結構変化したので上の写真と見比べてみて欲しい。
(追記:2024年8月31日)飼育環境にもよるだろうが、なかなか獰猛かつ貪欲なカニのようだ。というのも同居させていた「ギマの幼魚」が食われてしまったようなのだ。その現場は見ていないが、ある日「ギマの幼魚が」姿を消した。昨日まで元気そうに泳いでいたのに水槽中探しても、死がいの一部さえ見つからない。
状況証拠になってしまうが、おそらくスベスベオウギガニが骨ごと食い尽くしたのだろう。ハサミと顎の力はかなり強いのでその可能性は十分にあり得ると思う。動きが遅かったり防御力の低い、水槽の底で暮らすような生物との混泳は注意が必要だ。あの強靭なハサミに挟まれると、たとえ逃げられたとしても並の生物なら致命傷を負ってしまうだろう。